出口が見えないブラジルの消費の縮小

2016年 05月 20日

マンゲイラ 立ち退き ブラジル 景気

ブラジル地理統計院が4月20日に発表したところによると、2015年12月から16年2月までの失業率がついに10.2%と2桁台になった。失業者総数も1040万人と、1000万人の大台を突破した。

日本は現在、失業率が3%台前半で完全失業者数は約216万人だ。リーマン・ショック後の2009年時点の日本で、失業率が5.08%、完全失業者数が300万人超であったことを考えると、人口約2億のブラジルとはいえ、1000万人は大変な数字である。

失業率の統計は国によりやり方が違うので単純比較はできないが、サンパウロの中心部であるパウリスタ大通りでも路上生活者がどんどんと増えて、今や10メートル間隔でビルや商店の前に住みついており、現実として深刻な状況になりつつある。

失業するということは当然、所得がなくなり、消費が減るということだ。WHO(世界保健機関)が発表した2012年のブラジル人1人あたりの年間所得は115万3000円だった。宵越しの金は持たないブラジル人気質を考えると、1000万人が所得を失ったことで、単純計算すれば1年で11兆5000億円の消費市場が消えたこととなる。

立ち退き マンゲイラ ブラジル 消費

ブラジルの2015年の名目GDP(国内総生産)は約1兆7730億ドル(約189兆円)だったので、2016年は家庭消費が約6%減となると考えた方が良いだろう。

もちろん、GDPには貿易収支なども反映されるので一概には言えないし、昨年の成長率マイナス3%台という数字も疑わしいのだが、今年も各方面が3%台のマイナス成長を予測をしているのは、希望的過ぎる気がする。

その根拠の1つとして、この20年間でラテンアメリカの通貨危機など、何度も経済の大幅下降局面があったが、その時でも右肩上がりだったブラジル人にとって非常に大切な2つの分野が大きく下落している(次ページへつづく)。

(文/輿石信男(クォンタム)、記事提供/モーニングスター、写真/Fernando Frazão/Agência Brasil)
写真は5月6日(金)リオデジャネイロ市マンゲイラ。約20年前に操業を停止した工場の一部の土地を占有していた家族が、市の保安官によって立ち退きを強制されてバラックが取り壊された。エリアを占拠して居住していた人たちは、経済危機の中で職を失い、マンゲイラ地区の住居の家賃(400~600ヘアイス(レアル))が支払えないと主張していた。地域住民によるとこの一帯は、工場が取り壊されたあとは雑草などが生い茂り、蚊やねずみの発生源となっていたという

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