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「ブラジルの食は、シュハスコとアサイーだけではありません」パンタナール(パンタナウ)の味を世界に届けるパウロ・マシャード・シェフ

パウロ・マシャード・シェフ(写真/divulgação)

国際的なガストロノミーのコンクールでの受賞で注目が高まりつつあるブラジルの食文化。6つのバイオームを持つブラジルならではの多様性に富んだ食文化の一部は、現在すでに、世界的に有名なシェフの手で国外でも広く知られるようになっている。

そして今新たに、これまで国外で広くしられていなかったブラジルの地方の食文化が世界に紹介されつつあると現地メディア「UOL」が伝えている。

現在までにすでに、アレックス・アタラ・シェフ(レストラン「ドン」)によってアマゾン地方固有の食文化が、ホドリゴ・オリヴェイラ・シェフ(レストラン「モコトー」)による自身のルーツである北東部の食文化が、世界中の人の舌を魅了している。

そして次は、パウロ・マシャード・シェフによる研究と実践に基づく、パンタナール(パンタナウ)の食文化が、世界中で紹介されはじめている。

パンタナール(パンタナウ)湿原(写真/bongo vongo

パンタナール(パンタナウ)は世界最大級の熱帯性大湿原。約23万平方キロメートルという広大なエリアの一部はユネスコの自然遺産に登録されている。他に類を見ないほど豊富な植物相と動物相を持つこの地域の大自然の豊かさは、日本でもテレビのドキュメンタリー番組などでおなじみだろう。

2020年には記録的な気温の上昇と少雨とともに大規模火災が発生したことも記憶に新しい。

パウロ・マシャード・シェフは、パンタナウ湿原があるマットグロッソ・ド・スウ州の出身。パウロ・シェフは、多くの人々に、自身の故郷が誇る豊かな食文化に目を向けてもらうため、世界へ旅立つ必要があったと語る。

大学の法学部を卒業、大学院では環境法を学んだパウロ氏が、法曹界を飛び出して自身が情熱を持つガストロノミーの世界へ身を投じたのは約14年前のこと。

国内ではアニェンビー・モルンビー大学(UAM)でホスピタリティに関する修士号を取得。ヨーロッパへ渡り、フランス・リヨンの名門調理学校ポール・ボキューズ学院で学んだ後、三ツ星レストラン「Martin Berasategu」(スペイン)、「Season」(パリ)などで研修や勤務を経験した。

2015年には、ブラジル・ガストロノミー委員会が主催する、その年最も活躍が際立っていた国内・地域の料理人に贈られるドウマ賞(国内シェフ部門)に輝いている。

「私自身がパンタナール(パンタナウ)の料理の重要さを再認識したのは、ヨーロッパ人が我が故郷の産物を重視していることに気づいたときです。ずっと長い間、ブラジル料理は、フランスやイタリア、スペイン、タイ、日本の料理のように世界で注目を集めてはいませんでした」(パウロ・マシャード・シェフ)

パウロ・シェフによると、ミナス・ジェライス州、バイーア州、アマゾニア州、エスピリット・サント州の料理が、ブラジル料理が世界に知られるための“顔(そして味)”のパイオニアだったという。しかし今日、ガストロノミーの世界で注目される地域は、サンパウロ州内陸部の田舎料理や、リオグランヂ・ド・スウ州、サンタ・カタリーナ州、パラナ州などにも広がりつつある。

しかしながら、これまでパンタナール(パンタナウ)の料理はそれほど注目はされてこなかった。パウロ・マシャードがヨーロッパから帰国して、この地域の料理にスポットを当てる先駆的な活動を始めるまでは。同地域には、独特な文化的な特徴、食べ方、料理、産物がある。

パウロ・シェフは、特徴的ないくつかの料理として魚料理、シュハスコとマンジョッカ、シッパ(この地域独特のポンヂケージョ)などを挙げたほか、加えて、マットグロッソ・ド・スウ州と国境を接する国々から流入した食文化もこの地域にはあると語っている。

ソパ・パラグアージャ (写真/reprodução/Facebook Paulo Machado)

例えば、パラグアイからは、冬の料理(アスンシオンでは6~7月によくみられる)「フランゴ・ボリボリ(鶏肉のシチュー。ソースの中にはコーンミールとチーズで作った団子が添えられる)」や、「ソパ・パラグアージャ」(コーンのキッシュのような料理)が、ボリビアからは、スープ入りパイ「サルティーニャ」(ブラジルではスープを入れないスタイルに変化)が伝わり、親しまれているという。

アイスで飲むマテ茶「テレレー」、地域特有の果物で作る自家製スイーツなどもある。

シェフは、そんなパンタナール(パンタナウ)の食文化の研究や調査活動に加え、国内外のイベントで「パンタナール(パンタナウ)料理の大使」としての役割を担っている。

ブラジル外務省と連携したプロジェクトで、これまでにイタリアで「テレレー(アイスマテ茶)のアイスクリーム」、中国で「ソパ・パラグアージャ(前述)」などを紹介している。

2010年には自身の名を冠したパウロ・マシャード食品研究所を設立。ブラジルの食文化に関する研究や講演などを行うだけでなく、地元の住民たちとそれぞれが持っている家庭の味との意見交換なども行い、故郷の食文化への意識を高める活動も行っている。

2011年には、かつて自身も学んだフランス・リヨンのポール・ボキューズ学院でブラジル食材に関する授業を行った。

2020年には「パンタナール(パンタナウ)の料理:味覚の宝庫」を出版した。これは、パンタナール(パンタナウ)の魅力と、この地域の自然が現在脅かされつつある危機について広く知ってもらい、持続可能な自然や文化の継承を行うプロジェクト「ドクメンタ・パンタナール(パンタナウ)」の活動の一環として出版された。

2010年から、ツアーオペレーターのポリアンナ・トメーさんと共にスタートアップ「フードサファリ」を旗揚げした。「ブラジル・フードサファリ」は、各地の食文化と蜜に接することができる食文化ツアー・プロジェクトで、観光地散策や地元の有名シェフのが腕を振るうレストランでの食事のみならず、食文化を育む自然の散策、生産者との交流、地元ならではの食材が並ぶ市場の訪問、地元シェフによる実践的ワークショップなども体験できる。

このプロジェクトは2021年、WTMラテンアメリカのベストカルチャー・デスティネーション賞を受賞している。

(文/麻生雅人)

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