ブラジルW杯 日本初戦の開催都市ヘシーフィ(レシフェ)のサッカー事情について
2014年 01月 20日前回のコラムからだいぶ期間があいてしまいました。2014年もよろしくお願いします。
さて、2014年は何といってもブラジルW杯です。まずは数回にわたり、ブラジルW杯で日本が戦う都市のサッカー事情について書いていきたいと思います。
ブラジルW杯の組み合わせおよび試合会場がすべて決まった。日本は、コロンビア、ギリシャ、コートジボワールと共にC組に入った。この組み合わせは日本国内ではかなり好意的に見られている感じだ。
対戦相手のヨーロッパからは強豪国とはいえないギリシャ、そして南米からは、コロンビアである。コロンビアはFIFAランキング4位で確かに強いが、同じ南米の3強、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイに比べると力は落ちる。ということで、決勝トーナメント進出の可能性を感じさせるものとなった。ただし、それは他の3チームも同じことを思っているに違いない。一つ一つ確実な試合を行うことが重要になると思う。
さて、そんな対戦相手と戦う場所であるが、初戦がコートジボワールとヘシーフィ(レシフェ)で、2戦目がギリシャとナタウ(ナタール)で、そして3戦目をコロンビアとクイアバで戦う。ヘシーフィ、ナタウは同じ北東部に位置し、両都市間は約300キロと近い。しかし、クイアバはかなり離れている。パンタナウと呼ばれる野生動物が多数生息する大湿原があるところに位置している。
今回は、ヘシーフィについて記述していきたい。
へシーフィはRecifeと書くので、日本語では一般的にレシフェと記述されるが、へシーフィと読む。ポルトガル語では、RはH行(ハ行)の発音になる。Ronaldinhoはホナウジーニョ、Robinhoはホビーニョと発音する。
ブラジル北東部ペルナンブッコ州の州都であり、人口は約150万人で、北東部ではサルヴァドールに次いで2番目に多い都市である。運河で有名な都市でもあり、ブラジルのベネチアと呼ばれることもある。また、ブラジルはカルナヴァウ(カーニバル)が盛大に行われることでも有名だが、ブラジル3大カルナヴァウは、リオ、サルヴァドール、そしてここへシーフィである。へシーフィのカルナヴァウは、リオのようなサンバスタイルではなく、フレーヴォとマラカトゥという音楽がベースになっている。
さて、へシーフィのサッカー熱はなかなかのものである。
主なチームは3つ。スポルチ、ナウチコ、そしてサンタクルーズだ。この規模の街で3つ大きなチームがあるのは珍しい。そして、へシーフィの住民はほぼ例外なくこの3チームのいずれかのファンである。
まずはスポルチ。
正式名称は、Sport Club do Recife(スポルチ・クルービ・ド・ヘシーフィ)。1905年創設で、ユニフォームの色は赤と黒。そのため、チームの愛称はフブロ・ネグロ(赤と黒という意味)。
最近では、1部と2部を行ったり来たりしているが、3チームの中では一番有力のチームだろう。主なタイトルは、1987年に全国選手権優勝。そして、2008年ブラジル杯優勝である。3チームの中で全国タイトルを持っているのはこのスポルチだけだ。しかし、1987年のタイトルについては、ブラジル国内のリーグが分断したという歴史があり、スポルチとフラメンゴの2チームが優勝ということになっている。そのため、ナウチコやサンタクルーズのファンは、あのタイトルはインチキだと言ったりしている。
2008年のコッパ・ド・ブラジル(ブラジル杯)は、2012年に日本でクラブW杯の優勝を飾ったコリンチャンスを大逆転の末に破った優勝だった。2013年シーズンは2部で戦い、2部リーグで3位になり、1年間で一部に昇格を決め、2014年は1部で戦う。
