ジョイス来日公演近づく。新作ではフェミニズムを題材にした曲も

2016年 08月 24日

ジョイス・モレーノ

ジョイス・モレーノ&イヴァン・リンスの来日公演が近づいてきた。

ブルーノート東京で行われる本公演「JOYCE MORENO & IVAN LINS -A Tribute to Rio by 2 Cariocas-」は、ともにカリオカ(リオっ子)であるジョイスとイヴァン・リンスによる、リオデジャネイロに捧げられたコンサート。

ジョイスとイヴァンはこれまで同じステージに立ったのは1度だけだという。共演が観られる貴重な機会だ。

またジョイス・モレーノは来日に合わせて、新作アルバム「パラーヴラ・イ・ソン(言葉と音)」(国内盤はランブリング・レコーズ)を発表する。ジョイスにとって4年ぶりとなるオリジナル・アルバムとなる。バンドリンをファンキーに弾く「サンバンド・ノ・アポカリプシ」など、音楽的な遊び心があふれた演奏が楽しめるのも、相変わらずジョイスのアルバムらしい。

プレスリリースによると参加メンバーなど詳細は不明だが、音源を聞く限り、ジョイスのバンド以外にも何名かのゲストが参加しているようだ。現地報道ではドリ・カイーミ、ジョアン・カヴァウカンチ、アウフレッド・デウペーニョ、パウリーニョ・ジアス、ペドロ・アモリンなどの名が挙がっている。

ジョイスが生まれ育ったリオの街を歌った「ウマイター」などは、イヴァン・リンスとの共演ライヴでも紹介されるかもしれない。引き続きコットンクラブで行われるジョイス・モレーノのグループによるコンサートでは、同アルバム収録曲はたっぷりと披露されることだろう。

「(ウマイターは)リオにある、隠れた秘密のスポットについての歌。ここは、コルコバードのキリスト像の右腕の下の方に位置する、美しい場所です(かつて住んでいたこともあります)」(ジョイス・モレーノ)

今回のアルバムのコンセプトは、タイトル通り、ずばり「言葉(=パラーヴラ)」と「音(=ソン)」の関係性。表現者、アーティストとしての自身を見つめた作品となっている。

「とくに表題曲は、1人の人間がどうやって曲を創りだすのか、クリエイティヴなプロセスがどんなものか、ソングライターがいかに苦心して、シンガーの口の中で言葉を”踊らせ”ようとしているか、最適な言葉が降りてくるまでその曲を眠らせておかねばならないかなどについて歌っています」(ジョイス・モレーノ)

現代のフェミニストたちに捧げられたという「フォホボドー・ダス・メニーナス」は、自身のの代表曲「フェミニーナ」に込められた思いを2016年流に改めて問うた曲といえそうだ。

「『フェミニーナ』がリリースされた時代(80年代初頭)に比べると、ブラジルでは少しばかり状況はよくなっていると感じております。でも、そんなに変わったとは思いません。実際のところ、仕事の面で我々を取り巻く環境はよくなりましたし、表現の自由も得られたと感じます」(ジョイス・モレーノ)

しかしながら、女性が軽視されている現実は、ブラジルだけではなく世界中に厳然と存在しているとジョイスはいう。

「我々は人間として、市民として、尊重されるべきなのです。レイプ被害や、ジョークの的になること、ハラスメント、男性との給与格差などは今でも溢れていること。車の運転や普通の職業に就くことも許されていないような、女性に対して基本的な権利が与えられていない国だってあるほどです」(ジョイス・モレーノ)

「かねてより私は、将来的に、この地球上において人種や社会的な不平等が解消されるときがきても、男性と女性間の抜本的な衝突は無くならないだろうと言ってきました。そして、こうした衝突は往々にして家庭内で起こるとも。だから、今日においてもフェミニズムの精神は大切なのです」(ジョイス・モレーノ)

ただし、ジョイスは決して楽観視はしていない。近い未来に劇的に状況が良くなるような兆候は感じられないという。

「だからこそ、私は昨今における若い勇敢なフェミニストたちを讃えたくなるのです。彼女たちは素晴らしい偉業を成し遂げてくれており、若い世代の男性たちに、新たな道義心を植え付けてくれています。そして、女性を大事に扱い、尊敬し、彼らと同等に扱っている素晴らしい男性たちがいることも確かです。我々の世界に必要なのは、こうしたパートナーシップだと思います」(ジョイス・モレーノ)

黒人ソウルシンガーのパウラ・リマも、女性の尊厳をテーマにした新曲を2016年の初頭に発表している。これらは新たなフェミニズムの機運を盛り立てる曲となるかもしれない。

ジョイス、イヴァン・リンスの公演スケジュールは以下。

●JOYCE MORENO & IVAN LINS -A Tribute to Rio by 2 Cariocas-(ジョイス・モレーノ & イヴァン・リンス)
会場:ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/joyce/
公演日時:
8月27日(土)、28日(日)
1st Open4:00pm Start5:00pm/2nd Open7:00pm Start8:00pm
8月29日(月)
1st Open5:30pm Start6:30pm/2nd Open8:20pm Start9:00pm
料金:8,800円(税込)
チケット予約と販売:
Jam Session会員予約受付開始日:6月14日(火)
一般Web先行予約受付開始日:6月21日(火)
一般電話予約受付開始日:6月24日(金)

メンバー:
Joyce Moreno(vo,g) ジョイス・モレーノ(ヴォーカル、ギター)
Ivan Lins(vo, keys) イヴァン・リンス(ヴォーカル、キーボード)
Tutty Moreno(ds)トゥチ・モレーノ(ドラムス)
Rodolfo Stroeter(b)ホドウフォ・ストロエテール(ベース)
Helio Alves(p)エリオ・アウヴェス(ピアノ)
Leonardo Amuedo(g)レオナルド・ アムエド(ギター)

●Joyce Moreno(ジョイス・モレーノ)
会場:コントンクラブ
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/joyce-moreno/
公演日時:
8月31日(水)、9月1日(木)
1st open 5:00pm start 6:30pm/2nd open 8:00pm start 9:00pm
料金:自由席:8,000円(税込)
チケット予約開始:5月21日(土)

メンバー:
Joyce Moreno(vo,g) ジョイス・モレーノ(ヴォーカル、ギター)
Tutty Moreno(ds)トゥチ・モレーノ(ドラムス)
Rodolfo Stroeter(b)ホドウフォ・ストロエテール(ベース)
Helio Alves(p)エリオ・アウヴェス(ピアノ)

(文/麻生雅人、写真/Leo Aversa)