ブラジルでコンドミニオ内の住人向けビジネスが成長中
2015年 01月 25日ブラジルの大都市、特にサンパウロなどでは、塀で囲まれた広大な敷地内にマンションや戸建ての家などが林立する「コンドミニオ」と呼ばれる形式の住居群が点在している。
コンドミニオの入り口にはゲートがあり、厳重な警備体制が取られている。外部からコンドミニオの住人を訪問する際は、ゲートの警備員に身分証を見せ、警備員から訪問先の住人に確認が取れないと敷地には入れないという徹底ぶりだ。
最近はそのコンドミニオをめぐるスモールビジネスが熱いという。
TVグローボが番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴーシオス」において2014年7月27日づけで伝えたところによると、近年、コンドミニオの一室で住人向けの商売を始める個人事業主が増えてきているという。
コンドミニオも大きなものになると10万平方メートル以上の敷地、20棟以上のマンション、住人は1万2千人以上というものもある。個人事業にとって、敷地内だけでもマーケットとしての魅力は十分ある。
商売は住人の日常生活に密接にかかわるものが多く、娯楽、食料品、清掃・クリーニング、通信・情報関連、管理・修繕、不動産サービスなど多岐にわたっている。
コンドミニオ内のスモールビジネスが増えてきた要因の一つは、都市部における移動効率の悪化、つまり交通渋滞と駐車場不足だと言われている。都市部、特にサンパウロでは生活必需品の買い物も一苦労だ。その点、コンドミニオ内の店であれば、徒歩で行けて、しかも鉄壁のセキュリティ体制に守られている。
商店主からすると、宣伝コストゼロで商売が始められる点も魅力だ。
「ここは居住スペースで各家庭には女性が必ずいる。顧客層は厚く、いわば金鉱山のようなもの」と、あるコンドミニオで化粧品店を始めたばかりの女性はいう。
商売を始めて日が浅いにも関わらず、この女性はすでに月3000レアル(約15万円)の利益を上げ、日に20人以上の顧客の対応をしている。
また、同敷地内には不動産屋も入っており、オーナーいわく、店で扱う物件のうち、コンドミニオ内の物件が70%以上を占めているという。コンドミニオ内には約3000室あり、賃貸物件は一室月額約900(約4万5千円)レアルから、売買物件は25万~100万レアル(約1千200万円~5千万円)が相場だ。これらの取引から生じる取扱手数料が収入源だ。
この不動産屋は月に約4万5千レアル(約225万円)の利益を上げている。
「物件数が多いので売買の数も常にそれなりにある。物件が近いため売りたい人、買いたい人の双方にとって便利な点も商売に有利に働いている。物件の内覧のために渋滞の中を車で移動する必要もない」(不動産業者)
コンドミニオの住人自身が店を開くことも増えているという。
7年コンドミニオに住んでいる女性が敷地内にパン屋を開いた。本人には職住が近いというメリットもあるが、「質のよいサービス・商品を提供していれば顧客は毎日来てくれる。それが大きな魅力」という。
この女性は店の賃料を2000レアル(約10万円)払っている。顧客の数は保証されているとはいえ、増やすことはできない。売上を伸ばすには顧客一人当たりの販売額を上げるしかないのだ。そこで、同じスペースで生活用品の販売と軽食の提供も始めたところ戦略が当たり、去年は売上20%増しとなった。
顧客に毎日足を運んでもらうためにはいい品を置くだけでなく、適正な価格設定、顧客一人一人への個別対応が欠かせないという。彼女は1日500人の顧客の対応をしているが、すべての顧客を個人名で呼ぶよう心掛けている。
交通渋滞と治安問題を逆転の発想でチャンスに変えた個人事業主、今後は客単価の増加を目指ししのぎを削ることになりそうだ。
(文/原田 侑、写真/Divulgação)
写真はリオにあるコンドミニオのひとつ。コンドミニオは敷地内にプールや公園を備えるところが多い。2016年にサンパウロ市オザスコ地区に完成予定の高級コンドミニオは、敷地内にショッピングセンター、スーパーマーケット、スポーツジム、ピラテス、サッカーコート、レストラン、ピザ焼き窯つきシュハスケイラも備わる予定。コンドミニオ内はもはやひとつのコロニー!?