ブラジルで麻疹34例を確認、保健省が警告を発出
2025年 10月 15日
ブラジル保健省は、各州および自治体に対し、麻疹の兆候や症状を示す個人に対する監視と対応を強化するよう警告を発表した。同省によると、今年は、疫学週38(第38週(9月14日~20日))までに34例が確認されている。保健省は、ウイルスの国内再侵入を防ぐことに強い懸念を示している。
確認された症例のうち、9件は海外から帰国した人々によって持ち込まれたものであり、22件は国外で感染した人との接触によるものだった。さらに3件は、他国で流行しているウイルスと遺伝的に一致している。現在、トカンチンス州、マラニョン州、マットグロッソ州が麻疹の流行地域となっている。
ブラジル予防接種学会(SBIm)のイザベラ・バラライ理事は、国民のワクチン接種率の低下が麻疹の国内再流行の呼び水となっていると指摘し、以下のように述べた。
「海外由来症例は以前からありました。外国人がブラジルに来て持ち込む場合もあれば、ブラジル人が海外で感染して帰国する場合もありました。しかし当時は、私たちの監視体制がしっかりしていたため、状況はすぐに収束していたのです。麻疹ウイルスが国内に入ってきても、国民のほとんどがワクチン接種を受けていたので流行には至りませんでした。ところが今は、ウイルスが入ってくると免疫を持たない多くの人々に出会ってしまうのです」(イザベラ・バラライ理事)
<ブラジル各地で感染症の地域的流行(アウトブレイク)>
トカンチンス州では、州の北東部に位置するカンポス・リンドス市で、7月に流行が始まった。この事例は、1か月間ボリビアに滞在していた4人のブラジル人の帰国と関連している。感染者が居住する地域ではワクチン接種の参加率が低く、住民間での感染が急速に広がった。
マラニョン州では、確認された症例は1件のみである。感染者は46歳の女性で、ワクチン未接種であり、カロリーナ市に居住している。この女性はカンポス・リンドスの住民と接触があった。両市はマラニョン州とトカンチンス州の州境に位置している。
マットグロッソ州の症例はカンポス・リンドスのコミュニティとは関連していないが、同様にボリビアに滞在していたブラジル人によって始まったものである。流行はプリマヴェーラ・ド・レスチ市で始まり、同一家族の3人が感染した。いずれもワクチン未接種である。
<ブラジルにおけるワクチン接種率の推移と課題>
ブラジル保健データネットワーク(RNDS)の発表によると、2024年にブラジルでは三種混合ワクチン(麻疹・おたふく風邪・風疹)の接種率が、第1回接種で95.7%、第2回接種で74.6%に達した。
しかし、2025年には接種率が低下し、第1回接種は91.2%、第2回接種は74.6%となり、麻疹対策の目標値である95%を下回る結果となった。
ブラジル保健省は、これらの数値が麻疹ウイルスの流行リスクを高める要因であると指摘し、予防接種の強化が急務であると強調している。
ブラジルの広大な国土が各自治体における予防接種の均質な実施を困難にしていると、イザベラ理事は説明する。
「接種率は目標ぎりぎりで推移していますが、ブラジルではその地理的規模のために、自治体ごとの接種状況にばらつきがあります。州内の接種率を見ても、現実は非常に異なります。たとえばリオデジャネイロ州では、州都リオ市の接種率は良好ですが、州全体で見ると全国で2番目に低い水準になっています」(イザベラ・バラライ理事)
イザベラ理事は、接種を困難にする要因のひとつとして、国民のリスク認識の欠如を挙げている。
「行動科学によれば、リスクを感じなければ、新聞の一面に載っていても『気にしない』。でも、リスクを感じて、周囲が予防接種所に殺到しているのを見れば、『自分も行こう』となるのです。黄熱病のときがそうでした。ブラジルの接種率は40%でしたが、突然の流行、死亡例、新聞、テレビ…そして長蛇の列ができました」(イザベラ・バラライ理事)
<世界における麻疹の症例>
世界保健機関(WHO)のデータによると、今年の初めから9月9日までに、麻疹の疑い例が360,321件報告され、そのうち164,582件が173か国で確認された。
地域別では、症例数が最も多かったのは東地中海地域で、全体の34%を占めた。次いでアフリカが23%、ヨーロッパが18%となっている。
アメリカ地域では、麻疹の確認症例は11,691件、死亡例は10か国で25件報告された。症例数が最も多かったのはカナダ(5,006件)、メキシコ(4,703件)、アメリカ合衆国(1,514件)である。
南米では、ボリビア(320件)、パラグアイ(50件)、ペルー(4件)で流行が続いており、アルゼンチンでも35件の症例が確認されている。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)