ブラジル発オーガニック・グルメ・チョコレートのパイオニア 「AMMA(アマ)」(後編)

2015年 02月 23日

アマ・ショコラッチ

2007年に誕生したブラジルのオーガニック・グルメ・チョコレートの先駆的なブランド「アマ・ショコラッチ」は、Bean to Bar、Tree to Bar(カカオの豆(bean)や木(Tree)の栽培からタブレット(Bar)作りまでの全ての工程を一括管理して作るチョコレート)で、チョコレート生産を実践している企業だ。

創設者のジエゴ・バダロが誇りとしているのは、会社の利益を上げることよりも、持続可能な社会の実現に向け、イニシアティブを取っていくことだと言う。

「プロジェクトは革新的なものです。マタ・アトランチカ(大西洋岸森林)の生物多様性を保持する先駆者として、高品質のカカオを栽培することで、雇用を産み出し、その生活レベルの向上に努めることが、市場において最も価値があると考えています」(ジエゴ・バダロ)

さらにジエゴは、アマ・ショコラッチのもうひとつの使命として、一般社会が持っているカカオ豆生産者やカカオ豆栽培に対するネガティブなイメージを回復することだと述べている。

「チョコレート業界は、カカオ豆(原料や産地、生産者)とチョコレート(製品)とを結び付けないようにしています。それどころか、カカオ豆の生産農家を、ヨーロッパの田舎暮らしというおしゃれなイメージに作り上げ、カカオ豆栽培の実態をひた隠しにしているのです。何とかしてこの風潮を変えなくてはなりません。チョコレートを味わうのと同じくらい、カカオ豆の歴史について学ぶのは楽しいのだと」

これは、ジャングルの恵みに育まれたカカオ豆が、高級デパートにならぶ洗練されたチョコレートになるまでのすべてのプロセスを熟知しているTree to barの作り手ならではの視点である。

2012年、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」がバイーア州で開かれ、ジエゴはそのコーディネーター役を務めた。カカオ生産国における「サロン・デュ・ショコラ」開催は、実はこれがサロン史上初のことだった。ジエゴは、今やブラジルのカカオやチョコレートを語る上で欠くことのできない存在となっている。

サロン・ドゥ・ショコラ バイーア

そんなジエゴが生産する「アマ・ショコラッチ」の全生産量の半分は、海外18ヶ国(アメリカ、イギリス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、チリ、日本、中国、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、ニュージーランド、フランス、オーストラリア、韓国、メキシコ、カナダ)で販売されている。フランスの老舗百貨店ボン・マルシェ、イギリス・ロンドンの高級百貨店セルフリッジズも主な販売店だ。

日本においては、2014年、2015年に東京で開催されたサロン・デュ・ショコラに参加している。中国、日本をはじめ、チョコレート消費量が急増しているアジアマーケットへの参入は、さらなる飛躍の原動力となると期待されている。

さらに「アマ・ショコラッチ」はチョコレートやカカオの販売のみならず、持続可能な発展をめざす都市開発関連の海外イベントにも登場し、ますますその存在感を増している(次ページへつづく)。

(文/井川裕美子、写真上/Divulgação/AMMA Chocolate、写真下/Rita Barreto/turismobahia)
写真上、バイーア州南部のカカオ畑を示すアマ・ショコラッチのジエゴ・バダロ代表。ジョルジ・アマードの小説「カカオ」や「果てしなき大地」の舞台にもなった。写真下、2012年にバイーア州で開催された「サロン・ドゥ・ショコラ・バイーア」。右から2人目はジョルジ・ヴァギネル州知事(当時)

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著者紹介

井川裕美子 Yumiko Ikawa

井川裕美子  Yumiko Ikawa
2010年、ブラジル人との結婚を機に、ブラジル南部のサンタカタリーナ州に移住。大の甘党で、自称スウィーツホリック。特にチョコレートをこよなく愛する。地元のチョコレート工場で働いた後、自宅にてブラジル産有機カカオバターとカカオパウダーを使った高カカオチョコレート作りを始め、カカオのおいしさに目覚める。チョコレートの真髄であるカカオを肌で知るため、バイーア州イタカレのカカオ農園を訪れる。チョコレートを通じた日本とブラジルのさらなる交流拡大を目指し、チョコレート大使として、まずはブラジル産チョコレートを日本に普及すべく尽力中。

連絡先はyikawa79@yahoo.co.jp
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