稀代の錬金術師がブラジル市場から退場か!?チーム・バチスタで復活を
2013年 11月 7日12年までは、ピーク時の総資産が300億ドルともいわれ、ブラジルナンバーワンで世界のトップ10にもランクインしていたほどの大富豪だったエイケ(アイキ)・バチスタ氏(写真)が会社更生法を申請し、一夜にしてブラジルナンバーワンからラテンアメリカ最大の債務王となったようだ。日本でも、最近特に家電業界などで、最高益をたたき出して2~3年後に危機的状況に陥るケースがあるが、バチスタ氏はさらに垂直的な落下で、負債総額は約50億ドルになるようだ。
直近の10年でGDP(国内総生産)が3倍にも膨らんだブラジルでは、多くの大金持ちが生まれたが、その中のトップランナーが間違いなく、エイケ(アイキ)・バチスタ氏だった。
そもそも父親が鉱山動力大臣などを歴任し、先日開かれた日本ブラジル賢人会議においても、ブラジル側の名誉座長を務めたエリエゼル・バチスタ・ダ・シルヴァ氏(ヴァーレ社特別顧問)という名家の出である。そして、自らも数カ国語を駆使し、金・鉄鉱石を中心とした資源ビジネスで頭角を現し、その後は海外の上場企業の大株主になったりもした。
そして、十数年前より徐々に政権にすり寄り、海外からのブラジル投資ブームも踏まえて、政府が力を入れるエネルギー、資源開発、ロジスティクスなどの会社を立ち上げ、次々と上場をし、バブルのごとく資産は膨らんでいった。
最後は、国営企業が本来は行うような分野に突入し、資金がいくらあっても足りない状況となったが、高株価による時価総額と政府とのつながりを背景に、政府系金融機関およびブラジルの大手金融機関から次々と巨額融資を引き出した。まさに、日本のバブル時代を彷彿とさせる手法と勢いであった。
日本のバブル時代は、エイケ(アイキ)型の投資家がたくさんいたわけだが、ブラジルにおいて彼は特殊な存在である。ブラジルのほとんどの資産家は、どちらかというと昔ながらの特権階級であり、本業の儲けをベースに事業展開をしている。
父親のエリエゼル・バチスタ氏は、日本が鉄鉱石をはじめとしてブラジルと大型国家事業を展開した時代のブラジル側の窓口であり、よき日本の理解者であった。日本人の勤勉さやコツコツとした仕事の進め方、そして技術力にも、常に敬意を払っていた。その父を越えるべく事業展開をしていたエイケ・バチスタ氏はそんな日本企業とは一切組まず、どちらかというと韓国などと親しく事業を行っていたらしい。
しかし、転んでもただでは起きないのがブラジル人。ぜひ、今回の失敗を轍に復活して、また新たな姿を見せてほしい。今度はぜひ日本企業とチーム・バチスタを組織して栄光をつかんでいただきたい。
(文/輿石信男株/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Fábio Pozzebom/Agência Brasil)