G7参加のルーラ大統領、高市首相と会談へ。日本とメルコスールの協定協議を議題に

2026年 06月 16日

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2026年6月15日、フランス・エヴィアン=レ=バンで開催されるG7サミットに到着した、ブラジル連邦共和国のルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領(写真:Ricardo Stuckert/PR)

ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ・ブラジル連邦共和国大統領は、6月15日(月)から17日(水)にかけて開催されるG7サミットに招待国として参加している。

会期中、ルーラ大統領は途上国への国際支援の拡充や、国連(UN)や世界貿易機関(WTO)などの国際ガバナンス改革を訴える見通しだ。

また、米国による最近のブラジル批判を含む世界的な通商摩擦が高まる中で、多国間主義の強化を目指す姿勢を示しているルーラ大統領は、各国首脳と二国間会談を予定している。日本の高市早苗首相との会談も予定されており、両首脳は、南米南部共同市場(メルコスール)と日本との間で協定交渉を開始する可能性について協議するとみられている。「フォーリャ・ジ・サンパウロ」、「ヴァロール・エコノミコ」、「UOL」、「SBTニュース」、「アジェンシア・ブラジル」など現地メディアが伝えている。

ルーラ大統領と高市早苗首相による二国間会談はブラジル外交当局によって調整されており、メルコスールと日本の自由貿易協定(FTA)に向けた交渉の停滞を打開することが主な目的とされるという。

ブラジルの外交官らは、今回の会談はあくまで 長期的な交渉プロセスの「入り口」にすぎず、合意に至るまでには相当の時間と労力が必要になるとの見方を示している。メルコスールと欧州連合(EU)のFTAは、実現までに約26年を要し、承認後も依然として課題を抱えているが、日本との交渉はこれほど長期化しないことが期待されているという。

また、ブラジル外務省(イタマラチー)の関係者は取材に対し、日本側にも交渉開始に前向きな姿勢があると述べているという。在ブラジル日本大使館は声明で、FTAに関しては「さまざまな意見を慎重に検討している」としたうえで、
「これらの視点を踏まえつつ、メルコスルとの関係強化の方法を引き続き検討していく」とコメントしたとのこと。

会談が実現すれば昨年10月に就任した高市首相にとって、ルーラ大統領との初めての対面となる。ルーラ大統領が日本の政府要人と会見するのは、2025年3月に東京を公式訪問し、当時の石破茂首相と会談して以来となる。

今回のルーラ大統領のG7への参加は、近年のブラジルの対外貿易にとって最も厳しい局面のひとつと目されている。

米国のドナルド・トランプ政権が、ブラジルのPix(即時決済システム)が米国のカード会社に不利益を与えると主張し、USTRの調査に基づく 25%の追加関税 を維持しただけでなく、PCC(第一首都コマンド)とコマンド・ヴェルメーリョを外国テロ組織(FTO) に指定するという異例の措置に踏み切った。

一方、欧州では、EUがブラジル産の肉類、魚介類、蜂蜜の輸入禁止措置を決定し、9月から発効する。

こうした状況を踏まえ、ブラジル政府は同盟関係の多角化によって包囲網を回避する戦略を取ったとみられる。

ルーラ氏はサミットの場でトランプ氏やEUを直接批判するのではなく、同盟関係の多角化によって地政学的な防御網を構築する方針だ。

その文脈で最重要となるのが、各国との二国間協議だ。メルコスールと日本の自由貿易協定(FTA)構想の土台づくりを模索する一方、スイスとはメルコスールとEFTA(欧州自由貿易連合)との協定の停滞解消と強化を目指す。

ルーラ大統領はサミットに先駆けて15日(月)、スイスのジュネーブでギー・パルムラン大統領と二国間会談を行い、フランス・エヴィアンに到着後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とも会談を行った。

マクロン大統領との会談は約40分にわたり、両首脳は二国間協力の強化を確認した。特に、防衛分野での連携が強調され、ブラジル海軍の潜水艦開発計画「プロスブ(Prosub)」が主要議題として取り上げられた。

また、フランス領ギアナとブラジル・アマパ州の協力深化についても協議が行われ、フランス側はブラジルのスーパーコンピューター分野への支援に関心を示した。

ルーラ大統領はさらに、2006年に創設された国際保健機関「ユニテイド(Unitaid)」を想起した。同機関は、グローバル・サウス諸国における医薬品や医療技術へのアクセス拡大を目的として設立されたもので、ブラジルが主導的役割を果たしてきた。

フランスへ向かう途上で行われたパルムラン大統領との会談では、二国間貿易の拡大と輸出品目の多角化が主要議題となった。

ブラジル大統領府によると両首脳は、メルコスールとEFTAとの協定が、保護主義と一国主義が強まる国際情勢の中で、貿易拡大の好機となるとの認識で一致したという。

EFTAは、欧州連合(EU)に加盟していないスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国で構成されている。

(文/麻生雅人)