国際原油相場が下落してもブラジルのガソリン代が下がらない理由
2016年 01月 25日これはペトロブラスが国際相場の動向に関係なく、社内および大株主のブラジル政府が定めた基準に合わせて取引額を固定しているためだという。相場の変動を小売価格に転嫁しないための策とのことだ。
そのため、国際相場が下がってもペトロブラスは国内で精製された石油の価格を維持している。それによって2014年、国際相場があがった際に生じた損失を補てんできると見込んでいる。
ブラジルの経済コンサルティングファーム、テンデンシア社の調査によると、2014年の終わりごろ、ブラジルでの原油価格は国際相場より高い状態となった。2014年11月には国内外の価格差は9.8%まで開いたという。また、2015年5月には、国内外の価額は逆転し、国内価格が低くなった。しかしながらこの状態は3か月しか続かず、2015年12月には再度逆転し、国内価格が国際相場より21.3%高くなった。
国内ガソリン価格の高止まりに関してもう一つ考慮しなければならないのが、ドル相場だ。
2015年、USドルが急騰したため、ブラジルで原油相場下落の恩恵を受けにくくなっているのだ。
2011年以降、ブラジル国内で石油の消費量増加し、自国での生産量だけではまかなえなくなっている。自給状態から輸入国に転じ、輸入の対価はドルで支払われている。2013年1月1日の段階では1ドル=2.046レアルだったが、2015年は1ドル=3.948レアルで締めくくられ、この約3年間でドルは93%上昇したことになる。
2013年以降、ペトロブラスは2013年1月に6.6%、同年11月に4%、2014年11月に3%、2015年9月に6%、とガソリン価格を4回値上げしている。これは卸価格の話で小売価格はこれよりも高い値上がり率となった可能性が高い(次ページへつづく)。
(文/余田庸子、写真/Fernanda Carvalho/Fotos Públicas)