ブラジル南部の病院で、いぬに面会許可おりる

2015年 11月 3日

いぬが病院で面会

近年、犬や猫などの動物がもたらすセラピー効果が高齢者介護等の様々な分野で取り上げられている。

動物セラピーの効果として、動物と触れ合うことでストレスが緩和される、撫でる・抱き上げる・散歩をさせるなど体の動作が増える、守ってやらなければ、という責任感が生まれる、動物の存在が周囲の人との会話のきっかけを増やす、などが挙げられている。ペットを飼っている人なら日々実感していることだろう。

ブラジルでもペットを飼う人が年々増えているが、そんなブラジルでペットが入院中の主人との面会を許されたという。

グローボ系ニュースサイト「G1」が10月30日付で伝えたところによると、ペットの面会を許可したのは南部リオ・グランヂ・ド・スウ州ポルト・アレグリ市のエルネスト・ドルネリス病院とのことだ。

病院を訪れたのは犬のリッチー君で、10月29日、主人である49歳の女性患者を訪ねた。患者、ヘジャーニ・シリさんは末期がん。再会を実現させたのは同病院の緩和ケアグループだ。

保安上の理由から、面会は特別な部屋で行われた。

リッチー君は早々と主人のにおいを嗅ぎつけて面会部屋にたどり着いた。たどり着くや否や、何度も主人の顔をなめ、主人から優しくなでてもらったりした。

「ヘジャーニはリッチーを本当に愛していて、実の息子に劣らず愛を注いでいました。3か月ぶりにリッチーに会えたのです。痛みがあるにも関わらず、ヘジャーニは時を忘れて感動に浸っていました」(いとこのジャンヂーラ・ド・プラードさん)

ジャンヂーラさんによると、面会に行くたびにヘジャーニさんはリッチー君の様子を聞いてきたという。そしてついに木曜日(29日)、面会が実現した。

「ヘジャーニの息子、チアーゴがタクシーに乗って犬を連れてきたんです。犬を見たときのヘジャーニは、それはうれしそうでした」(ジャンヂーラさん)

ヘジャーニさんは面会の前に服を着替え、口紅を塗った。面会に立ち会った人はみな心を動かされた様子だった。しばらくして家族が犬を連れて帰ると、ヘジャーニさんは自分の病室に戻った。

病院の緩和ケアグループ心理カウンセラー、バルバラ・クリスチーニ・ヘッキさんいよると、こういった取り組みは患者が最後の時を迎えるまでのプロセスによい影響を与えるという。面会の前後にヘジアーニさんの治療に関わった医療スタッフは、面会後、ヘジアーニさんが目に見えて明るくなったと語っている。

「彼女はずいぶん長い間口数が少なく、内向的な状態が続いていましたが、リッチー君にあってからは外交的、よく話すようになり、活動的になりました。人生の質について考える時、我々はいつも愛情を注ぐ対象について思いを馳せます。周りの人、親族、ペットなどです」(バルバラさん)

立法議会において、民主労働党(PDT)のヘジーナ・ベッカー・フォルトゥナチ議員が動物セラピー(TAA)を許可法案提出の準備をしている。法案は州の統一衛生システム(SUS)において登録された公立・私立病院においてペットの面会を許可する内容となっている。

動物が面会できる時間は各病院で事前に決めた制限の範囲内で行うこととしている。また面会できる動物は犬、猫、鳥、ウサギ、チンチラ、亀、ハムスターとなっている。

その他の動物は患者の治療チームの同意を得た医師の事前の許可が必要となる見込みだ。

SUSにTAAの導入を認める法案は連邦下院に提出され、ポルト・アレグリ市、シノ渓谷にあるサゥン・レオポルド市では同様の法案が議論されているという。

(文/余田庸子、写真/Reprodução/RBS TV)
写真はTVグローボ系列RBSのニュースより、リッチー君と再開したへジャーニさん。TVグローボのニュース番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴のお問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで