ブラインドサッカー、世界No.1のブラジル代表が日本で魅せた“違い”とは!?
2017年 03月 29日大会初日の最終試合となる準決勝、ブラジル代表の対戦相手は、前年度KPMGブラインドサッカークラブチャンピオンシップで優勝した「Avanzareつくば」だ。
さすが強豪チームなだけあり徹底した早いプレッシングでブラジル代表相手に自由にボールを持たせず、一進一退の攻防戦が続く。このままスコアレスで終了するかと思われたが、コートをワイドに使うブラジルが「練習を何度もしている」という得意の形からゴールを奪う。
右サイドのマウリシオからのパスを中央で受けたノナートが、ワンタッチで前を向くや、強烈なシュートをゴール右隅に突き刺さした。
このゴールが決勝点となり1−0でブラジル代表が勝利。この日、攻撃的な選手が不在だったブラジル代表にとって難しい試合となったが、最後にしっかり勝ち切る強さはやはり本物だ。
「1−0」というスコアだけを見たら、接戦としか思われないだろう。実際にジョジナウド監督に「日本の潜在能力にビックリしている」と言わしめたつくばの実力は確かなものだった。
しかしブラジル代表は局面局面で格の違いをみせ、スコア以上に圧倒的な実力差を感じさせた。
長短のパス技術に合わせ、滑らかなボールタッチから生まれるドリブルは誰にも止められない。さらに、パスやドリブルだけでなく、どこからでも、そしてワンタッチからシュートまでの流れるような速さは圧巻。まさにブラジルの“ジンガ”そのものだ。
元々、高い個人技術を持っている選手が集まるブラジルの「セレソン」だが、意外にも“ロングボール”を多用する戦術を取っていた。
音を頼りにプレーするブラインドサッカーにおいて、パス、特にロングパスは高いチーム戦術を要する。味方を信じてボールを放す「勇気」を持ち、またパスを受ける側の絶対的な「自信」も必要だからだ。
実際にゴールに繋がったプレーもそうだった。
サイドからのパスが中央の選手の足元に入り、タイミングを合わせ正確なトラップで素早くシュートへ移る流れは、「見えているのではないか」と錯覚するような驚きの光景だった。
そのプレーは、コーラーからの指示がより戦術的だったからこそ可能だったともいえる。位置を伝える指示はもちろんであるが、「相手はサイドチェンジについて来られていないからコートを広く使え」というように、コーラーの的確な指示により、試合中に相手に合わせて戦術を臨機応変に変更出来るのも、ブラジル・セレソンの強さの理由だろう。
「KPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権2017」は2日目の決勝で「たまハッサーズ」を2−0で下したブラジル代表の優勝で幕を閉じ、最優秀選手には決勝で先制ゴールを決めたノナートが選ばれた。
ブラインドサッカーは、直接観ることで迫力や魅力を「体感」出来る競技だ。まずは一度、観戦してほしい。
2020年には東京でパラリンピックが開催される。今回活躍したブラジル代表をはじめ、世界の強豪国が集まり繰り広げられる熱い戦いを今から期待するとともに、それまでに日本でのブラインドサッカーの認知度が上がり、より良い環境が作られることを願ってやまない。
(文/長谷川ゆう、写真/Carlos Fujita)