タン(TAM)航空、199人死亡事故の一審は作為不認で無罪判決。不服の遺族ら控訴の構え

2015年 05月 6日

tam 事故

サンパウロ州連邦地裁は4月30日、タン(TAM)社の事故の責任を問われていた3人に無罪判決を下したと、5日付伯字各紙が報じた。

責任問題が問われていた事故は、エアバスA-320が07年7月17日にサンパウロ市コンゴーニャス空港の滑走路で停まらず、空港脇の同社ビルと給油所に衝突して爆発炎上、199人の死者を出したというもの。

無罪判決を受けたのは、国立民間航空機局(ANAC)元理事のデニージ・アブレウ被告、元タン社航空保安部長のマルコ・アウレリオ・カストロ被告、元タン社運営部門副社長のアウベルト・ファジェルマン被告の3人だ。

マルシオ・グアルジア連邦判事は4月30日、3人が直接事故に繋がる行動をとった証拠がないとして、検察の訴えを退けた。

連邦検察庁はアブレウ、カストロ両被告が事故の危険性を認識しつつ対策を怠ったとして、懲役24年を求刑していた。

検察によれば、アブレウ被告は空港のメイン滑走路を自由に使うため、連邦高裁判事に虚偽の報告をしていたという。カストロ被告は、降雨時には事故の危険性があるとの報告があるにも関わらず、必要な対策を採らなかったとして、その責任を問われていた。

今回の無罪判決は、07年の事故は飛行機のエンジンのスロットルレバーの不適切な操作によるもので、被告人らの誤った判断によるものではないという航空学者と鑑定の報告書を主要な論拠としている。

アブレウ被告は今回の判決を「政治的、経済的圧力から司法が独立していることの証明だ」とし、連邦政府に対し、殺人犯と決め付けられたことによる損害賠償請求の可能性を探るとも述べた。

事故で娘を失った、遺族会副会長のアルシェラウ・シャビエル氏は今回の判決に失望感を表し、「安全管理を怠った者に有利な決定を下せば、また同じ過ちが繰り返される」とした上で、控訴する姿勢を見せた。

タン社は判決結果を聞いたとした上で、今後の審理を見守る意向を表明した。

(記事提供/ニッケイ新聞、写真/Valter Campanato/ABr)
写真は2007年7月19日、事故犠牲者の遺体を運び出す消防団員