ブラジルのパスコア(復活祭)に異変!? 贈りもののチョコレート最新事情
2018年 03月 19日肉料理シュラスコの国ブラジルのイメージとは結びつきにくいかもしれないが、このところ年々、ヴェーガン人口が増加しており、この市場に対する投資も増え続けているようだ。
サンパウロ州ソロカーバ市で菓子店を営むエリエーゼル・ヂジョスさん(40歳)がヴェーガン用卵型チョコの料理教室開催の告知を出したところ、150人近くの応募があったという。
「今までにこんな教室はなかった、と皆さんおっしゃいます。(ヴェーガン用チョコの)教室は好評をいただいているようで、毎月開いていくことなりました」(エリエーゼル・ヂジョスさん)
ヴェーガン用チョコ市場の潜在的需要の大きさに気づいたローレン・ネヴィスさん(27歳)にもビジネスチャンスが訪れたようだ。
「私自身が乳製品の消費をやめてから、市場にはヴェーガンやアレルギー体質の人向けの商品がないことに気づきました。金銭的に手ごろで手に入れにくいのはもちろんのこと、味覚をきちっと満たせるものがなかったんです」(ローレン・ネヴィスさん)
ローレンさんは市場調査を行い、事業を立ち上げることにした。
「大手メーカーがまだ進出していない分野で、需要の高いところをカバーしようと思いました。特にヴェーガン向けの商品は手に入りにくかったので、そこに商機があると思いました」(ローレンさん)
ブラジルベジタリアン協会(SVB)によると、ヴェーガン向け商品市場は2017年で40%成長したという。ここ3年間に25のメーカーから200以上の商品が発売されているとのことだ。
また、協会によると、ヴェーガンの食生活自体が話題に上ることも増え、4年間で「ヴェーガン」という言葉を含む検索は1000%増加したとも付け加えた。
乳・卵だけでなくバターも動物性だが、ヴェーガン食においてはバターに似たコクを出すためにココナッツミルクやカシューナッツが代用されている。コンデンスミルクの代わりには有機栽培バナナの粉末を用いる。チョコレートの主原料であるカカオはもちろん100%植物由来だ。
ヴェーガン向けだからと言って選択肢を減らすという発想はローレンさんにはなかった。彼女の店ではほかの一般向け商品を売っている店と同様に多様な商品を扱っている。店にはカーニバルの前からパスコア用の注文が届き始めている。
ローレンさんの店で扱う商品の開発は、医師と営業氏の監修のもとに行われており、顧客に安心して食べてもらえるように取り計らったという。
「ヴェーガン生活を選んだ人たちだけでなく、アレルギーの問題で動物性食品を口にできない人や糖尿病の人向けの商品も広く扱っていきたいです」(ローレンさん)
健康上の問題で食事制限があろうとも、おいしい食事、楽しい人生をあきらめないブラジル人気質を再認識させられる新潮流だ。
以前、日本に観光に来たベジタリアンのブラジル人を東京の某老舗ベジタリアンレストランに連れて行って、「メニューが少なすぎる、おいしくない」とはっきり言われたことがある。”健康にいいものは選択肢が限られる、不味くても仕方がない”というあきらめは、世界の常識ではないようだ。
(文/原田 侑、写真/Arquivo Pessoal/Divulgação)