第37回東京国際映画祭開催中。ブラジル映画、ポルトガル映画も上映

2024年 10月 30日

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コロンビア映画「アディオス・アミーゴ」(画像提供/東京国際映画祭事務局)

10月28日(月)から第37回東京国際映画祭が始まった。期間中は、コンペティションをはじめ、世界各国からの多様な作品を特集上映するほか、世界の映画人との卜ーク「交流ラウンジ」、ワークショップなどが開催される。

会期は11月6日(水)までで、日比谷・有楽町を中心に、シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒュ ーマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリ ー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、 東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールで開催される。

本年はコンペティション部門で、日本初公開となるブラジル映画「死体を埋めろ(Enterre Seus Mortos)」が上映される。

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ブラジル映画「死体を埋めろ」(画像提供/東京国際映画祭事務局/© RuiPoças)

監督は「狼チャイルド」(2018年日本公開)でも知られるマルコ・ドゥトラ。主演は「尻に魅かれた男」(2008年日本公開)、「恋はまぼろし」(2010年日本公開)、「センチメンタルなピエロの旅」(2012年日本公開)、「トラッシュ!-この街が輝く日まで-」(2014年日本公開)などで知られるセウトン・メロ。

物語の舞台は、架空の小さな田舎町アバルルデス。陰気なエジガル(セウトン・メロ)は、破門された元神父トマス(ダニーロ・グランギェイア)と共に、路上で交通事故死した動物の死骸を撤去する作業員として日々働いている。ネッチ(マールジョリー・エスチアーノ)と恋人関係にあるエジガルは、そんな日々から抜け出したいと常に考えているが、ある日、思いもよらない出来事がエジガルや町の運命を変えていく..。生と死、現実と幻想の境界線を行き来する作風を得意とするマルコ監督らしさが期待できるストーリーだ。

●丸の内TOEI
11月4日(月・祝)11:00

また、ポルトガル語圏作品では、ポルトガル映画が2作品上映される。

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ポルトガル映画「英国人の手紙」(画像提供/東京国際映画祭事務局)

19世紀末から20世紀初頭にかけての、ポルトガル領時代のアンゴラを舞台にした「英国人の手紙(Os Papéis do Inglês)」は、ポルトガルに生まれたのちに幼少期にアンゴラに移住した人類学者・作家フイ・ドゥアルチ・ヂ・カルヴァーリョが記した詩や小説、特に「Os Papéis do Inglês」(2000年)、「As Paisagens Propícias」(2005年)、「A Terceira Metade」(2009年)の三部作で構成される「Os Filhos de Próspero」にインスパイアされている。

ジョアン・ペドロ・パスが扮する主人公フイ・ドゥアルチ・ヂ・カルヴァーリョが、父が残した古い書簡を探してアンゴラ中を旅する冒険譚で、同作家の著作の登場人物も物語の中で主人公とかかわりあう。

プロデューサーのパウロ・ブランコによる、1970年代から続いているというフイ・ドゥアルチ・ヂ・カルヴァーリョとの長年にわたる交友から生まれた作品とのこと。パウロ・ブランコは、この作品は「歴史と領土、そしてそれらの空間とポルトガル人との関係について反映させたフィクション」であり、「現時点で、ポルトガル映画では稀有な存在」とのこと。

監督はセルジオ・グラシアーノ。アンゴラ南部のナミブ砂漠で10週間かけて撮影された。

●TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1
11月1日(金)14:10

●ヒューマントラストシネマ有楽町
11月3日(日)10:45

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ポルトガル映画「ファイヤー・オブ・ウィンド」(画像提供/東京国際映画祭事務局)

「ファイヤー・オブ・ウィンド(Fogo do Vento)」は、ポルトガル南部アレンテージョ地方の収穫期のブドウ園で働く農民たちのものがたり。ワールドフォーカス部門の上映となる。

「ある日、暴走した黒い牛が現れたため、農民たちは高い樫の木に上って枝に身を隠し、夢と記憶の世界に逃げ込む。昼から夜に移るにつれ、彼らの記憶は20世紀半ばのサラザールによる独裁政権の時代に遡ってゆく。ポルトガル南部の美しい光が奇跡的にとらえられた詩的な作品。途中、現代と過去が混交する幻想的な展開となる点も興味深い、マルタ・マテウスの鮮烈な長編デビュー作」とのこと。

●ヒューマントラストシネマ有楽町
11月1日(金)11:35

●有楽町よみうりホール
11月5日(火)15:45

ラテンアメリカ作品では、コロンビア映画「アディオス・アミーゴ(Adios Al Amigo)」がとりわけ個性的だ。

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コロンビア映画「アディオス・アミーゴ」(画像提供/東京国際映画祭事務局)

コロンビアで3年間にわたって続いた内戦「千日戦争」末期の1902年。チカモチャ渓谷の山岳地帯を舞台に、イタリアのマカロニウエスタン映画、あるいは、ブラジルのカンガセイロ映画のようなスタイルで描かれる、奇妙な冒険譚。

内戦自体は終結が宣言されていたが、山岳地帯に取り残されていた政府軍と革命軍の兵士の中にはまだ戦争が終わっていない者もいる、そんな混乱していた時のこと。

革命軍の兵士だったアルフレッドは、内戦で生き別れになっていた兄の妻が身ごもったという電報を受け取り、兄を探しにチカモチャ渓谷に旅立つ。しかし、兄を探す道中、アルフレッドの前に次々と謎めいた人物が現れ、アルフレッドの一行に加わっていく。

たばこの煙で未来を占う女性、父親を不当に惨殺した政府軍兵士への復讐を果たしたがっている写真家、得体のしれない貴族…。すべては記さないが、コロンビアならではの歴史や人種構成がもたらす登場人物たちの摩訶不思議な世界観は、南米の映画でしかありえない世界だ。

「英国人の手紙」に「アディオス・アミーゴ」にも、映画の背景にヨーロッパと植民地との関係が横たわっているが、この「アディオス・アミーゴ」はコミック感覚のB級アクションとしても楽しめる作りとなっている。アシッドサイケ調の主題歌もかっこいい。

●TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1
10月31日(木)21:05~

●丸の内TOEI
11月4日(月・祝) 14:50

本年は「コンペティション」では15作品がエントリー。その他に「アジアの未来」、「ガラ・セレクション」、「ワールド・フォーカス」などの部門別上映がある。

(文/麻生雅人)