アクリ州が日本発の遠隔診療ネットワークを導入
2025年 05月 8日
ICT(情報通信技術)によって医療の格差・ミスマッチを無くすことをミッションに掲げている医療関連のIT企業、株式会社アルムが、ブラジルのアクリ(アクレ)州で、遠隔診療ネットワークの導入をスタートさせたことを発表した。
ブラジル北部にあるアマゾナス州の南に位置し、州の西部はペルー、南部はボリビアとも隣接しているアクリ(アクレ)州は、土地の大部分をアマゾナス熱帯雨林が占めている。
音楽家ジョアン・ドナートの故郷としても知られるアクリ州はゴムノキが多く自生する土地で、国内随一のゴム産出地としても知られる。ゴム産業を支えているのはセリンゲイロと呼ばれるゴム樹液採取人たちで、同州出身であるマリーナ・シウヴァ環境気候変動大臣もゴム樹液採取人の家庭に育っている。
熱帯雨林地域には先住民も多く居住しており、古代文明の遺跡も残る。州名のアクリ(Acre)も、語源は先住民の言葉と考えられているが、語源の詳細には諸説がある。
トゥピ語において、「緑の川」を意味する「アキル(a ‘kiru)」、または「眠る、落ち着く」を意味する「ケル(ker)」から派生した「アキル(a’kir)」から来ているというのが有力な説とされている。
「アクリ川渓谷のゴム樹液採取人のボキャブラリーの意味の分析」(ブルシェール刊)によると、これは、この地域の探検家がイプリナン族の言葉である「ウマクル(Umákuru)、「ウアクリ(Uakiry)」を「アクイリ(Aquiri)」と綴り、この「アクイリ(Aquiri)」が変形したものと考えられているという。
また同書は、「アクイリ(Aquiri)」は「速く流れる水」を意味する「イアシリ(Yasi’ri)」,「イシリ(Ysi’ri)」に由来するという説もあるという。
林産業、農業が主な産業であるアクリ州には首都リオ・ブランコ市を含む22の自治体があり、約83万人の人口を擁する(ラジル地理統計院(IBGE)2022年による)。

株式会社アルムによると、現在、医療サービスの大部分が州都リオ・ブランコに集中しており、遠隔地(水路または空路のみでしかアクセスできない地域もある)に住む住人は早期に適切な治療を受けることが難しい環境だという。
アクリ州は、治療の拠点となる病院、救急治療室など全10施設を連携医療機関として、アルム社が開発・提供する医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join(ジョイン)」を導入。アプリを活用した遠隔診療ネットワークプロジェクトを主導して、州全域で循環器系疾患(脳卒中・心筋梗塞)の医療連携強化を目指すという。
今後、州同プロジェクトはの3つの医療地域にわたる多数の病院に拡大される予定だという。アルム社によると、病院、救急治療室など各所で「Join」を導入し、医療連携ネットワークを構築することで24時間オンラインで専門医による迅速な診断支援が可能となり、脳梗塞や心筋梗塞による患者の障害・死亡率の低減が期待されているという。
アルム社はブラジル、チリ、アメリカ合衆国、ドイツ、アラブ首長国連邦、マレーシア、ラオス、ケニアの8カ国に拠点を有しており、日本発の医療ICT企業として30カ国に「Join」をはじめとしたソリューションを提供している。
ブラジル・アクリ(アクレ)州での事業は、子会社である現地法人Allm S.A.(サンパウロ、CEO:ブルーノ・メリンキ)を通じて行われるとのこと。
(文/麻生雅人)