ブラジルの世直しクレーマー、1日10回、8年で3万回、市役所に電話
2018年 07月 22日日本では「世直し」と称して過剰なクレームを寄せる「世直しクレーマー」の存在が取りざたされているが、ブラジルにも驚愕の頻度で市役所に電話をかけ続ける市民がいるという。
TVグローボが7月21日(土)、報道番組「ジョルナウ・ナシオナウ」で伝えたところによると、その市民は南部パラナ州の州都クリチーバ市に住むという。
同市在住の会社役員セバスチアゥン・バチスタ・マルチンスさんが市役所に電話をかけ始めたのは2010年。電話をするだけでなく、市役所の対応比率、電話をしてから問題への対応が完了するまでの期間までモニターしている。
まさに、街の監視員、だ。電話は1日平均10回、8年間で29,228回に上る。
「私がこの活動を続けているのは、街をよくするためです。私だってできればこんなことはしたくない。でも、市民はみな、自分たちの街の問題を見つけたら市民として市役所に改善を要求すべきなのです」(セバスチアゥンさん)
彼の電話に対応する市役所の担当者は次のように語る。
「彼の電話が迷惑だなんて、そんなことはありません。私たちは彼のように街をよくするために貢献してくれる市民、市の運営に参加してくれる市民が必要なんです」(市民からの声担当スーパーバイザー、マリリージ・ド・エスピリート・サントさん)
セバスチアゥンさんによると、市役所はクレーム電話の7割に対応できているという。最近彼のクレームによって対応された案件は下記の通り。
・消えたままになっている街灯の電球取り換え
・雨の日の翌日に排水溝にたまったゴミの撤去
・道路の凸凹の改修…など
小さなこととはいえ、いずれも市民にとっては恩恵のあるものばかりだ。
セバスチアゥンさんは引き続きこの活動を行っていくという。その日も家を出た瞬間に携帯電話を取り出して、市役所に電話をしはじめた。
「私は電話をかけ続けますよ。だって、きちっと解決してほしいじゃないですか。問題は解決すべき、と主張し続けることは市民の義務だと思っています」(セバスチアゥンさん)
ブラジルは日本と比べても公共サービスの質が高いとは言えない。市民は日々不満を口にし、市長・知事を含む政治家のことを「泥棒」と呼んではばからない。
一方で、改善されない状況に対して「これがブラジル」とあきらめてもいる。そのあきらめこそが公務員の怠慢、政治家の汚職の土壌になってきたとも言えよう。
パラナ州は大規模贈収賄捜査「ラバ・ジャット(洗車)」作戦の主戦場の一つ。そこに住むセバスチアゥンさんのクレーム電話は、公務員の怠慢も政治家の汚職ももう許さない、という強い決意を表した行動なのかもしれない。
(文/原田 侑、写真/Reprodução/TV Globo/Jornal Nacional)
写真はグローボ系列の報道番組「ジョルナウ・ナシオナウ」よりクレーム電話をするセバスチアゥンさん。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで)