ミシェウ・テメル暫定政権はブラジルをどう変えるのか
2016年 07月 10日実行に移すための最初のハードルは8月に予定されている弾劾裁判の結審で大統領を罷免に持ち込むこと。弾劾および暫定政権の正統性への攻撃に鎮静化の兆しが見えないなかで「痛みを伴う政策」を掲げながら国民からの認知を高めていけるかが暫定政権の成功のカギとなろう。
シナリオとしては、<1>弾劾裁判でルセフが逆転勝利、<2>世論調査が圧倒的に支持する年内の大統領再選挙、<3>ルセフの罷免で「暫定」が取れたテメル政権が2018年まで務める、などがありうるが、<1>と<2>は、可能性としては残るものの確率は低い。大方の見方は<3>である。<3>で結審すれば、PT側の抵抗は残存するものの、政治的な不透明感はかなり払拭されよう。
民政移管後の30年で、副大統領から大統領の任期途中で昇格した大統領はテメルで3人目である。1992 年、副大統領から昇格したイタマル・フランコは残存任期2年の間に F. H. カルドーゾを蔵相に据え、レアル計画によってハイパーインフレ終息に劇的な成果を挙げた。
テメル暫定大統領とメイレレス(メイレリス)蔵相は今、それと同じ境遇にあるとも考えられ、経済再生劇の再現が切に望まれる。
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(文/岸本憲明、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Paulo Pinto/AGPT)
写真は7月8日、サンパウロ。「民主主義を守るジウマと女性の出会い」と題された集会に出席した停職中のジウマ大統領。依然、ジウマ大統領は弾劾はクーデターだと主張し続けている