トランス女性議員を批判したテレビ司会者、女性蔑視とトランスジェンダー差別発言で訴えられる
2026年 03月 20日

ブラジル通信省は3月18日(水)、エリカ・ヒルトン連邦下院議員:社会主義自由党サンパウロ(PSOL/SP)が提出した、SBT局の司会者ラチーニョによるトランスフォビア(トランスジェンダー差別)発言に関する告発について、行政的な審査手続きを開始した。
審査は、通信省の放送行政局(Serad) の技術チームが担当し、行政および法的手続きに従って内容を精査する。
同局は声明で、「透明性、制度的対話、そして現行法の厳格な遵守に対するコミットメントを再確認する」と述べた。同局は、放送サービスに関する公共政策や指針、目標の策定・評価を担う部門でもある。
ヒルトン議員は行政処分として、ラチーニョの番組を30日間停止するよう求めている。
先週水曜日(3月11日)、SBTの番組司会者ラチーニョは、生放送中に連邦下院「女性の権利擁護委員会」の委員長にエリカ・ヒルトン議員が選出されたことについてコメントした。トランス女性の議員が同委員会の議長に選ばれるのは今回が初めてだった。
全国放送の生番組でラチーニョは 「トランス女性が女性を代表するのは“正しくない”」 と述べ、委員長職は「本物の女性」が務めるべきだと主張した。さらに彼は、「女性は子宮があって、月経があって、3~4日イライラするものだ」と発言した。
翌日(12日)、ヒルトン議員はラチーニョを トランスフォビア(トランスジェンダー差別)と女性蔑視 の疑いで提訴したと発表した。
ヒルトン議員はX(旧Twitter)にこう記した。
「ラチーニョは番組を中断して、トランス女性は女性ではない、月経がない女性は女性ではない、子宮がない女性は女性ではない、子どもを産まない女性は女性ではない、と言い放った」
今週月曜日(16日)、ラチーニョは自身の番組でこの問題に言及し、「ただ意見を述べただけなのに攻撃されている」と反論した。
<連邦下院「女性の権利委員会」、初のトランス女性議長エリカ・ヒルトン>
ブラジル連邦下院の「女性の権利擁護委員会」は先週水曜(3月11日)、トランス女性であるエリカ・ヒルトン議員:社会主義自由党サンパウロ(PSOL/SP)を今年の委員長に選出した。
ヒルトン氏は11票を獲得し、10票の白票を上回った。前任のセリア・シャクリアバー議員:社会主義自由党ミナスジェライス(PSOL/MG)の後を継ぐ。
就任演説でヒルトン氏は、同委員会を率いる初のトランス女性となったことに触れ、対話と女性の権利擁護を軸に委員会運営を進めると述べた。
「この議長職は単なる名前ではなく、広がり続ける民主主義の象徴です。私の任期では、すべての女性──シングルマザー、働く女性、黒人女性、先住民女性、そしてこの国のあらゆる場所で生存と尊厳のために闘う女性たち──を対象に取り組みます」(ヒルトン議員)
同議員による新体制が掲げた主な優先事項は以下のとおり。
- 女性保護ネットワークおよび支援センター「ブラジル女性の家」の監視・点検
- ジェンダーに基づく政治的暴力への対処
- 女性の包括的な健康政策の推進
これに対し野党議員らはエリカ・ヒルトン氏の選出を遺憾とし、委員会はシスジェンダー(出生時に記載された性別)の女性が率いるべきだと主張した。また、委員会が「イデオロギー化」していると批判した。
クリス・トニエット議員:自由党リオデジャネイロ(PL/RJ)は次のように述べた。
「女性の尊厳、生命、家族を守るべきこの委員会が、女性の本質そのものを歪める議題に委ねられることには同意できません」(トニエット議員)
クラリッサ・テルシオ議員:進歩党ペルナンブッコ(PE)は、委員長職は「“事実上の女性”」が務めるべきだと主張した。彼女は、エリカ・ヒルトン氏の選出は女性の権利にとって後退であり、自身が代表する保守層の価値観への「侮辱」だと述べた。
「私たちは、目の前で起きていることに沈黙するわけにはいきません。この委員会は女性のための委員会です。私たちは“本物の女性”、私たちの本質や生物学的な課題を理解する女性に代表されたいのです」(テルシオ議員)
一方、委員会の第1副委員長に選ばれたラウラ・カルネイロ議員は、イデオロギーに左右されず、ブラジルの女性たちの生活を中心に据えるべきだと強調した。
「この委員会には、多くの闘いと成果の歴史があります。副委員長として、議長および同僚議員と協力し、私たちの焦点をただ一つ──この国のすべての女性の権利と尊厳──に置いて取り組むことを約束します」(カルネイロ議員)
エリカ・コカイ議員:労働者党連邦直轄区(PT/DF)は、委員会の設置そのものが「抵抗の瞬間」だと述べ、選出された議長の正当性を擁護し、偏見によって議論を封じようとする試みに反対した。同議員は、委員会はすべてのブラジル人女性の多様性を受け入れる場であるべきだと強調した。
「私たちは、この議会が憎悪の舞台となることを許しません。この委員会は女性たちの命、平等、そして何よりも、脆弱な立場に置かれた人々を守るというブラジル国家の責務の実現のために働きます」(コカイ議員)
<SBT局と司会者への民事公益訴訟>
また先週金曜日(13日)には、連邦検察庁(MPF)は、ラチーニョとSBTに対し、番組内でのトランスジェンダー差別的発言を理由に 民事公益訴訟を提起した。
MPFは両者に対して集団的精神的損害に対する1,000万レアルの賠償支払いを求めている。
訴状は、リオグランジ・ド・スウ州のエンリコ・ホドリゲス・ジ・フレイタス市民権擁護担当地域検事が、エリカ・ヒルトン議員からの要請を受けて署名した。
検事は訴状の中で、今回の行為について次のように説明している。
「全国放送の地上波テレビおよびSNSなどの拡散手段を通じて、被告らが行った偏見と差別の行為を対象とするものだ」
さらに訴訟では、損害賠償に加えてSBTに対し、LGBTQIA+コミュニティへの新たな侮辱を防ぐための予防措置・自主規制・監視メカニズムの導入を義務づけることも求めている。
(記事提供/Agência Brasil 3月18日、3月11日、構成/麻生雅人)




