ブラジルのブランド、オスクレンの原点ともいえるエコロジー・ライン「e – fabrics」
2013年 10月 27日日本でもショップ展開しているブラジルのブランド「OSKLEN(オスクレン)」が、今年の9月11日(水)~13日(金)に国立代々木競技場第一体育館で開催された合同展示会「rooms27」に参加。エコロジー・ラインの「e – fabrics」のプレゼンテーションを行いました。
オスクレンは、年に2回開催される「rooms」に毎回出展しており、例年、翌シーズンのコレクションを発表しています。しかし今回は、オスクレンがテーマにしている<ファッションにおける持続可能性(サステナビリティ)な環境問題への取り組み>について、改めて前面に押し出して発表しました。
オスクレンは、クリエイティブディレクターのOskar Metsavaht(オスカル・メツァヴァト)が1988年に始めたリオデジャネイロ発のブランド(ブランド設立は1989年)。ラグジュアリーライン、サーフィンラインという、大きく異なるテイストが共存していることでよく知られているブランドです。
サーフィンや登山をこよなく愛するオスカルにとって“ファッションと自然との共生”はごく自然なことで、それこそがオスクレンの原点となっています。
そもそも医師の家庭に生まれ育ったオスクレンは、自身も医大の出身。アンデス山脈で高山病の研究を行う際に、機能的な防寒服が無かったため、自分でジャケットを作ってしまったのがファッションの世界に足を踏み入れるきっかけになったのだという。ちなみに、2013年秋冬ラインのテーマは「INTO THE MOUNRAIN 」でしたが、これはまさに、オスクレンにとって原点ともいえる世界だったのでは!?
さて、そんなオスカーは、オスクレンを運営するにあたり、“6つのe”(earth / environment / energy /education / empowerment / economics)をテーマに掲げた「instituto-e」という環境活動を行っています。このコンセプトに沿ったシリーズが、今回、「roomes27」でフィーチュアされた「e – fabrics」というわけです。
「e – fabrics」のコンセプトが初めて提示されたのは、2007年のサンパウロ・ファッションウィークでのこと。商品として最初にインパクトを与えたのは、サーモンレザーのシューズでした。
オスカーが使っているのは、食肉加工業者が廃棄していたサーモンレザー。それまで廃棄による水質汚染が問題となっていましたが、ファッションアイテムの素材として利用することで廃棄量を減らそうというプロジェクトです。「e- fabrics」では、このサーモンレザーからはじまって、同様に廃棄されるピラルクーの皮を使ったバッグ、スニーカーなど、エコ素材を使ったアイテムを次々と発表しています。
オスクレンを日本で取り扱うH.P.FRANCEのブラジルプロジェクト ディレクター、後藤良太さんは「本格的にサステナビリティをテーマにした商品に取り組んだデザイナーズ・ブランドとしては、オスクレンは草分け的な存在といえるのではないでしょうか」と語ってくれました。
ブラジルにある天然素材を使った「e – fabrics」シリーズの商品は、結果的に、ブラジルならではの生物多様性の価値観や文化的な伝統を大切にするというメッセージを打ち出しています。もちろんこの精神は「e- fabrics」以外のオスクレンの商品にも受け継がれています。
今では定番アイテムとなったエコバッグにも、オーガニックコットンや、土に還るリサイクル・コットンを使ったものがあります。サーフラインの「arpoador(アルポアドール)」では藁をひも状に編んで作ったシューズを発表しています。他にも、服を作る際に出る廃材の糸を再生した繊維や使用済みペットボトルなど、様々な素材がオスクレンの服となって生き返っています。
さらにはファッションアイテムにとどまらず、カーボン素材を使ってサーフボードまでを制作しています。
むしろ、全面的にエコを打ち出した「e – fabrics」だけでなく、ファッションやサーフカルチャーを通じて、人々のライフスタイルの中に生物多様性や自然保護などの価値観を浸透させているという点こそが、オスクレンというブランドの最大の特徴化もしれません。
そんな活動が評価されてオスカルは、2011年、UNESCO親善大使として任命されています。ファッションデザイナーでUNESCO親善大使に任命されたのは、ピエール・カルダン、、ピエール・ベルジェに次いで、世界で3人目なのだそうです。
「e- fabrics」シリーズは、今後各ショップで大体的に紹介されていく予定とのことですが、私が何よりも感じたのは、このシリーズは、見た目だけではエコ商品だと気がつかないくらい丈夫で、かつ仕上がりがとてもオシャレで、リッチな商品ばかりだったこと! 実際、オスカー自身も、「e- fabrics」はエコブランドではありません。一番大切にしているのは見た目の美しさと着た時の快適さ」だと語っているそうです。
着てみたときの快適さや立体的に美しく見えるデザインもオスクレンの服の大きな特徴ですが、医学を通じて人体の構造に精通していることも、オスカーのデザインに大きく役立っているのだそうです。
自然を愛するあまり、サステナビリティにも本気で取り組んでいますが、それ以上に、着た時の美しさをとことん追求しているオスクレン。一見しただけでは、素材や商品の背景にそんな深いコンセプトがあることに気づかないのも、当然なのかもしれません。
OSKLEN
銀座店
中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
営業時間 10:30~20:30
青山店
港区南青山5-7-17 小原流会館 B1F
営業時間 12:00~20:00(月末日曜定休)
(写真・文/長倉チエミリズレイ)