全国へ拡散して抗議デモの様相を呈し始めたホレジーニョ。レブロンでは「ショッピングセンターは“新たな20センターボ”」の叫びも
2014年 01月 21日1月19日(日)、リオデジャネイロの南部(ゾナ・スウ)にある高級ショッピングセンターや路面店などが並ぶレブロン地区にある高級ショッピング・センター、ショッピング・レブロンの前で、予告されていたRolezinho ホレジーニョが行われたことを同日付「フォーリャ」、「エスタダォン」など(共に電子版)が伝えた。
ショッピング・レブロンはホレジーニョの開催予告を受けて、安全を期して19日(日)の休業を宣言していた。集団が店の前に集まったのは夕方18時半ころだったが、実際、店は閉まっていて、向かいにあるショッピングセンター、デザイン・リオも休業していたという。
集会は施設周辺の路上で行われ、用意されたシュハスケイラでリングイッサや鶏肉などが焼かれ、抗議運動への参加者はビールを飲んだり踊ったりしたという。ある意味、このホレジーニョはお祭りのように、にぎやかなものになったとのこと。
集まったのは予告通り、サンパウロのホレジーニョや、同市郊外に住む貧困層の若者たちの行動へのシンパシーを掲げる人たちで、主に、学生、社会運動活動家、左翼寄りの人、無政府主義者、階級闘争の闘士などだったという。また、リオの抗議活動の現場ではおなじみとなったバットマンも参加。「ようこそ。俺たちは皆、同じだ」というプレートを掲げた。
国内外のジャーナリストも混ざっていたという。参加者は、明らかに政治的な集会であることを打ち出していた。
「ホレジーニョとは、都市周辺に住む若者たち(黒人や貧困層が多い)が目覚めたことを表われなんだ。平等な市民権が欲しいと若者たちが路上で主張をしていることを、政治家たちは予想もしていなかっただろう」と、屋根なし労働者運動(MTST)の活動家ホドリゴ・シウヴァ・ドス・サントスは語った。彼は先月行われた路上の抗議運動にはすべて参加しているという。
デモでは、「出ていけカブラウ(※リオ州知事)」、「ワールドカップはナシだ」といったシュプレヒコールがあがっただけでなく、ショッピングセンターへの非難も叫ばれ、「俺に買い物させてくれよぉ、買い物するためいれてくれよぉ、目を見開けブルジョアよ! でないとホレジーニョは毎日やるぞ」と皮肉めいた歌も歌われた。
映像作家のヒカルド・タルジーノさん(33)はマイクを手に、ショッピングセンターは新たな”20センターボ”だ、と叫んだという。
2013年6月にブラジルの全国で起きた大規模抗議デモは、恒常的な社会不公平、不正義の是正を求めるものだったが、デモの引き金となったのが公共運賃20センターボの値上げだった。そのことから抗議デモでは「問題の本質は“20センターボ”ではない」というスローガンが掲げられていた。
「ホレジーニョは、もっと詳細に検証されるべき問題だ。白人のエリート層は、黒人や貧困層との共存について学ぶべきだ」(ヒカルド・タルジーノさん)
「今回の行動は、サンパウロのホレジーニョを応援する目的で行われています。一番最初にサンパウロ市郊外で行われたホレジーニョは、本当に率直な気持ちから行動したのでしょう。そこでは暴力的な事件はなかったにもかかわらず、ショッピングセンター側が扉を閉ざしたことはおろかなことです」とリオデジャネイロ連邦大学のタチアナ・ホッキ教授(43)は語った。
ホレジーニョが行われた19日、ショッピング・レブロンの施設につながり、並びに入口があるオイ・カーザグランヂ劇場では19時からエリス・ヘジーナの人生を描いたショウ「Elis, A musical(エリス・ア・ムジカウ)」(主演:ライラ・グリン)が開催されていたが、ショウの観客は別の入り口から入場したとのこと。デモの参加者の男性が「やあ、ブルジョアさん、(このデモは)あなたたちが原因なんだよ」と敵意を込めて叫んだという。
ジョゼー・マリアーノ・ベウトラミ・リオ州治安局長は今回のホレジーニョ予告に対し特に何も動かないと発言していたそうだが、近隣は厳重な警備が敷かれていた。アファニオ・ヂ・メロ・フランコ通りには5台の軍警察のパトカー、20名の警官グループが3カ所に、加えて4台の市の保安官のパトカーが配備されていたという。
しかし暴力的な事件は何も起こらなかったため、警官たちはデモを眺めていたという。
(文/麻生雅人、写真/Getty Images)
1月19日、ショッピング・レブロン前で行われたホレジーニョ