【コラム】日伯友好病院 医療スペシャリストによるハイレベル地域診療
2018年 11月 27日日伯友好病院の建設は、日本移民80年祭の中核事業として立案されたが、その設立趣意書において、「立派な医療施設を通じて、病苦に悩む多くの人達のお役に立ち、日伯友好親善の実をあげたいとの願いがこめられております。
即ち日系人のためばかりでなく、私たちに今日の繁栄をもたらしてくれた養国ブラジルに、お報いしたいとの気持の盛り上がりが建設を促進させました」とあるように日系社会のみを対象とするのではなく、ブラジル地域社会のためになる病院として構想されていた。
この日伯友好病院は1988年に落成、開院したので、今年2018年で30周年を迎えることになるが、今日ではサンパウロにおける有力な一流総合病院の一つとして知られるようになっている。
1984年1月、国際協力事業団(当時)から旧工業移住センター用地が有償譲渡された時点から、この病院の建設準備が始まった。
1985年6月、病院建設委員会の結成総会が開催されたが、日本側は官民合わせた諸団体からの補助や寄付が行われ、ブラジル側は日系コロニア(社会)が一体となって援助体制が確立されたのであった。
こうした経緯を経て、1988年6月に着工、1988年6月18日、移民80年祭の式典日に落成式となったのである。開院は同年9月19日であった。ちなみに、工事費は502万ドル(日本政府助成金 1 億円含む)で、設置された最新鋭医療機器類の購入金額は227万ドルとなった。
周知の如く、当院の経営は、援協と略称される「サンパウロ日伯援護協会」が責任を有するが、援協とは、日本移民によって日系社会の福祉向上を図るべく設立された福祉団体、NPO(非営利団体)である。
開院時は、18の診療科目数でスタートした。すなわち、内科、消化器科、外科、整形外科、小児科、産婦人科、脳神経科、成人病科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、麻酔科、レントゲン科、臨床検査科、心臓外科、精神科、人間ドック、などで、病床数は 120床であった。
いうまでもなく医療の世界は、医学的な知見も医療機器類も日進月歩であり、当然ながら当院も継続的な投資・更新を行ってきている。医師や看護師の研修や学会参加はブラジル国内はもちろん海外でも行っており、日本の関係団体との交流も拡大してきている。また、医療機器についても更新・新たな投資・購入を実施してきた。
こうした改善努力の結果、現在の病床数は243床へ増床され40の診療科目を専門医がきめ細かく対応しており、病棟、看護室のほかICU(集中治療室)も完備、救急救命センターは24時間体制である。追加された診療科目をいくつか列記すると、鍼療法科、アレルギー科、内分泌科、内視鏡検査科、物理療法科、言語療法科、放射線療法科、腎臓病科などである。また、診察・相談はポルトガル語でも日本語でも可能な、二ヵ国語対応体制を維持しており、ポルトガル語に不自由な日本人・日系人が安心して来院できるよう配慮している。
病院の所在地がサンパウロ市パルケ・ノヴォ・ムンド地区なので、サンパウロ市北部や東部の住民はもちろん、隣のグアルーリョス市の住民にとっても通院しやすい、地域に根付いた地元病院となっている。現在の年間来院者数は60万人以上となっており、この9割以上が非日系のブラジル人となっていることからもわかるように、地域医療機関として信用と実績を積み重ねてきたといえる。
ブラジルには医療サービス部門のための公的認定機関としてONA(ブラジル国家認定機構)というNGO機関があるが、この機関による評価・通知表においては、トップレベルのカテゴリーを意味する「優秀レベル3」を、当院は 2013年度以降、継続して与えられている。すなわち、権威ある NGO 機関から、医療対応の安全性、倫理性、尊敬度が認知されたと考えている。
また、有力経済誌「Exame」の2016年度「ブラジル企業:最良・最大の1,000社」特集号において、健康関連部門では、
ブラジルで最良の総合病院とみなされているアルベルト・アインシュタイン病院よりも高い評価・順位をいただいた。医療レベルばかりでなく病院経営の観点からも高い評点をいただいた訳であり、当院としては、この評価を裏切ることのないよう、引き続き医療機関としての責務を果たしていきたいと考える次第である。
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(文・写真提供/天内ヴァルテル、原文翻訳/「ブラジル特報」編集部、記事提供/「ブラジル特報」)