神様はブラジル人!?

2015年 06月 21日

神様はブラジル人

前回に続いて、“ブラジル人気質”を実感したお話です。

買物をして、お釣りが5センターボ未満だったときのこと。センターボとはブラジルの通貨レアルのひとつ下の単位で、100センターボが1レアル。近年は1レアルがだいたい40円から50円で推移していますから、1センターボは0.4〜0.5円です。

このセンターボ、通貨単位としては存在しているのですが、1センターボのコインはほとんど流通していません。で、どうなるかというと...。

お釣りを勝手に切り捨てられる場合、余計にくれる場合、おまけして請求されない場合の3パターン経験しました。

週末に食料品や日用品をスーパーで買物していましたが、そのときは大概切り捨て。ランチで行きつけの気のいいおじさんがレジに立っているポルキロ食堂(量り売り食堂)では、おじさんの気分次第でニコッとして5センターボくれたり請求されなかったり。

絶対におまけしてくれない渋い顔をしたレジおじさんの店もありました。代わりに飴をくれるという話も聞きましたが、わたしは経験しませんでした。

コインでニヤっとしてしまったのは、50センターボコイン2つをセロテープでグルグル巻きにして、勝手に1レアルコインにしたものを時折お釣りでもらうこと。初め、なんだコリャ? と思いましたが、結構便利で、そのまま使って嫌な顔をされたことはありませんでした。なかなかの現実的創造力です。ベタベタにならないセロテープが長期流通のカギですね。

「ギリギリまでノロノロ準備で、最後の最後に駆け込んで一応、形にする」...。これもブラジル人気質としてよく言われている話です。

日本人は綿密に準備しすぎる傾向があるので、何でブラジルはこんなに日が迫っているのに決まっていないの!? とか、そんな急に言ってこられても困る!! ...といった状況が起こることも少なくないようで。日本とブラジルの狭間で、事をなんとかうまくまとめようとする立場の人が、よく味わう苦労のようです。

どうにかこうにか仕事を完成させられれば今度は、プロセスはともかくよしとするとして、道路の潅水、豪雨による土砂災害など、人の努力で解決できるはずなのに長年同じことを繰り返し、解決できていない日常生活上の不便や不具合は数知れず。

いくら気持ちがポジティブでも、気の持ちようだけではどうにもならないこともあります。

ワールドカップブラジル大会を3年後に控えた、2011年のこと。

私が習っていたポルトガル語の先生がカタールで2022年(!)のワールドカップに向けてすでにあちこちで工事が始まっていた報道を見て、「ブラジルではそんな風景が見えてこないのは心配だ」と、近所のブラジル人に話をしたところ、「デウス・エ・ブラジレイロ」と答えが返ってきたとか。

「デウス・エ・ブラジレイロ」。よく耳にする言葉です。

「神はブラジル人」という表現で、何かうまくいかないことがあっても、神はブラジル人だから最終的にはハッピーな結果になる、というブラジル人の楽天的な気質を表している言い回しだそうです。

しかし、神様は工事はしてくれませんからね。

ワールドカップが終わって約一年。ワールドカップを想定した大規模公共工事がブラジル各地で未だに終わっていないーメガブラジルの記事を読んで、まあそんなことだろう、、と諦め半分、またとないチャンスを活かせないブラジルにイライラ。約1年後に迫ったオリンピック・パラリンピックは、お手並み拝見です。

(文/井上睦子、写真/Fernando Frazão/Agencia Brasil)
写真は、リオデジャネイロのオリンピック・パラリンピック開会まで500日となった2015年3月24日、建設中の施設

著者紹介

井上睦子 Mutsuko Inoue

井上睦子 Mutsuko Inoue
2010年4月~2013年1月の3年弱ブラジリア勤務。リオに行った回数は途中で数えるのやめました。大好きな音楽は観るも弾くも堪能。よく遊びよく働いたと自己満足。帰国後も東大フォーラム開催、安倍総理出張などでブラジルとご縁あり。現在、文部科学省で大学改革の仕事に勤しんでいます。
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