ラテンアメリカ最大のビール製造会社アンベブがビール以外のアルコール飲料部門設立

2021年 09月 25日

左が新部門を監督するダニエラ・カチッチ氏(写真/Germano Luders/divulgação Ambev

中国、アメリカ合衆国に次ぐ世界で3番目のビール消費国である“ビール大国”ブラジルで、国内のアルコール飲料市場の動向が、大きく変化しつつある。

それに伴い、ラテンアメリカ最大手といわれるビールメーカー、アンベブも、誕生といっても過言ではないほどの、大きな方向転換を余儀なくされている。現地メディア「フォーリャ・ヂ・サンパウロ」、「エスタダォン」、「ガゼッタ・ド・ポーヴォ」などが伝えている。

国内のビールの売り上げランキングの上位3ブランド(順に「スコウ(Scol)」、「ブラーマ(Brahma)」、「アンタルチカ(Antarctica)」)を抱えるアンべブ(Ambev)が、ビール以外のアルコール飲料部門を新たに設立して、この分野に力を注ぐと先月(8月9日)発表している。

上記メディアによると、アンべブは「ビールを超える未来の飲料」をキャッチフレーズに掲げた新部門の設立と、同部門で扱うアルコール飲料の販売を強化することを公表した。

ビール以外のアルコール飲料部門の南米部署の代表には、元ペプシ・フーズ・ブラジルのマーケティング副部長を務めていたダニエラ・カチッチ氏が起用された。

そして、この新部門で扱われる新たな8つの製品のうち3ブランドがハードセルツァーで、ワインやジンもラインナップされている。

「フォーリャ」紙は、国内ビール市場の60%を占めるマンモス企業アンベブは、これまで競争相手を考える必要もなかったが、新型コロナウィルスのパンデミックが様相を一変させたと指摘する。

ビール大国(ビールの消費は世界第3位)のこの国では、バールに行ってもハウスパーティでも、とりあえずビール。なんならその後もずっとビールで、最後までビール、という飲み会も少なくなかった。

しかし長い巣ごもり期間に消費者は、多岐にわたる飲み物の違いに目を向け、新しいタイプのアルコール飲料が売り上げを伸ばしたという。

特に伸びたのが、ワイン(缶入りのスパークリングを含む)とハードセルツァー。加えて、アルコール度が低いプレミアムビール。これらのカテゴリーは、若者と女性が消費のターゲットとして想定されていた商品だったが、企業の想定以上に、幅広い消費者に支持されることとなったという。

リサーチ会社カンター・ワールドパネルで部門会計を担当するフェリッピ・マガリャンイスさんは、ブラジル国民の消費動向の大きな変化は如実だと指摘する。

「アンベブは、主力看板商品の3ブランド、アンタルチカ、スコウ、ブラーマが競合他社の製品に押されています。プレミアムビールや、アルコール度の低い飲料との競争に負け始めているのです。その結果、ビールの消費から他のカテゴリーへの大きな消費の大移動がおこなわれています」(フェリッピ・マガリャンイスさん)

金融市場情報とセクター分析を専門とするLAFIS社の飲料部門アナリスト、マルセロ・バロッティ・モンテイロさんは、ワイン市場の成長も近年の傾向として指摘する。

「缶入りワインの登場と、ワインの定額制宅配販売の登場が、ブラジル国内におけるワイン市場を伸ばした要因です」(マルセロ・バロッティ・モンテイロさん)

(文/カシャッサ麻生)