右派政権が台頭するラテンアメリカ。“トランプ寄りの政治的立場”に属さないのはブラジルとウルグアイのみ、と研究者は指摘

2026年 06月 30日

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写真はブラジル・パラナ州フォス・ド・イグアスで開催されたメルコスール加盟国および準加盟国の大統領・代表団長による首脳会議に出席したルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領(写真:Ricardo Stuckert/PR)

ブラジル政府は、右派または極右政権となった近隣のラテンアメリカ諸国との二国間関係について、イデオロギーの影響を受けにくいインフラ、エネルギー、組織犯罪対策、自然災害への協力といった実務的なアジェンダに重点を置く方針だ。

ペルーでのケイコ・フジモリ氏の勝利、コロンビアでのアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャ氏の勝利、さらに昨年のチリ、エクアドル、ボリビアでの右派勢力の選挙結果により、ブラジルは南米地域で一層孤立した形となった。現在、地域の進歩派陣営に属する国は、ブラジルとウルグアイのみとなっている。

ブラジル政府は、こうした地域情勢がブラジルとペルー、エクアドル、チリ、コロンビア、ボリビアとの二国間関係に悪影響を及ぼすことはないとみている。唯一の例外はアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領で、同氏はブラジル政府に対してより敵対的な姿勢を示している。

その他の国々について、政府は各国の実務的利益がイデオロギーから切り離されたアジェンダの中で優先されるべきだと評価している。具体例としては、太平洋と大西洋を結ぶインフラ投資に向けたパートナーシップが挙げられる。

エネルギー分野での協力も継続し、さらに強化される見通しだ。イランでの戦争により、世界のエネルギー部門が抱える脆弱性が露呈したことが背景にある。

この方向性を示す一例として挙げられるのが、チリのホセ・アントニオ・カスト大統領が、今週開催されるメルコスール首脳会議の場で、ブラジルのルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領との二国間会談に関心を示していることだ。

また、ボリビアでの抗議行動の状況下でロドリゴ・パス氏がブラジルに支援を求めたこと、さらにコロンビアの新大統領がルーラ氏による祝意の表明に対して丁重な返答を行ったことも、ブラジルと右派政権の隣国との関係が、各国の具体的な利益を基盤として進められることを示す材料とみられている。

<ブラジルとコロンビアの環境協力に暗雲>

一方で、ブラジリア大学(UnB)国際関係学のホベルト・ゴウラール・メネーゼス教授は、二国間関係が継続するとしても、南米の地政学的状況は「繊細」であると指摘する。その理由のひとつとして、極右の指導者たちの政治的性格を挙げた。

「もはや従来型の右派政権について語っているわけではありません。コロンビアでは、伝統的な右派の特徴を持たない人物が政権を担うことになるのです」と教授はアジェンシア・ブラジルに語った。

メネーゼス教授は、アルゼンチンがブラジルとの関係を遠ざける中で、これまではコロンビアがそのバランスを取る役割を果たしてきたと説明する。しかし、グスタボ・ペトロ政権下で保たれてきたブラジルとコロンビアの環境保護協力は、今後は損なわれる可能性が高いとみている。

「アマゾンに関するテーマは影響を受けるでしょう。ブラジルはコロンビアと非常に緊密に対話してきました。2023年8月のアマゾン首脳会議は、ブラジルとコロンビアの共同イニシアチブだったことを思い出すべきです。現在極めて重要な環境問題は、緊張状態にあります」と同氏は述べた。

<民主主義の防衛と中国>

南米で極右政権が台頭する中、大陸における民主主義の防衛というテーマも影響を受ける可能性があるとメネーゼス教授は指摘する。同教授はさらに、米国のドナルド・トランプ大統領が断ち切ろうとしている、南米諸国と中国との商業関係にも言及した。

「ブラジルは現在、過去20年間で見たことのない状況に置かれています。つまり、米国に同調し、従属的な姿勢を取る政府が複数存在し、南米でこの“トランプ寄りの政治的立場”に属していないのは、ブラジルとウルグアイだけなのです」(メネーゼス教授)

<多国間協力>

近隣諸国との二国間関係の維持に自信を示す一方で、ブラジル政府は、多国間レベルでの集団的協力はもはや成立しないとの認識を示している。

その理由として、米国の政策に同調する候補者の勝利が続いたことで、トランプ氏の存在と承認なしには地域的な協力アジェンダの構築が阻まれている点が挙げられる。

この結果、ブラジルがルーラ大統領の当選(2023年1月就任)以降、再活性化を試みてきた 南米諸国連合(Unasul) や 中南米・カリブ諸国共同体(Celac) といったフォーラムは、今後、影響力を失う可能性が高いとみられている。

一方で、ブラジル政府の評価によると、メルコスールは依然として地域フォーラムとしての重みと重要性を保つ見通しだ。
その理由として、メルコスールは、より制度化された枠組みであり、貿易を中心としたプラットフォームとして、政治的・イデオロギー的立場を問わず各国政府の関心を引き続けている点が挙げられる。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)