ブラジルのコンビニのスタンダードはGSで決まり!?

2013年 09月 13日

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数年前から、ブラジルのIpiranga(イピランガ)という名前のガソリンスタンド(以下GS)にちらほらと日本では忘れられかけているampmが入り始めたが、まだほんの一部の店舗だけであった。ところが、この半年ぐらいで、Ipirangaだけではなく、他のガソリンスタンドにも様々なブランドのコンビニエンスストア(以下コンビニ)が一気に登場し始めた。

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Ipirangaに先を越されたブラジル最大のGSであるBRは、自ら「BR Mania(ベー・エヒ・マニア)」という店舗名でコンビニ事業を始めた。三番手のAleが「Entreposto(エントレポスト)」、Shellが「Loja De Conveniência(ロージャ・ジ・コンベニエンシア)」と店の名前にコンビニという言葉も入り始めた。Ipirangaもampmだけではなく、そのものずばり「Conveniência(コンベニエンシア)」という名前の店舗のGSもあり、フランチャイズオーナーの意向なのか、儲かるから独自でもやろうとしているのかどちらかだろう。

Ipirangaは、国営企業であるペトロブラスに次いで、ブラジル第2位の石油卸である。年間売上も480億レアル(約2兆4千億円)で、ペトロブラス、ペトロブラスの卸会社BR、VALE(バーレ)に次いでブラジルで第4位。おそらく、この2-3年、実験的にampaと組んで導入した24時間コンビニが好調だったために、全店に導入する勢いで増やし始めたのだろう。同時に、Ipirangaの成功を見て、同業各社も負けじと導入に動き始めたと思われる。日本のコンビニ各社もブラジルで市場調査をしていたようだが、またまた「検討」しているうちに、他国に先を越されてしまった。日本のいわゆるショップではダイソーが1店舗のみ独自で出店しているが、他は牛丼のすき家ぐらいである。

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私も常々、ブラジルでコンビニが入るとしたら、セキュリティの難しさと24時間オープン可能な環境を前提にすると、ガソリンスタンドかドラッグストア、もしくはセキュリティ会社と組むしかないのではないかと思っていた。

ちなみにブラジルの都市部には、24時間オープンのドラッグストアがたくさんある。ブラジル医薬品販売協会(ABCFARMA)に聞くと、ドラッグストアは日本よりも規制が厳しく、ブラジルの厚生省に決められた範囲の商品しか販売できないらしい。この協会が発行し、すべてのドラッグストアに配布されている製品一覧と価格リストを入手したが、ここにはすべての商品の卸価格が表示されるとともに、州ごとに消費者に販売しても良い上限金額が記載されている。逆に、その価格までならば、ディスカウントは販売店の裁量次第である。

しかし、同じ店舗内・敷地内で他業態との併設は認められていないとのことだが、別会社にして、今後の新規店舗について、隣同士に開設をしていくことは可能ではないかと思われる。日本のコンビニ会社がもし後発で参入するとしたら、ブラジルで独自に会社を設立しながらも、都市部を中心に展開している中堅のドラッグストアチェーンをM&Aして、セットで展開をすれば面白いと思うが、どうであろうか。

おそらくブラジルコンビニ業界の第一幕はGSでほぼ決まりだ。アメリカと同じで車社会のブラジルには合ったスタイルだと思う。ただし、GSはやはりロードサイドが中心であることと、現在の品揃えが顧客のニーズを満たしているかとどうかは別問題だろう。物価が特に高く、かつGSがあまりないオフィス街には、日本のようなバリエーション豊富な弁当群はない。いつになるかわからないが、第二幕は都市部と品揃えがキーワードとなるのではないかと思われる。

著者紹介

輿石信男 Nobuo Koshiishi

輿石信男 Nobuo Koshiishi
株式会社クォンタム代表。株式会社クォンタムは91年より20年以上、日本とブラジルに関するマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、市場視察のプランニング、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。11年からはJTB法人東京と組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供とよりきめ細かい進出支援を行なっている。
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