ブラジルの国民酒「カシャッサ」とは何か<2>「カシャッサ」と「ラム」は別物!?

2017年 05月 21日

カシャッサ ラム

「カシャッサ」には無数の呼び名があり、「ピンガ」、「カニーニャ」などのほかにも、スラングのような呼び方がブラジル全国で数え切れないほどあるという。

「ダナーダ(いたずらっ子、または、いけない人)」、「コベルトール・ジ・ポーブリ(貧しい人の毛布)」、「アグア・キ・パッサリーニョ・ナォン・ベビ(小鳥は飲まない水)」、「アマンサ – ソグラ(姑を手なづける)」、「ソセッガ – レアォン(ライオンを大人しくさせる)」など庶民的でユニークな呼び方が500以上もあるといわれている。

また、日常生活の中では「カシャッサ」のことを「アグアルデンチ」と呼ぶこともある。しかし、法律上は「カシャッサ」は「アグアルデンチ」とイコールではない。

2009年6月4日付政令第6871号の第51条で、「アグアルデンチ」は以下のように記されている。

<アグアルデンチは、気温20度の状態でアルコール度数が38%~54%の飲料。単式蒸留、あるいは、発酵した液体を蒸留して得られたアルコールの、度数を下げて作られる>。

「カシャッサ」と「アグアルデンチ」ではアルコール度数の範囲に違いがある。

そもそも「アグアルデンチ」は蒸留酒に対して広く使われる用語であり、それ自体で原料を特定はしてない。そのため同法第51条1番で、「アグアルデンチ」は<原材料名を付随した名称を持つ>と明記されている。

原料がそれぞれ、穀物(セレアウ)なら「アグアルデンチ・ヂ・セレアウ」(同法第51条5番)、野菜なら「アグアルデンチ・ヂ・ヴェジェタウ」(同法第51条6番)、黒砂糖なら「アグアルデンチ・ヂ・ハパドゥーラ」(同法第51条7番)、糖蜜(メラッソの場合)なら「アグアルデンチ・ジ・メラッソ」(同法第51条4番)、糖蜜(メラードの場合)なら「アグアルデンチ・ジ・メラード」(同法第51条8番)、となる。

そして原料がサトウキビ(カーナ・ジ・アスーカル)の「アグルデンチ」が、「アグアルデンチ・ヂ・カーナ」(同法第52条)だ。

「アグアルデンチ・ヂ・カーナ」については、同法第52条に定義されている。

<アグアルデンチ・ヂ・カーナは、気温20度の状態でアルコール度数が38%~54%の飲料。サトウキビ(カーナ・ヂ・アスーカル)を蒸留したアルコール、あるいは、発酵させたサトウキビの絞り汁を蒸留してつくられる。1リットルにつき6gまでスクロースなど砂糖を加えてもよい>。

カシャッサのアルコール度数は48度までだが、アグアルデンチ・ヂ・カーナは54度までとなっている。

さて、同じサトウキビを原料とする蒸留酒では、西インド諸島が原産というわれるラム酒もよく知られているが、「カシャッサ」と「ラム」は別物だ。ブラジルのカシャッサ生産者も「カシャッサはラムではない」と口をそろえる。

カシャッサについて総合的に記された古典的名著「Cachaça – Cultura e Prazer do Brasil(カシャッサ – ブラジルの文化、そして喜び)」(サンドラ・ヴェントゥーラ、ヒカルド・ジラウデス・著、写真上)にも、「カシャッサはラムではない」と題された章がある。

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(写真・文/麻生雅人)

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