セナVSプロストの決戦、再び
2014年 12月 12日誰もが認めるブラジルNO.1の最速ドライバーだったアイルトン・セナ。事故で亡くなっても彼の伝説は生き続け、彼の死の周忌には毎年彼のことを偲ぶイベントがいろいろな場所で開催される。
そのセナの死を悼み、最も彼のことを理解していた人のひとりが、ライバルだったアラン・プロストだろう。
そんなふたりの名が、時を越えて再び世間の注目を浴びることになった。
彼らの名前が注目されているのは、FIAフォーミュラE。F1と同じく国際自動車連盟(FIA)が管轄するフォーミュラカーレースだが、電気自動車のF-1として2014年9月13日に開幕したばかりのレースだ。9月13日に第1戦北京大会が開催され、11月22日に 第2戦マレーシア・プトラジャヤ大会が開催されている。
FIAフォーミュラEは電気自動車レースなので排気ガスを排出しないことから、モータースポーツで史上初めての市街地での全公道レースを実現している。世界各国の大都市のランドマークを背景にフォーミュラカーが街中を疾走するという、かつてない光景と興奮が醍醐味となっているという。
そんなFIAフォーミュラEでなぜセナやプロストが想いおこされているかといえば、ふたりの末裔、アイルトンの甥にあたるブルーノ・セナと、プロストの息子であるニコラス・プロストが、このFIAフォーミュラEで火蓋を散らしているからだ。
第1戦北京大会予選では、ニコラス・プロスト(ダムス・ルノー)が最速タイムを記録。プロストはレースでも14週目までトップを走っていたが、終盤、追い上げてきたハイドフェルドと接触。ハイドフェルドのクルマはスピンし大事故を起こしたがドライバーは互いに無事だった。この事故でプロストは、避けられる事故の原因になったと判断され、第2戦のプトラジャヤ大会では10グリッド降格のペナルティが与えられてしまった。
ブルーノ・セナ(マヒンドラ レーシング)はファンブーストの権利を得ていたが、1週目でコース上で車を衝突させたため、セーフティーカーを初めてレースに登場させることとなった。
ファンブーストとは、ファン投票により最も多くの人気を集めたドライバー3名に与えられる、一時的に急加速できるシステム。2.5秒間を2回、一時的に車のパワーを150kw(202.5bhp)から180kw(243bhp)に上げることができる権利が与えられる。
ブルーノは、11月22日の第2戦マレーシア・プトラジャヤ大会でもファンブーストを獲得。ファンには絶大な人気を誇っている。そして、第2戦ではファンブーストを有効に活用した。
ブルーノはレース前半でもネルソン・ピケJr.を相手にファンブーストを使ったが、ここでは効果はでなかったという。
「最初にトライした時は、ネルソン・ピケJr.を抜こうとしたのだけど、どのくらいファンブーストの効力があるか分からなかった。ネルソンとの距離が十分に接近していなかった。ネルソンは凄くローウィングで走っていたので、ちゃんと近づけなかった」(ブルーノ・セナ)
しかし、レース後半にニコラス・プロストを追い越すために5秒間30kwの追加パワーを行使。プロストを追い抜き、初めてファンブーストの恩恵を受けたドライバーとなった。
「ニコラス・プロストに接近した時は、ファンブーストをどうやって使ったらいいか少しわかっていたし、すごく役立つと思っていた。温度が高くなりすぎるのではないか、とみんなが心配していたマレーシアでファンブーストが機能して良かった」(ブルーノ・セナ)
ただし、第2戦でのブルーノの順位は11位、ニコラスは4位だった。
ところで、北京とマレーシアの2試合を終えて、現在ポイントリーダーに立っているは、なんとブルーノとは親友のブラジル人ドライバー、ルカス・ジ・グラッシ(ルーカス・ディ・グラッシ)。
彼もF1ドライバーであり、2008年には、ルノーのサードドライバーを担当。同じオフシーズンにホンダのテストに参加したものの、ホンダがF1撤退したためレギュラードライバーのシートは得られずに終わった。
加えて、FIAフォーミュラEにはブラジル人2世ドライバーの一人、ネルソン・ピケJr.も参加している。12月13日(土)、第3戦がウルグアイのプンタ・デル・エステで開催される。日本ではCSテレ朝チャンネル、BS朝日が生中継を行う。
<フォーミュラE第3戦(12月13日)のスケジュール>
テスト走行/日本時間21時15分) CSテレ朝チャンネル2
予選/日本時間20時45分 CSテレ朝チャンネル2
決勝/日本時間深夜2時30分(日付は14日)BS朝日
(文/加藤元庸)