高齢者人口が増加傾向のブラジルで、高齢者向けサービス業に注目集まる
2015年 03月 1日人々のエネルギッシュなイメージからは連想しにくいが、ブラジルは、実は高齢化が進んでいる国の一つに数えられている。その兆候をとらえて、様々な分野で高齢者向け商品・サービスが拡充されつつあるようだ。
TVグローボが2月22日、番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴシオス」で伝えたところによると、ブラジル国内でフランチャイズ展開しているパソコンスクールが、高齢者向け講座を始めたという。
ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した最新の統計では、現在60歳以上の人口は全国で約2,100万人となっている。世界保健機関(WHO)によると、その数は2025年には3,200万人に達するという。
ブラジルでも高齢者は可処分所得の額が他の世代に比べて大きいため、今後の有力な購買層として注目を浴びている。ただ、需要にぴったりマッチしたものを提供できなければ彼らを市場に取り込むことはできないという。
そんな中、ブラジル全土でビジネススキル教室をフランチャイズ展開しているエウロダータ社が、高齢者向けパソコン講座だけで全国100か所以上に1000人以上の受講者を集めている。
「今の高齢者というのは家のソファに座って本を読んだりテレビを見ているだけの存在ではありません。高齢者の文化は大きく変わったのです。彼らはとてもアクティブで、孫やひ孫だけでなく、同世代の人たちとも交流を持ちたい、常にいろいろなことを学びたい、と思っています」(ビジネスコンサルタント、アナ・ヴェッキさん)
このサービスを始めるにあたって、スクールのとあるフランチャイジーが投資した額は約15万レアル。主にコンピューターおよび什器の購入、不動産および教室の整備に資金を投入した。
サンパウロ州グアルーリョス市の教室では25人の高齢者が学んでいる。14年間この教室を運営しているフランチャイジーのフランシスカ・レイチさんは言う。
「受講者の傾向としてはiPhoneとパソコンを併用する場合の使い方を学びたい人が多いですね。受講者の活動の分野は本当に人それぞれです」(フランシスカ・レイチさん)
高齢者向け講座は9か月・週2回で料金は1か月で120レアル。マウスの使い方からタイプの打ち方、情報の検索方法など基礎の基礎から学べる内容になっている。
講座は紙のテキストとオンラインで配信されるプログラムを視聴する方式だが、教室にはインストラクターが常に待機し、その場で受講者の疑問点に答える体制を取っている。
「高齢者に対するコンピューター講座では、言葉がはっきり明確であること、説明が分かりやすいことはもちろんですが、受講者の知性を尊重することが最も重要です。彼らが必要としているときに惜しみないサポートを提供するというスタンスが望ましいと言えます」(アナ・ヴェッキさん)
受講者の一人、ジュリア・サントスさんはお惣菜やお菓子を作って売る商店を営む傍ら、コンピューター講座に通っている。
「学ぶことに年齢は関係ありません。コンピューターを学ぶことで周りの人に頼らなくても商売を続けていけるのはとてもうれしいことです。コンピューターを学ぶことで売上を計算したり、仕入れや在庫管理、生産コストの計算ができるようになります」(ジュリア・サントスさん)
「今の活動的な高齢者は少し前まで現場で仕事をしたり、事業を行っていたり、企業のエグゼクティブだった人たちです。コンピューターが自分の活動を広げることや、社会で発揮している力をすでに知っているのです」(アナ・ヴェッキさん)
パソコン講座の情報を求める高齢者の数は2014年で約40%増加したという。
今年61歳になるヂヴィーナ・ヂ・モウラさんは今受講しているパソコン講座で10個めだが、学習をやめようと考えたことはないという。
「進化していく社会の中で生き延びるには今やITの知識は必須です。これから起こりうることに対してはどんなことであれ、常に備えておく必要があります。でもITについては家で一人で学ぶことはできないので講座を探してここに来ました」(ヂヴィーナ・ヂ・モウラさん)
(文/原田 侑、写真/Reprodução/「Pequenas Empresas & Grandes Negócios」/TV Globo)
高齢者を取り込むパソコン教室、「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴーシオス」より。TVグローボの「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴーシオス」は日本ではIPCTV(グローボ・インターナショナル)(080-3510-0676 日本語対応ダイヤル)で放送中