ブラジル人ストライカー、ルーカス・モウラのハットトリックで劇的勝利。トットナム、初のチャンピオンズ・リーグ決勝進出

2019年 05月 15日

写真は2016年6月1日、コパ・アメリカ センテナリオ USA2016でのブラジル代表に召集されルカス・モウラ(写真/Rafael Ribeiro/CBF)

UEFAチャンピオンズ・リーグはヨーロッパのクラブ王者を決める世界最高峰のカップ戦で、世界中のサッカーファンが最も注目している大会だ。そして、ブラジル人のスター選手の多くがヨーロッパでプレーしていることもあり、ブラジルでもとても注目されている大会である。

そんなチャンピオンズ・リーグの決勝進出を決める準決勝の2ndレグ、アヤックス(オランダ)対トットナム(イングランド)の試合が先週5月8日(水)に、アヤックスのホーム、アムステルダムのヨハンクライフアリーナで行われた。

1stレグは、トットナムのホームで、アヤックスが1-0で先勝している。

アヤックスにとって、アウェイゴールを得て有利な状況だが、1点差ならトットナムにも十分チャンスはあると思われた。

試合開始早々の前半5分、トットナムはCKからいきなり失点してしまう。2試合合計で2-0。いきなり2点のビハインドを背負うこととなった。

しかし、トットナムにまったくあきらめムードはない。

その後、トットナムのよい時間帯が続いたが、追加点を挙げたのはまたもアヤックスだった。

前半35分、カウンターからの速攻が決まり、2試合合計で3-0となってしまった。劣勢だったアヤックスだが、効率よく得点を重ねていった。

トットナムは3点のビハインドを背負ったまま前半を終えた。

後半もトットナムはまったく諦めることなく戦い続けた。

そんな中、後半10分、流れるような攻撃からトットナムにゴールが決まる。

ピッチの中央付近から駆け上がったルーカス・モウラがゴール前で素早くボールを振り抜き、ボールはきれいにゴールマウスに入っていった。

やっと待望のゴールが生まれたのだ。トットナムのFWルーカス・モウラは、この試合に出場した、ただ一人のブラジル人選手だった。

そしてその4分後に、またもルーカス・モウラがゴールを決めたのだ。

勢いに乗るトットナムは波状攻撃から、ゴール前でシュートを放つも一旦は相手GKに阻まれたが、こぼれ球を奪い取ったルーカス・モウラがゴール前の混戦の中キープし続け、ためにためて振り抜いたボールは、隙間のほとんどないところをうまく通り抜け、ゴールマウスの中に入っていったのだ。

これにはトットナムベンチはまるでお祭りのような騒ぎになった。

前半もゴールこそ決めることはできなかったが攻めていたのはトットナム。

後半は完全にトットナムペースになった。

しかしあと1点を決めることができず時間だけがどんどん進んでいく。

そして、5分与えられたアディショナルタイムも4分50秒台になったとき、中盤でのルーズボールを拾ったトットナム選手が前線に放り込んだボールを、最後の最後に、またしてもルーカス・モウラが相手選手よりも一瞬早くボールに触り振り抜きゴールを決めたのだ。

これ以上ないほどの劇的なトットナムの勝利だった。

この試合に出場した唯一のブラジル人選手であるルーカス・モウラのハットトリックの大活躍により、トットナム初の決勝進出を決めたのだった。

ルーカス・モウラは、1992年生まれの26歳。

2010年にサンパウロFCのトップチームでプロデビュー。

ちょうどネイマールと同い年で、一足先にスターダムにのし上がったネイマールに続く若きブラジルの逸材としてかなり注目を浴びていた。

2013年1月に、ネイマールより半年ほど早くヨーロッパのチーム、パリサンジェルマン(フランス)に移籍した。

しかし、ブラジルの至宝ともてはやされブラジルサッカーの象徴となったネイマールとは対照的に、ブラジル代表でのプレーはほとんど記憶にない。

2011年、マノ・メネーゼスの監督時代に、ブラジル代表に招集され、数試合出場しているが、目立った活躍はできていない。

フル代表ではないが、オリンピック代表としてネイマールらとともに2012年のロンドンオリンピックに出場し、銀メダル獲得に貢献している。

その後は、ブラジル代表とはほとんど縁がない。

しかし、今回の活躍を目の当たりにして、大いに活躍できる選手だと強く感じられた。

縦横無尽に動き回り、アクセントとなる動きができる。

そしてなにより、ボールに触れる素早さ、シュートを振り抜くスピードは天下一品だ。

この試合だけでなく、約1か月前のプレミアリーグの試合でも、ハットトリックを決めており、今、乗りに乗っている。

ただし、そうはいっても今からブラジル代表に選ばれるのは難しいだろう。

今年6月にブラジル自国で開催されるコパアメリカでもルーカス・モウラの雄姿を見たいと思うが・・・。

さて。ところで、もう1試合の準決勝、バルセロナ(スペイン)対リバプール(イングランド)の試合でも劇的な結末が待っていた。

1stレグではバルセロナがホームで3-0と大勝しており、バルセロナが圧倒的優位な状態で2ndレグを迎えた。

しかし、そんなリバプールのホームで行われた2ndレグでは、4-0でリバプールが勝利し、2戦合計で4-3となりリバプールが奇跡的な勝利で決勝進出を決めている。

6月1日(土)(日本時間2日(日)早朝)に、スペイン・マドリッドのエスタディオ・メトロポリターノで行われる決勝戦は、 そんなミラクルな2つのチーム、イングランドのチーム同士の対戦となる。

ルーカス・モウラ擁するトットナムに対し、リバプールのブラジル人選手といえば、代表の正GKであるアリソン、そしてこちらも代表で活躍中のFWホベルト・フィルミーノが真っ先に挙げられる。

世界中が注目するこの試合、ブラジル人選手の活躍にも注目していきたい。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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