ブラジルは地下鉄向けフリーペーパーのパイオニアだった!?
2013年 08月 31日世界で最初に地下鉄を走らせたのはイギリスのロンドンで、なんと1863年であった。ニューヨークはロンドンに遅れること約40年の1904年。日本は1927年だが、スペインのバルセロナが意外に早く1924年。そして、その50年後の1974年にブラジル・サンパウロの1号線リーニャ・アズ―(ブルーライン)が開通した。
近年、地下鉄の駅の出口周辺ではフリーペーパーを配布するのが、どこの国でも朝の風物詩になってきた。日本の地下鉄でも多くのフリーペーパーが設置されているが、その草分けは、日刊工業新聞が1995年に発刊した「メトロガイド」。フリーペーパーの老舗のように思われているイギリス「METRO」は、実は1999年創刊と新しく、今世界を席巻している「metro」は2002年にスウェーデンから始まったものだ。
もちろん、フリーペーパー大国のアメリカや日本には、もっと以前から不動産専門であったり、求人専門、ショップ情報中心など、いわゆる広告だけの無料カタログ紙はたくさんあったが、ちゃんと記事も載った新聞形式のものはなかったようだ。
地下鉄開通では遅れを取ったブラジルだったが、実は1974年の地下鉄開通と同時に「METRO NEWS」というフリーぺ―パーがスタートしており、これは調べる限り地下鉄周辺で配布するフリーペーパーとしては世界でも先駆けではないかと思われる。「METRO NEWS」は、今も月曜日から土曜日まで、サンパウロ市を中心とした大サンパウロ圏で毎日100万部配布されている。
それに対抗して発刊されたのが「Destak」(2006年)と「metro」(2007年)で、まさに経済が絶好調の時に創刊されている。緑の制服を着ているのがmetroの配布員で、サンパウロ、クリチバ、リオ、サントス、ベロホリゾンテ、ポルトアレグレなどの都市で約55万部毎朝配布しており、オレンジがDestakでサンパウロ、リオ、ブラジリア、カンピーナス、ABC、レシーフェ等で毎朝約120万部配布されている。
その驚くべきは広告費で、あくまで定価ベースだが「METRO NEWS」が平均で4色1頁あたり、1回450万円。ある日の紙面を見ると、総ページ数32ページのうち約10ページが広告なので、単純計算では、1日4500万円の売り上げとなる。それをさらに上回るのが「metro」。全36ページで、そのうちの約26ページが広告だが、4色1頁の広告料金が1回なんと2000万円!!
いくら定価にしても、発行部数が数10万部程度のフリーペーパーなのに、日本の大手新聞社が発行部数1000万部前後を誇っていた時代の全面広告に匹敵する広告料である。もちろん、掲載回数や銘柄によって大幅にディスカウントして、“5割、8割は当たり前!!”ということだとは思うが、どんどん廃刊する日本のフリーペーパー業界からはため息が出そうな話である。ブラジルは、インターネット以外の旧来メディアも、まだまだ稼げる国である。
(写真/輿石信男)