『ザ・シークレット・エージェント』を手掛けたクレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督とは?

2026年 01月 13日

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1月12日、ロサンゼルス、米国。『ザ・シークレット・エージェント』は、2026年のゴールデン・グローブ賞授賞式で、ノミネートされていた3部門のうち2部門(外国語映画賞と、ヴァギネル・モウラによる最優秀男優賞)を受賞した(写真/@goldenglobes)

1月11日に第83回ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞と最優秀主演男優賞を受賞したブラジル映画『ザ・シークレット・エージェント(O Agente Secreto)』が最初に国際的な舞台で注目を集めたのは、2025年5月13日から開催された第78回カンヌ国際映画祭でのことだった。

『ザ・シークレット・エージェント』はクレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督が最優秀監督賞、ヴァギネル・モウラが最優秀男優賞に輝いた。当時アジェンシア・ブラジルは、この作品が最高賞であるパルムドールの有力候補の一つと目されていたことと、(2025年)5月18日に同映画祭で世界初上映されて、10分以上にわたるスタンディングオベーションを受けたと伝えている。

カンヌ国際映画祭やゴールデン・グローブ賞で評価された『ザ・シークレット・エージェント』を手がけたクレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督の作品は、これまでにも国際的に高い評価を受けている。日本でも劇場公開されている『アクエリアス(Aquarius)』(2016年、日本公開は2017年)、『バクラウ 地図から消された村(Bacurau)』(2019年、日本公開は2020年)のいずれの作品もカンヌ国際映画祭にパルムドール候補として正式出品されている。

映画監督、プロデューサー、脚本家のクレーベル・メンドンサ・ヴァスコンセロス・フィーリョは1968年11月22日、ペルナンブッコ州ヘシーフィ市生まれ。故郷ヘシーフィで映画評論家として活動後、2000年代から映像作家としてのキャリアを歩み始めた。

初期の作品には『A Menina do Algodão』(2002)、『Vinil Verde』(2004)、『Eletrodoméstica』(2005)、『凍えるヘシーフィ(Recife Frio)』(2009)などのショートフィルムや、初の長編となったドキュメンタリー『Crítico』(2008)などがある。

2009年作『凍えるヘシーフィ(Recife Frio)』はクレーベル・メンドンサ監督のジャーナリスティックな視点が冴える初期の代表作。“隕石の落下が原因でペンギンが顕れるほど寒冷化した熱帯の都市ヘシーフィ”の様子を伝えるニュース番組風モキュメンタリー(偽ドキュメンタリー)。「都市の緊張をユーモラスに暴く偽ドキュメンタリー」(英「ガーディアン」)、「社会観察と風刺を融合させた異色の短編」(米「ヴァラエティ」)など、海外メディアでも作品のユニークさが紹介された。

メンドンサ監督の国際的な評価を確実なものにしたのは2013年作『軋み泣く街(O Som ao Redor)』。映画の舞台は、多様な社会階層を構成する住民が穏やかに暮らしている(ように見える)ヘシーフィ市内の、とある地域。この通りは、やがてじわじわと不穏に軋みはじめ、目に見えない恐怖に包まれていく。ブラジルの社会に潜在化した暴力や恐怖を、あえて視覚を封じて音や音響で表現した意欲的な映像作品だ。

『軋み泣く街(O Som ao Redor)』は国内ではグラマード映画祭で最優秀監督賞、批評家賞など計4部門を受賞。海外でも、ロッテルダム国際映画祭(IFFR)で国際批評家連盟賞、シネマニラ国際映画祭(フィリピン)で最優秀監督賞、リェイダ・ラテンアメリカ映画祭(スペイン)で審査員特別賞と脚本賞を受賞した。また、メンドンサ監督を「現代都市の緊張を最も鋭く捉える映画作家」と評した米「ニューヨーク・タイムズ」や米「ヴィレッジ・ヴォイス」は、この作品を年間ベスト映画作品のひとつとして評価している。

続く2016年作『アクエリアス(Aquarius)』、2019年作『バクラウ 地図から消された村(Bacurau)』、2023年作『Pictures of Ghosts』(ドキュメンタリー)は、いずれもカンヌ国際映画祭で高い評価を得ている。パルムドールは逃したものの、『バクラウ 地図から消された村(Bacurau)』は審査員賞を受賞した。『Pictures of Ghosts』はカンヌ・クラシックスで上映された。

そして、ホラー、SF、コメディなど既存の映画のジャンルの垣根を超越しながら、ひとつのコミュニティを舞台にアイロニックにブラジル社会(特に、都市に染み付いた暴力)を見つめる作風が得意なクレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督の最新作が『ザ・シークレット・エージェント(O Agente Secreto)』だ。

『ザ・シークレット・エージェント』は1月12日までに、世界各国の36の映画祭で56のトロフィーを獲得している。

「カンヌ国際映画祭」の最優秀監督賞、最優秀男優賞(ヴァギネル・モウラ)
国際批評家連盟賞(FIPRESCI賞)
AFCAE賞(フランス芸術映画協会賞)
「ビアリッツ・ラテンアメリカ映画祭(フランス)」の名誉アブラッソ賞
「クリティクス・チョイス・アワード(米国)」の最優秀外国語映画賞
「第83回ゴールデン・グローブ賞(米国)」の最優秀外国語映画賞、最優秀主演男優賞
「ミドルバーグ映画祭」国際スポットライト賞
「シカゴ国際映画祭」最優秀男優賞
「バージニア映画祭」撮影賞
「ニューポートビーチ映画祭」最優秀男優賞
「キーウエスト映画祭」批評家賞
「リマ映画祭(ペルー)」最優秀作品賞(審査員賞)、最優秀作品賞(国際批評家賞)、特別言及(APRECI)
「サンティアゴ批評家協会賞(チリ)」最優秀脚本賞
「平遥国際映画祭(中国)」観客賞
「モレリア国際映画祭(メキシコ)」UNAMシネマテカ・メダル
「ケルン映画祭(ドイツ)」監督賞
「ハンブルク映画祭(ドイツ)」芸術映画賞
「チューリッヒ映画祭(スイス)」最優秀男優賞
「ストックホルム国際映画祭(スウェーデン)」最優秀撮影賞
「ガルダル国際映画祭」最優秀長編映画賞
「マラガ大学ファンタスティック映画祭」最優秀長編映画賞

(文/麻生雅人)