2026W杯ラウンド16までの数々のドラマ
2026年 07月 8日
多くの試合が連日行われた2026年FIFAワールドカップだが、水曜日(8日)はスタジアムのネットが揺れることはない。ラウンド16が終了し、残った代表チームが次にピッチに立つのは、翌木曜日(9日)から始まる準々決勝だ。だが、今大会はすでに数々の物語を生み出している。鮮烈なプレー、強豪の敗退、そして論争まで。
<ブラジル、オランダ、ドイツ>
W杯の歴史を彩ってきた強豪、ブラジル、ドイツ、オランダはすでに帰国し、残りの試合をテレビで見守る立場となった。ドイツは2014年の優勝以降、ラウンド16を戦うことができていない。2018年、2022年はグループステージ敗退、そして今年はパラグアイに16強進出をかけた試合で敗れた。
オランダはモロッコとの激闘の末、PK戦で敗れた。試合はスリリングで手に汗握る展開となり、最後に輝いたのはGKボノの存在だった。彼は今回大会でもモロッコの英雄となり、カタール大会ではラウンド16でスペインをPK戦で退けたことも記憶に新しい。
そしてブラジル。いや、もはや「かつてのブラジル」と言うべきか。説得力ある戦術的な形を示せず、ヴィニシウス・ジュニオールの個人能力に頼る戦い方を選んだ。いくつかの場面ではそれが機能したものの、ラウンド16を突破するには不十分だった。
カルロ・アンチェロッティ監督が率いるチームは、個々の才能では劣るかもしれないが組織力で勝るノルウェーに敗れた。しかもブラジルにはいなかった「決定的な存在」をノルウェーは持っていた。誰もが知っていたように、ノルウェー最大の脅威はセンターフォワードのハーランドだった。そして彼は2得点を挙げ、より優れたチームを勝利へ導いた。
<カーボベルデ、驚きの存在感>
ラウンド32では順当な結果となった。アルゼンチンがカーボベルデを下して次のラウンドへ進んだが、決着までには大きなドラマがあった。カーボベルデは試合を延長戦に持ち込み、アルゼンチンのサポーターはようやく安堵の息をつくまで苦しい時間を過ごすことになったのだ。
そして現王者は、この大会の同ラウンドで「最も美しいゴール」(FIFA評価)を許すことにもなった。シドニー・カブラルが遠距離から完璧なシュートを放ち、GKマルティネスの守るゴールの隅へ突き刺した。勝利には結びつかなかったものの、歴史に残る一撃となった。
カーボベルデは、グループステージで2つの優勝経験国を止めた末に大会を去った。スペイン、ウルグアイとの引き分けは大きな注目を集め、40歳のベテランGKヴォジーニャはSNS上で一躍人気者となった。
彼はクラブ無所属の状態で大会に臨んだが、今回のパフォーマンスを考えれば、長く失業状態が続くことはないだろう。
<トランプ氏と“取り消されたカード”>
アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領は、ワールドカップのスタジアムでは姿を見せていない。しかし、それでも大会への“関与”はしていた──しかも望ましくない形で。ラウンド32のアメリカ対ボスニア戦で、米国のFWバログンが相手の足首を踏みつける危険なファウルを犯し、ブラジル人主審ハファエウ・クラウスはバログンを退場処分とした。
そこで、アメリカ大統領が動いた。トランプ氏はFIFAのジャンニ・インファンティノ会長と話し、レッドカードの再検討を求めた。スポーツやそのルールに関して専門的な知識を持たないトランプ氏は、退場が不当だと考えたという。インファンティノ会長はこの問題をFIFA規律委員会に持ち込み、開催国の大統領の要請を受け入れる形となった。
トランプ氏はインファンティノ会長に連絡したことを認め、インファンティノ氏も会話があったことを認めた。ただしFIFA会長は、決定にトランプ氏の直接的な影響はなかったと説明し、規律委員会は自律的かつ独立した組織であると強調した。
しかし、バログンの出場停止を回避したところで結果は変わらなかった。続くラウンド16のベルギー戦で、ホームチームの“主役”となるはずだったバログンはほとんど存在感を示せず、アメリカは4対1で敗れた。最後のゴールではベルギー選手がトランプ氏のダンスをまねて祝福し、皮肉を込めたパフォーマンスを見せた。
<フランス>
参加国の中で、ここまで最も“優勝候補”ぶりを証明してきたのがフランスだ。説得力と大胆さを兼ね備えたサッカーで、現副王者は相手に付け入る隙を与えなかった。セネガル、イラク、ノルウェー、スウェーデンを危なげなく下してきた。
ラウンド32では、南米チームらしい強烈なフィジカルと、リベルタドーレスでの激闘ぶりを思わせるパラグアイと対戦し、1対0で勝利した。多少の苦戦はあったものの、守備一辺倒でPK戦に持ち込むことだけを狙ったパラグアイを退けた。
多くの代表チームが1人か2人のスターに依存する中で、フランスはどの国にも羨望されるほど多彩な選択肢を持つ。
センターバックのウパメカノは守備に安定感をもたらし、ラビオ、デンベレ、オリーセの中盤は試合を掌握し、相手に主導権を渡す時間を最小限に抑える。そしてチームの主役であるFWムバッペは、完璧に調律されたオーケストラを率いる指揮者のような存在だ。
ここまでのフランスは、他を圧倒するサッカーを見せている。もちろん、それがタイトルを保証するわけではない。だが、フランスは常に得点の気配を漂わせている。いつゴールが生まれるかは分からないが、必ずどこかで決めてくる──そんな期待感をサポーターに抱かせている。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




