ブラジルの壁画家ハンナ・ルカテッリが渋谷区のプロジェクトのアートと、駐日ブラジル大使館の壁画を制作
2023年 02月 14日
ハンナ・ルカテッリは、ブラジルのサンパウロを拠点に活動するビジュアルアーティスト、壁画家であり、3人の子どもの母親でもある。
ピニェイロス地区のテオドーロサイパイオ通りの壁画、ヴィラマダレーナ地区の新名所となっている「セリーナ」の内装アート(コワーキングスペース、ホテル、クラブなどの複合スペース)など、現在、サンパウロの街中にハンナ・ルカテッリの作品が溢れている。
様々な民族の先住民に伝わる、女性を聖なる存在として語られている神話について研究をしたというハンナの描く女性像は、マルで神話の中のキャラクターのようでもあるが、それはあくまで彼女自身のイマジネーションから創造される女性の姿だ。
ステロタイプの概念で求められてきた女性の姿とは程遠く、神聖な雰囲気と、力強いオーラを湛えている。
ハンナはアートを通して、女性たち各々自身の内に存在する神聖なる力の存在に気付かせ、覚醒を呼び掛けているかのようだ(彼女の作品にはときおり、”amai-vos”(あなた方自身を愛すべし)とメッセージが添えられている)。
昨年(2022年)11月末にハンナ・ルカテッリは来日して、日本で二つのプロジェクトに参加した。
ひとつは、シブヤ・アロープロジェクト実行委員会が実施している「シブヤ・アロープロジェクト」への作品提供だ。
「シブヤ・アロープロジェクト」(http://shibuya-arrow.jp/)とは、渋谷区にある一時避難場所(青山学院大学、代々木公園)の位置を、国籍を問わず街を訪問している多くの人々に、災害の発生時だけでなく日頃から認知してもらうため、人々の注目を集めるようなアート性あふれるデザインの「矢印サイン」を製作して区内の主要な場所に設置して一時避難場所への誘導を支援するプロジェクト。
日夜外国人を含む多くの人々が訪れる渋谷で、言葉の壁を超えて、一目見て理解できる記号として、矢印がアートに盛り込まれている。
これまでに伊藤桂司、河村康輔、しりあがり寿、ヒロ杉山など多様なアーティストが参加している。外国人アーティストの参加はハンナ・ルカテッリが初となる。
ハンナの作品が設置されたのは、渋谷マークシティ神宮上空通路橋脚柱。作品に組み込まれた矢印は、一時避難所の代々木公園の方向を指している。
ハンナは「公的な機関がストリートアートに価値を見出していただいていることがとてもうれしく思います。いろんな向きで6人の女性を描くことで、女性が持つ多面性を表現しました」とコメントしている。
もうひとつのプロジェクトは、彼女の母国であるブラジルの駐日大使館の壁画制作だ。来日期間にペインティングされた。
こちらも、彼女のトレードマークである女性が描かれた作品だが、絵のテーマに関しては「見た人がそれぞれ感じ取って欲しい」と語る。
オタヴィオ・エンヒッケ・コルテス駐日ブラジル大使閣下は、2022年11月29日に同大使館で行われた壁画の完成披露式典で「ハンナさんの作品を外壁で転じるることで、大使館はアートの一部として認識されることとなりました。ブラジル独立200周年にあたる今年は数多くの記念行事が開催されましたが、ハンナさんの作品の公開で締めくくることとなりました」と述べた。
(文/麻生雅人)