5つの生物群系にまたがる熱帯性湿原「パンタナウ」で進む乾燥化
2026年 08月 31日
面積は小さいが、複数の生態系を広く受け入れる「パンタナウ(熱帯性湿原)」。異なるバイオーム(生物群系)と接していることで、それらの影響を大きく受けている地域だ。
「パンタナウ(熱帯性湿原)」が接している生物群系は5つ。ブラジル国内では「セラード(サバンナ)」、「アマゾニア(アマゾン熱帯雨林)」、「マッタ・アトランチカ(大西洋岸森林)」。加えて、ボリビアとパラグアイにまたがる「チャコ(乾燥林)」と「ボスキ・シキターノ(熱帯乾燥広葉樹林)」が隣接している。
この特徴ゆえに、世界最大の湿地平原に流れ込んでいる長い距離の水流もまた、複数の生物群系の影響を受けて多様な生命を蓄える巨大な貯水庫となっている。水の合流によって生まれる多様性が地域の自然美を形作っている。しかしその一方で、気候変動による影響も大きく、非常に脆弱で、深刻な脅威にさらされる要因にもなっている。
「パンタナウは他のバイオームの反応や状況に依存する平原であり、そのすべての影響を受けます。まして気候変動が周囲で進行している状況の中では、なおさらです」(WWFブラジルの保全アナリスト、シンチア・サントス氏)
ブラジルの生物群系の土地利用の変化を、衛星データで長期的に記録する共同研究ネットワークである「マップビオマス」が公表した最新の土地利用・被覆図によると、パンタナウに存在する、「サバナ・アラガーダ(季節的に冠水する湿地サバンナ)」は、1985年の記録開始時点と比較して、2025年にはすでに100万ヘクタール以上を失っていた。
失われた面積は、バイオーム内の湿地サバンナ・アラガーダの84%に相当し、その大半である83万3,000ヘクタール が、サバンナ化、または草原化して、別の植生へと転換されていた。事実上、パンタナウが乾燥していることを意味する。
「川の一部はすでに消え、土砂で埋まりました。私たちが“バザンチ(雨季の冠水によって自然に形成され、乾季に消える季節的な水路)”と呼ぶ、川が増水と減水を繰り返す水路も、今はもう存在せず、川は非常に弱っています」(植物学者クラウジネイ・テレナ氏)
マットグロッソ・ド・スウ州アキダウアナ市のリマォン・ヴェルジ先住民領で生まれたクラウジネイ氏は、かつて水の豊かさが土壌を肥沃にし、必要なものをすべて栽培できた時代を覚えている。
「家を建てるならこの木、この種類が適している。薬草を探しに行く。この木はこういう用途に使える。これらはすべて、子どもの頃から学んできたことです。樹皮、実、葉、根、それぞれが必要に応じて役立つのです」(クラウジネイ・テレナ氏)
伝統知を活かし、クラウジネイ氏は先住民領内の河川源流域3.3ヘクタールの復元プロジェクトに携わった。目的は、パンタナウへ直接流れ込む水を守りつつ、その一帯のセハードを再び生産的な土地として維持することだった。

<環境回復のネットワーク>
パンタナウから少し離れた場所にある、マットグロッソ・ド・スウ州フィゲイランにあるキロンボーラ(逃亡奴隷の子孫コミュニティ)、サンタ・テレーザで、種子採取者のアダウト・カンジド・ペレイラ氏は暮らしている。
「フローレス・ド・セハード」ネットワークの一員である彼もまた、河川を再生するためには源流域の復元が不可欠だと認識している。意識的な採取と種子の販売を通じて、ペレイラ氏が取り組む河川の縁辺域の復元作業は、自身が暮らす地域をはるかに超えて広がる。
「私たちは州内の他のプロジェクトにも対応するために採取しています。採取者は31人で、女性16人、男性15人。採取者としての基本的なルールがあり、木に残す種子は30%。全部を取るわけではありません。木や環境への配慮が必要です」(アダウト・カンジド・ペレイラ氏)
WWFブラジルのシンチア・サントス氏によると、これら2つのプロジェクトは、パンタナウへ流れ込む支流の流れを妨げ、源流を埋没させる土地利用の変化を食い止めるために、セハードのバイオームで同団体が実施している源流域復元の取り組みの一部だという。
「多くの場合、経験のないまま無秩序に行われる経済活動の結果です。技術的支援も、インセンティブも不足しています」(シンチア・サントス氏)
WWFブラジルのマウリシオ・ヴォイヴォジッチ事務局長によると、同団体がブラジルで活動してきた30年のうち、22年はパンタナウで重点的に取り組んできたという。
「私たちは地域のパートナーと協力しながら、地域への影響を重視しつつ、公共政策に影響を与えるための学びやデータ、知識の創出にも取り組んでいます」(マウリシオ・ヴォイヴォジッチ事務局長)
<エネルギー>
パンタナウへ向かう河川の流れを回復するためには、水資源の別の利用法についての啓発活動も進められている。その一例が、小規模水力発電(PCH)の設置に関する取り組みだ。
シンチア氏によると、この種の投資は河川を分断するだけでなく、水生生物の多様性や、観光に依存する地域経済にも影響を及ぼす。
「電力は、例えば太陽光など、この地域に最も適した別の方法で供給されるべきです。小規模水力発電所は、この地域では政府にも地域住民にも経済的利益をもたらしません」(シンチア・サントス氏)
パンタナウ内部では、森林火災への対処や、既存の保護区をつなぐ植生回廊による在来植生の連結性の強化が進められており、ジャガー(オンサ・ピンターダ)のような、地域の生物多様性の健全性を示す指標種の保全にも寄与している。
シンチア氏は、バイオームに暮らす人々の伝統知が、課題への取り組み全体において不可欠だと強調する。
「その知識によって、情報を強化し、共同作業を進め、戦略を最適化し、共に前進することができます」(シンチア・サントス氏)
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




