リオのファヴェーラにおける警察の作戦行動で、10年間で160人が死亡

2026年 03月 20日

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マレー複合地区にあるファヴェーラ、ノヴァ・オランダで麻薬密売組織の武器弾薬を捜索する軍警察の特殊部隊(写真/Tomaz Silva/Agência Brasil)

リオ市北部にあるマレー地区の治安状況を独立して監視するプロジェクト「マレーを見守る目(De Olho na Maré)」の調査によると、2016年から2025年の間に、マレー複合地区を構成する15のファヴェーラで計231件の警察による作戦行動が実施され、その結果、160人が死亡し、住民に対する暴力行為や権利侵害が1,538件確認された。脅迫、拷問、私的拘禁といった事例も含まれている。

これらのデータは、『マレー公共安全の権利報告書2025』第9版に収録されている。同報告書は、マレー地域のコミュニティ組織「マレー・ネットワーク(Redes da Maré )」の「公共安全と司法アクセスの権利」部門が作成したもので、地域で収集された情報に基づき、公共安全に関する独立したモニタリングの歴史的推移を示している。

報告書ではさらに、武装暴力が教育や医療といった住民の基本的権利に及ぼす影響についても言及しており、「マレー・ネットワーク」は、これらの権利が「繰り返し踏みにじられている」と指摘している。

マレー・ネットワークは、1980年代のコミュニティ運動を起源とする市民社会組織で、2007年に正式に設立された。同団体は「マレーを構成する15のファヴェーラに暮らす約14万人の住民の権利を実現するために必要なネットワークを紡ぐこと」を使命としており、社会プロジェクトを通じて 7,000人以上の住民(その家族や近隣住民を含む)に直接的な支援を提供している。

<教育と医療>

調査によると、警察の作戦行動の影響で公立学校の施設が通算163日閉鎖され、「これはマレーの子どもや若者の教育過程において、ほぼ1学年分の授業日数が失われたことに相当する」という。

医療分野でも、昨年だけで医療機関が14日間閉鎖され、その期間に 7,866件の診療・フォローアップが実施できなかった とされる。調査によると、2025年にはマレー地区で16件の警察の作戦行動が行われ、12人が死亡した。

「公共安全と司法アクセスの権利」部門のコーディネーター、タイナ・アウヴァレンガ氏は、2016年から2025年にかけて収集されたデータが、連邦検察庁(MPF)や国連児童基金(UNICEF)といった国内外の機関に働きかけ、必要な施策を検討・実施するための根拠となっていると述べた。

2024年8月には、リオデジャネイロ州のMPFが、警察の作戦行動が教育に及ぼす影響への対応や、失われた授業日の補填に関する全国的な指針について、教育省に説明を求めた。これを受け、2025年1月に国家教育審議会(CNE)は「200授業日フォーラム」と「200授業日遵守常設監視委員会」を設置し、マレー・ネットワークもその構成団体の一つとなっている。

タイナ氏は、マレー・ネットワークが実施してきた調査によって、武装暴力が住民のメンタルヘルスに及ぼす影響が明らかになったと述べた。昨年は UNICEF との協働により、0〜6歳の子どもを対象としたワクチン接種率の指標にも影響が及んでいることが確認された。地域の大半の家庭が接種に前向きであるにもかかわらず、暴力がその実施を妨げているという。

「マレーの住民の90%は予防接種手帳を持っていて、ワクチンの重要性はすでに広く共有されています。ところが、作戦行動が行われる日には接種率が下がる。子どもが授業を欠席する期間によっては、その遅れが取り戻されない場合もあります」と、同氏はアジェンシア・ブラジルの取材に語った。

マレー・ネットワークのディレクターであり、公共安全研究者でもあるエリアナ・ソウザ・シウヴァ氏は、10年間のモニタリングで得られたデータについて、「暴力には毎年繰り返される一定のパターンが存在し、それがファヴェーラ住民の日常生活に深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。

さらに同氏は、「死亡や直接的な権利侵害が発生するだけでなく、最も基本的な権利に関わる公共サービスが中断されることが常態化し、それがあたかも当然のこととして扱われてしまっている。こうした状況は、本来保障されるべき権利が、ファヴェーラの住民に対しては実現されていない現実を示している」と述べた。

プロジェクト「マレーを見守る目」によると、2025年もまた、地域で活動する武装勢力の行動によって、住民の日常生活にさまざまな支障が生じた。調査は次のように指摘している。

「11人が死亡したほか、身体的・心理的・言語的暴力、脅迫、強制移動、学校への侵入、そして141件の銃撃記録が確認された」

マレー地区における武装暴力の継続的なモニタリングは、この10年間で「公共安全と司法アクセスの権利」部門の活動における重要な節目となった。報告書によると、地域に根ざしたチームと、ファヴェーラ独自の方法論を用いて、衝突や警察作戦を追跡してきた点が特筆されるという。「そして、貧困層の住民に対する公共安全の権利を国家が十分に保障していないという事実を裏付ける証拠を生み出してきた」としている。

タイナ氏は、この10年間で特に深刻だった点として、多数の警察の作戦行動が実施されたにもかかわらず、現場での鑑識活動がほとんど行われなかったことを挙げた。160件の死亡事例のうち、鑑識が実施されたのはわずか16件で、正式な告発に至ったのは1件のみだったという。

「国家は現場鑑識の実施も、犯罪現場の保全も、ましてやこれらの事件の訴追も確保できなかったのです」(タイナ氏)

調査は次のように指摘している。

タイナ氏は、公式の説明として、マレー複合地区のような地域は「状況が鎮静化していない」とされ、たとえ多数の警察官が投入された大規模作戦が行われている最中であっても、その論理が繰り返し用いられていると指摘した。

