最後までドタバタ。2015年のブラジルの政治と経済
2015年 12月 27日ついにというか、早くもというか、就任わずか1年で、師走の最後にレヴィ財務大臣が退任した。
レヴィ氏を財務大臣に任命した狙いは財政収支の建て直しだったが、提案がことごとく内閣のメンバーおよび議員たちの反対にあって実現できなかった。彼の就任時にはこれらを実行できなければ(ブラジル経済は)大変なことになると言われていたが、ほとんどその通りとなっってしまった。
まずは、スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)によるソブリンの格下げ、さらにはフィッチには1段階下げられた2カ月後に、投機級へ格下げされてしまった。
GDP(国内総生産)は3%減にまで達しそうで、インフレも10%超の上昇となるのは確実となってきた。せめて最後に、16年の基礎的財政収支の黒字目標ぐらいは0.7%で通したかったようだが、選挙や大統領の弾劾回避が優先されて、あっさりと0.5%に下げられてしまい、退任に追い込まれた。
後任のバルボーザ企画大臣は大統領の繰り人形と見られているため、レヴィ氏退任と同時にボベスパ(ブラジル株式指数)も下落。ブラジルの経済が大きく改善する可能性は、しばらく遠のいたと市場が判断したと言える。
一方、どんどん虚証を暴かれ、新事実が明るみになっているにもかかわらず、しぶとく現職にとどまって年を越しそうなのが、エドゥアルド・クーニャ下院議長(民主運動党)だ。
ジウマ・ルセフ大統領の罷免手続きを開始して対抗しているが、年の瀬も迫る12月16日、連邦検察庁のロドリゴ(ホドリゴ)・ジャノー長官が最高裁にクーニャ下院議長の解任を求める嘆願書を出した。嘆願書にはクーニャ氏が職権乱用や捜査妨害を行った例を11も列挙しているらしい。
いよいよ追い込まれたかに見えたが、悪運強く、18日で今年は裁判所が閉廷となり、審理は来年2月になりそうとのことで、その間に次の奇策を考えそうだ。
日本で政治家がうごめく場所を永田町と称するが、ブラジルではブラジリアになる。しかし、今回のペトロブラスを舞台にした大型贈収賄事件は、クリチバというブラジルでも第4、第5の地方都市の検察から始まったため、ブラジリアの論理も根回しも通用せず、政治家がどんどんと起訴されて逮捕されている。
もしこれが、ブラジリアだったら、表ざたになる前にもみ消されていたかもしれない。長年ブラジリアで過ごした手練手管の老かい政治家であるクーニャも、まさか地方から刺されるとは思ってなかったのだろう。
(文/輿石信男(クォンタム)、記事提供/モーニングスター、写真/Marcelo Camargo/Agência Brasil)
12月21日、ブラジリア。ジョアキン・レヴィ元財務相(左)から引き継ぎを受けるネウソン・バルボーザ新財務省(右)