アマゾンの魚類を保護するためのゲノム研究が初めて実施される
2026年 01月 19日

ピラルクー(Arapaima gigas)とフィリョッチ(Brachyplatystoma filamentosum)は、アマゾンに生息する二つの魚種であり、同じ生態系を共有しているだけでなく、いくつかの共通点を持つ。いずれも食用としての需要が高く、また養殖環境での繁殖が難しいという特徴がある。
こうした特性が、パラー連邦大学(UFPA)が実施した初の研究において、両種が最初にゲノム解読の対象に選ばれた理由だ。
生物科学研究所のヒト・医療遺伝学研究室を率いたシヂネイ・サントス研究員によれば、この研究は、需要の増加に伴って進行する両種の乱獲による影響を抑える必要性が動機となったという。
「中心となる考え方は、バランスの取れた、的確な方法で十分な知識を得て、これらの魚をできる限り持続可能な形で生産できるようになれば、自然への依存を減らすことができるという点にあります」(サントス研究員)
こうした知識を得るための最も包括的な方法は、種に属する複数個体から採取した生物学的サンプルに含まれるDNA(デオキシリボ核酸)を解読することだ。この分子は、A・T・C・Gの4種類の塩基を含むヌクレオチドが連なって構成されており、健康状態や身体的特徴、系統などに関する情報を保持している。
今回のピラルクーとフィリョッチを対象とした研究では、科学者たちは100匹以上の個体からサンプルを採取し、ヌクレオチドの並び順を読み取ることができる遺伝子シーケンサーでDNAを解析した。ヌクレオチドの並び方が異なれば、それぞれが生物固有の情報を示し、それらが集まってその種のゲノムを構成する。いわば、その生物の「設計図」に相当する。
「これは、想像しうるあらゆる動物や植物に当てはまるどんな動物にも、どんな植物にも当てはまります。モデルは常に同じです。もし持続的な方法で、これらの動物のゲノムに関する完全な情報を得ることができれば、繁殖を含め、あらゆることが可能になります」(サントス研究員)
研究者によると、実際には、その魚が養殖用の親魚から生まれた個体なのか、それとも自然環境から直接採取され、他国へ商業的に輸出されたものなのかを判別することも可能になるという。
トレーサビリティ(追跡可能性)
種の保護は、自然環境で繁殖した個体の採取を減らすことにとどまらない。各種のゲノムに関する知識を得ることで、その動物がどこから来たのかという正確な起源を把握することも可能になる。
アマゾニア連邦農業大学の社会環境・水資源研究所の所長であり、UFPAの研究にも参加したイゴール・アモイ所長によると、生理学的な知見に加え、ゲノムは遺伝的トレーサビリティを可能にするという。
「例えば、ピラルクーのゲノムに刻まれた“歴史”を読み取れば、ボストンで販売されているピラルクーがアマゾン由来のものかどうかを突き止めることができます」(イゴール・アモイ所長)
同氏はさらに、研究で得られたすべての情報が公的な遺伝子バンクに登録され、今後の種に関する新たな研究の発展を可能にしている点を強調した。
「その魚が正確にどの種に属するのかを特定でき、地域社会で使われている学名や通称が、本当にそのアマゾンのコミュニティが長年食べ、扱ってきた魚と一致しているのかどうか、もはや疑う必要がなくなるのです」(イゴール・アモイ所長)
進展
得られた情報を基に、研究者たちはピラルクーとフィリョッチの養殖における主要な課題の解決に向けて前進することができた。
具体的には、性ホルモンの誘導、人工環境に適した栄養の開発、そしてアマゾン産の魚種が違法に取引されることを防ぐためのトレーサビリティ(追跡可能性)の確立である。
環境・気候変動省生物多様性・森林・動物の権利局のヒタ・メスキータ局長によると、こうした科学の進展は、国内の保全政策を実施する上で重要な指針となるという。
「遺伝学の研究は、ブラジルの生物多様性に関する知識を深めるだけでなく、これまでに何を行い、何がまだ不足しているのかをより的確に理解する助けにもなります」(ヒタ・メスキータ局長)
同局長によると、2030年までの計画を定めた「国家生物多様性戦略・行動計画(Epanb)」は、生物多様性の損失を抑え、ブラジルの各バイオームを再生するために科学が必要と示す内容を基盤として策定された。
また、科学者によって解読されたゲノムに依存する政策も存在する。外来侵略的種リストや「絶滅のおそれのある野生生物国家リスト」の作成がその一例だ。さらに、同氏は2024年に連邦政府が発表した「国家在来植生回復計画(Planaveg)」も例として挙げた。
「動物相が失われた地域での再導入や、植生の回復といったプロセスにおいて、この遺伝情報の“図書館”は、各種を本来あるべき場所に戻すために必要な知識へアクセスすることを可能にしてくれます」(ヒタ・メスキータ局長)
課題
シヂネイ・サントス研究員の評価によると、各種生物のゲノムを解読する研究の拡大は、必要な資源のコストが下がっていることもあり、国内外で今後さらに進展していく分野だという。
「最初に解読されたヒトゲノムは、完成までに10年を要し、費用は25億〜30億米ドルにのぼりました。その後、機器の性能が向上し、現在では私たちが使用しているMGIという装置(DNAシーケンサー)で、3時間あれば48人分のヒトゲノムを解析できます。費用も1,500〜2,000米ドル程度で、今後さらに下がることを期待しています」(サントス研究員)
一方でアモイ氏は、アマゾン地域では他地域よりも課題が大きいと指摘する。サントス氏によると、UFPAが保有する装置はアマゾン地域の公的機関で唯一の遺伝子シーケンサーであり、さらに物流や運用上の困難によって生じる「アマゾン・コスト」(物流や運用面の追加負担)も存在するという。
「現在、費用は以前より下がっていますが、依然としてどの研究者や大学でも容易に負担できる水準ではありません。UFPAのヒト・医療遺伝学研究室が持つ技術基盤は、こうした作業を可能にするものですが」(サントス研究員)
「しかし、この研究に必要な試薬などの資材は、別途資金が必要です。多くの研究分野があり、とりわけ応用研究には継続的な資金提供が欠かせません」(サントス研究員)
ヒタ・メスキータ局長は、種の消失を防ぐ取り組みは、世界最大規模の生物多様性を持つブラジルにとって、その規模に見合う大きな挑戦だと強調する。
「環境省が取り組んでいるのは、科学と連携しながら優先地域に関する情報を改善し、特に絶滅の危機にある種の生息地を守り、消滅を防ぐための保護を継続することです」(ヒタ・メスキータ局長)
また、科学の役割は、人間とあらゆるバイオームの生物種との関わりを持続可能性の基準に基づいて行えるようにするための知識を生み出す点にあると指摘する。
「これは動物にも植物にも当てはまります。持続可能な方法で管理し、回復し、再生し、元の場所に戻す手段があれば、低い環境負荷で管理し、保護地域で安定した個体群を維持するという、持続可能な原則に基づく関係を築くことができるのです」(ヒタ・メスキータ局長)
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




