他人の家で100%くつろぐブラジル人、影でグチを言う日本人

2016年 01月 28日

くつろぐブラジル人

例えば、お客さんからしたら「お茶を出してくれなかった」「出されためしがまずかった」「椅子が堅かった」などと言う文句が出るかもしれません。

一方で、ホストの側から考えると、「手土産の一つもない」「長居されて困る」「大勢で来られても食事の用意に困る」などの不満が考えられます。

お客さんが居る間は、不満を心にしまってニコニコしているけれど、お客さんが帰ってから、家族や友人に愚痴を言って溜飲を下げるというのが、日本人のよくあるパターンだと思います。

厳しい要求水準のある日本式と、あるものを楽しむブラジル式。

日本人のおもてなしというのは「他人の家にお邪魔した時には、常識的に考えたらこう振る舞うべきだ」という採点表があって、採点表に従って、お客の行動を採点しているかのようです。

文句を言うようなら、家に呼ばなければよいのにと思ってしまいますが、そうも言っていられないのが日本での人付き合いの難しいところでしょう。

この点、ブラジル人のおもてなしは、シンプルです。お客さんもホストも適当に肩の力が抜けていて、あるがままを受け入れます。

シンプルな食事が出されても喜んで食べますし、豪華な食事が出されたらやはり喜んで食べます。お土産をもらったら喜ぶし、お土産が無くても別に文句は言いません。多くを期待しないけれど、豪華なもてなしを受けたら、それをちゃんと喜びます。

個人的にはブラジル式の方が気が楽で好きですが、ぼくも日本人なので、誰かの家にお邪魔するときは極力日本の常識に従い、誰かを家に招く時の心構えはブラジル式で行きたいと考えています。

そんなことを考えていたら、先日、また知人の家に昼食に招かれました。

ゲストの数は20名を超えていたのですが、ホストは大人数の客を受け入れるのに慣れている方でした。

ソファに座って、食事ができるのを待っている時、18歳の青年がたどたどしい英語で話しかけてきました。「自分の家だと思って、くつろいで行っていいからね!」

もしかしたら、この家の人かな? と思い、色々と話を聞くと、彼は家の人ではなくて、近所に住んでいる青年であるということが分かりました。近所の人が、他人の家に上り込んで「くつろいでください」は無いだろう、と彼の顔を見ながらおかしさをかみ殺すのに必死でした。

(文/唐木真吾、写真/Sebástian Freire/Flickr)
※写真はイメージです

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著者紹介

唐木真吾 Shingo Karaki

唐木真吾 Shingo Karaki
1982年長野県生まれ。東京在住。2005年に早稲田大学商学部を卒業後、監査法人に就職。2012年に食品会社に転職し、ブラジルに5年8カ月間駐在。2018年2月に日本へ帰国。ブログ「ブラジル余話(http://tabatashingo.com/top/)」では、日本人の少ないブラジル北東部のさらに内陸部(ペルナンブーコ州ペトロリーナ)から見たブラジルを紹介している。
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