現在横浜Fマリノスでプレーするドゥトラが長年プレーしていたのも、スポルチだ。ドゥトラは、2008年のコッパ・ド・ブラジルの優勝メンバーでもある。また、出場記録はないが日本の廣山望が2002年に所属していた。また、現在柏レイソルの監督であるネルシーニョ・バチスタは、柏に来る直前はスポルチの監督であり、コッパ・ド・ブラジルを優勝に導いている。
次は、ナウチコである。
正式名称は、Clube Nautico Capibaribe(クルービ・ナウチコ・カピバリビ)という。1901年創設で、ユニフォームの色は赤と白。ファンの数は、3チームでは一番少なく、医者や弁護士といった上流階級にファンは多い。
スポルチ同様、最近では1部と2部を行ったり来たりしており、2013年シーズンは1部に所属していたが最下位(20位)に終わり、2014年は2部で戦うことになる。
私は一度、2008年にナウチコのホームスタジアムで試合を観たことがある。立地は上級階級のクラブだけあって、市内でも上流階級の多く住む地域にある。とても小さいスタジアムで、客席の傾斜が緩く、小さいスタジアムだったが、見づらかった印象だ。
全国的に見ると、地方の弱小クラブといった印象で、有名な有力選手も特に見当たらないが、2012年には、日本の清水やガンバでプレーしたアラウージョが在籍していたようだ。
そして、最後はサンタクルーズである。
正式名称は、Santa Cruz Fotebol Clube(サンタクルーズ・フッチボウ・クルービ)である。1914年創設で、ユニフォームの色は、黒・白・赤。
私がブラジルに住み始めた2005年当初は1部リーグにいたが、その後毎年のように降格し、ここ数年は3部で戦っている。
そのため、最近では、かなりの弱小チームのイメージだが、地元でのファンの数は、3チームの中で一番多い。また、熱狂的ファンが多いことでも有名で、3部にも関わらず、集客力は相当なものである。ホームスタジアムも他の2チームに比べて一段と大きい。2009年にセレソン(ブラジル代表)の試合が行われた際には、このスタジアムが使用された。
また、現在セレッソ大阪のクルピ監督がかつて選手時代に所属していたようだ。
そんなサッカー事情のへシーフィだが、今回のW杯で使用されるアレーナ・ペルナンブッコは、へシーフィ中心部から内陸へ約20キロの場所にある。へシーフィ市内から離れたかなりの郊外のサンロウレンソ・ダ・マッタ市にある。交通手段は、近くまでメトロ(地下鉄)が通っており、そこから送迎バスになるだろう。
また、治安についてだが、ヘシーフィは、リオ、サンパウロに次いで治安の悪い街と言われる。W杯観戦にヘシーフィを訪れる方は注意していただきたい。私は、一度この街で車上荒らしに遭ったことがある。治安が悪いことは織り込み済みだが、それ以上に魅力的な街である。
ヘシーフィは、ブラジルで唯一オランダに統治された街で、旧市街にはオランダ風の建築物が残る。また、10キロほど北上したところにオリンダという世界遺産にもなっている街があるので、ぜひ足を延ばしたい。
6月は、ブラジルでは冬に当たるが、赤道近くなので、最高気温は30℃近くになり、最低気温も20℃は下回らない。おそらく多くの観光客が泊まることになるボアヴィアージェン海外など、近くにきれいなビーチも多数あるので、日光浴も楽しめる。ブラジル人風に、ビーチでビールを飲みながら過ごすのもいいだろう。
(写真/LatinContent/Getty Images、LatinContent/Getty Images)
写真上:ヘシーフィの隣町オリンダのカルナヴァウ(カーニバル)は巨大人形が名物。有名人や架空のキャラまで、さまざまな人形が行列する。毎年登場するスポルチのユニフォームを着た人形(左)も地元の名物
写真下:2009年、スポルチで活躍するドゥトラ(右)。ドゥトラは2001~2006年に横浜Fマリノスで活躍。帰国後2011年までスポルチ(ヘシーフィ)、2012年までサンタクルスFCに所属、2012年から再び横浜Fマリノスで活躍中