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【コラム】アマゾン先住民の儀式を体験。
あれは精霊と交信だったのか…!?

リオブランコ市で行われていたヤワナワ族のぎしきのひとつ。繁栄を願い、祝う儀式 (写真/窪田恒久)

国立先住民保護団体(FUNAI)によると、熱帯雨林が広がるアマゾン地域には外界との接触を持たない孤立した先住民の部族が107確認されているという。

しかし、先住民の中には、時代の変化を受け入れ現代社会とも交わりをもつ部族も少なくない。

ブラジルのアクリ(アクレ)州周辺に拠点がある部族、ヤワナワ族もその一つだ。2016年の夏、同州にある彼らの居住区を訪れる機会を得た。

ヤワナワ族は総数2,000人ほどで構成され、ブラジルのアクリを中心にペルー、ボリビアまで広く拡散して居住している部族である。

部族長のタシカを筆頭にアクリの首都リオ・ブランコで、交易や民族舞踊、音楽のコンサートを行ったりと、多くの日本人がイメージする先住民の部族とは異なる華やかな活動が目立つ。

リオブランコ市で音楽活動を行うヤワナワ族の若者(写真/窪田恒久)

彼らの活動には、目まぐるしい時代の流れから部族や領土を守るため、また、外の世界との交流と共にヤワナワとしての文化と誇りを失わないための葛藤が垣間見える。

さて、先住民の部族には、共同体独特ののしきたりや宗教、儀式などがあるが、ヤワナワ族も例外ではない。

儀式とは言っても、B級映画に出てくるような怪しげなものではなく、雨乞いや豊作の儀に近い、精霊、魂との交流。シャーマニズムだ。

部族によってさまざまな儀式が行われるようだが、ヤワナワ族は病気の予防や治癒を目的とした儀式を行うことで知られているという。

しかし、この儀式では一体、どのようなことが行われるのだろう。そう思っていたら、儀式を体験する機会に恵まれた。

この日の儀式は、ヤワナワ族の長老と、その息子で音楽家のマシルボ、私を含め他2人の計6人で行われた。儀式の内容は、体を清めて精霊と交信し、病気を予防するというものだと聞かされた。

日が暮れ、周囲が暗闇に包まれる中、焚火を用意し、その周りを6人で囲む。儀式が始まる前に真っ先に、次のことを告げられた。

「目と鼻、口を通じて体内を清め、精霊を受け入れる準備をする。痛みが伴うが、心配はするな」。

痛みが伴うとはどういうことなのか。取り敢えずコンタクトレンズを外し、心構えをした。

焚火を囲む中、長老がおもむろに角笛を吹き、ヤミナワ語(ヤワナワ族の言語)で何やら、歌い語り始めた。これは後のマシルボの説明でわかったことだが、ヤワナワ族はこうした儀式で、部族の、領土の、森の歴史を歌とともに語り継いでいるとのことだ。

ヤワナワ族の祈祷書(写真提供/窪田恒久)

30分ほど経っただろうか。お清めを始めるという合図ともにマシルボに横になるように促された。

私は最後だったのだが、最初の2人の様子を見るからにこれがその「痛みを伴う」ものらしい。目薬の投与だ。

私の目が脆弱なのか、ヤワナワの目が強靭なのか、その痛みは想像を絶するものだった。数滴で私の両目を完全に閉じさせ、瞼はその後10分は開くことはなかった。

痛みに苦悶している時間は、森で作られているという目薬に何を期待していたのか、と妙な納得感に包まれた不思議なひと時だった。

次に渡されたのは、小さなコップに注がれた飲みものだった。

黒茶色のその”お茶”のようなものは、なにやら独特の匂いを発していた。味も土臭いような苦みがあり、すべてを口の中に注ぐのに妙に力が入ってしまう。

「このお茶は体内を清める。体に溜まった悪いもの、また悪いエナジーを取り除く。気分が悪くなったら吐けるだけ吐きなさい」

マシルボの言葉に嘘はなかった。ものの数分で、こみ上げる吐き気と共に胃の中のもの全てを吐き出すことになってしまった。

吹きあがる焚火の日に当てられてか、はたまた長老の歌声のせいか、朦朧とする意識の中、時間の流れすらも掴めないでいた。

突然の沈黙に意識が引き戻された私は、おもむろに長老のほうへ目を向ける。マシルボが音楽を取って代わり、長老はどこからか長さ50cmはあるであろう角のようなものを取り出してきた。中は空洞で、長老は粉らしきものをそれに詰めている。

長老がいうには、その粉を私の鼻の両方の穴に吹き込むらしい。粉も健康をもたらすためのものらしい。

招かれるまま顔を差し出す私と、その老体からは想像ができないほどの深呼吸をする長老。風圧と共に、角の先端から押し出される粉が鼻に突き刺さる。

痛みで後ずさる私を待っていたのは、鼻の奥から頭全体まで激しく駆け巡る頭痛だった。特に後頭部への痛みが激しく、涙が止まらない。その痛みは目薬のときの比ではなかった。

痛みが遠ざかるとともに、私はその場にすとんと座り込んだ。

するとどうだろう、体が石のように硬くなり、動かすことができない。さらに、ろれつも回らない。思考がどうにかなっているのではなく、舌が動かしにくく、言葉を発することができない。

石のようになった私を横に、儀式は続けられていた。長老の歌声も変わり、今では祈りのような、歌というよりも何かを復唱しているようであった。

マシルボの奏でる音楽と共に祈りを続ける長老と、動くことのできない私。

心の片隅で期待していた、精霊を見ることも、その声を聞くことはないまま、儀式は終わりを迎えた。

合計4時間程ではあったが、二度と味わうことはできない、できれば二度目は控えさせて頂きたい貴重な体験となった。

ヤワナワ族のマルシボ、長老と(写真提供/ 窪田恒久 )

近代社会は、科学技術の進歩と共にこれまでにないとても便利な、住みやすい環境と発展している。反面、精神的、スピリチュアルな世界とは常に遠ざかり続け、私自身、自然と触れ合う機会すら減っているのは目に見えている。

今思えばこの儀式も、私の精神的価値観に少しでも窓が開けていたら、当時この部族の歴史的背景、その環境、現状をもっと知っておけば、儀式の受け取り方ももっと違うものとなり、”精霊” とも何か繋がりがもてたのかもしれない。

少数民族としてのかけがえのない文化を失わない方法を見出し、脅威にもなりうる”外の世界”との交流を決意したヤワナワ族とは、私なりに敬意ある関係を構築して、維持していきたいと思っている。

(文/窪田恒久)

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著者紹介

1995年鹿児島県生まれ。2014年に渡米、2015年からカリフォルニア州立ディアンザ大学へ留学。記者学を専攻し、同時に広告、経済学の基礎を学ぶ。留学中はブラジル人のコミュニティーで殆どの時間を過ごし、自然とその文化、音楽に魅了される。
ブラジルへの興味から単身でサンパウロ、リオデジャネイロ、アクリ州でボランティアとして滞在。2019年2月帰国。将来またブラジルを訪れることを夢見つつ、日々ポルトガル語を勉強中。