「私たちがパターンとして観察しているのは、作戦行動に参加している治安当局が犯罪現場を保全しないこと、そして鑑識を担当する機関が現場に入らないことです。理由として挙げられるのは、これらの地域が“状況が鎮静化しておらず、実際に安全が確保されていない”という説明です」(タイナ氏)

タイナ氏が挙げたもう一つの重要な点は、2025年は他の年と比べて作戦件数が少なかったにもかかわらず、致死率が高かったという事実だ。

昨年は16件の作戦行動が行われたが、2024年は42件だった。表面的には警察介入が減少したように見えるが、実際にはそうではない。マレー・ネットワークは次のように説明している。

「作戦件数が少なかったにもかかわらず、12人が死亡し、2024年と比べて致死率は58%上昇しました。2024年は作戦が多かったものの、相対的な致死率は低かったのです」(タイナ氏)

組織によると、これは 2025年に実施された各作戦が、より高い確率で死者を出した ことを意味する。

「住民にとってリスクが減ったわけではなく、暴力が集中しただけです。マレーでは以前から見られるパターンが再び確認されました。作戦の頻度は減っても、より攻撃的になり、重火器の集中的な使用、長時間の侵入、そして人口密度の高い地域での直接的な衝突が行われているのです」(タイナ氏)

この状況は州全体の傾向とも関連していると、マレー・ネットワークは指摘する。州公共安全研究所(ISP)のデータによると、2025年には 警察介入による死者が797人 に達し、2024年比で13%増加した。

「同じ期間に、死亡した警察官の数も増加しており、致死性の強化が市民にも治安当局にも、より高い安全をもたらしたわけではないことが示されています」と報告書は述べている。

<ヘリコプターを使った上空からの射撃>

注目すべきもう一つの指標は、ヘリコプターが“上空からの銃撃拠点”として繰り返し使用された点だ。マレー地区で年間を通じて実施された16件の警察作戦行動のうち、8件でヘリコプターが投入され、そのうち4件ではヘリコプターが実際に空中射撃に使用された。

「マレー・ネットワークの現地調査チームは、作戦行動後の路上に少なくとも308発分の弾痕が残されているのを確認した」と報告書は指摘する。

タイナ氏は、特に深刻なデータとして、わずか1回の作戦で、学校や地域医療クリニック周辺の地域に向けてヘリコプターから200発以上の銃弾が発射されたことが確認された点を挙げた。

「ここ数年、私たちが追跡してきたのは、本来であれば治安機関の情報収集に使われるべき軍事装備が、住民の生活を直撃する形で使用されているという事実です。ヘリコプターが投入される作戦では、致死率の上昇も確認されています」(タイナ氏)

コーディネーターによると、これまでの活動経験から、収集された情報は公共政策の立案に役立つ可能性があるという。

「地域に根ざしたコミュニティベースの取り組みとして、ほぼリアルタイムで作戦の動態に関する情報や証拠、データを収集できる点が大きな違いです。もし国家が、マレーの住民が持つ力や私たちの経験を正当に評価していれば、何十年も続いてきた権利侵害のパターンを緩和する方向に働きかけることができたはずです」(タイナ氏)

こうした状況が長年にわたり繰り返されてきたにもかかわらず、コーディネーターは将来に一定の期待を抱いている。

「確かに、同じことがずっと繰り返されています。しかし、失望や憤りがある一方で、住民の動員、市民によるデータ生成、そして知の生産──とりわけ、これらの地域や住民、そして市民社会から生まれる知識こそが、リオ州で何十年も続いてきた現状に立ち向かう大きな原動力になると考えています」(タイナ氏)

タイナ氏によると、来週火曜日(3月24日)に、マレー地区で開催される第3回国際会議「マレー公共安全会議」の会場、アレニーニャ・クウトゥラウ・エルベルト・ヴィアーナで報告書が発表された後、文書は行政府・立法府・司法府のさまざまな機関に送付される予定だという。

この会議は3日間にわたり開催され、リオデジャネイロに国内外の公共安全の専門家や活動家が集まり、8つの討論パネルとワーキンググループが設けられる。

<警察からの返答>

リオデジャネイロ州文民警察(Polícia Civil)の州公安局は声明で、調査に用いられた手法やデータの追跡可能性について「把握していない」とアジェンシア・ブラジルに回答した。そのうえで同局は、「司法令状の執行、組織犯罪への的確な対処、生命の保護を目的に、技術的基準、情報分析、作戦計画に基づいて行動している。すべての活動は合法性、必要性、比例性の原則に従っている」と付け加えた。

また同局は、すべての事案について「捜査の過程で複数の捜査手続きを行い、厳格に調査している」と説明。技術鑑識については、「広範かつ体系的で厳密な捜査プロセスの一部を構成しており、事実の完全な解明と関係者の責任追及を目的とした措置の一環である」と述べた。

同局はさらに、「対峙を選ぶのは常に犯罪者であり、その結果、現場に関わる警察官の安全だけでなく、地域の住民や労働者、周辺を行き交う人々の生命も危険にさらされる」と主張した。

「麻薬組織は、学校や医療施設の近くといった“治安上の要衝”に本格的な要塞を設置し、住民や労働者、地域を行き来する人々を直接的に危険にさらしている」とも述べている。

声明は次のように結ばれている。

「民警の使命は、情報に基づく技術的な活動を通じて社会を守り、犯罪者の責任を追及し、暴力指標を着実に低減させることにある」

一方、軍警察(Polícia Militar)は、作戦が地域社会に及ぼす影響についてのアジェンシア・ブラジルの質問に回答しなかった。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)