宗家藤間流八世宗家・藤間勘十郎、サンパウロとリオで日本舞踊を上演へ

2015年 07月 24日

「葛城山妖怪傳説より『土蜘蛛伝説』~石蜘蛛仙人と仙女白菊」

祖父に当たる、六世藤間勘十郎も「素踊り」が得意だった。

「私は現在、35歳。この年で『素踊り』だけをやる、というのは大変おこがましい話だとも思っています。しかし、私が25~6歳のころ、亡くなられた中村勘三郎さんとお仕事が一緒になり楽屋でお話をさせていただく機会がありました。そのとき(勘三郎さんに)、あなたのおじいさんは、素踊りを大変大事にしていた。あなたも30になったら素踊りだけやって、それを極めたらどうか、といったことをおっしゃっていただきました。そのとき、ではそうしたいと思いますと、約束をしました。私としては一生『素踊り』を面白く、また、いろんな方に知っていただき、その魅力を少しでも伝えられるようにと思っています」(八世藤間勘十郎)

今回、ブラジルで上演されるのは、舞台を清めるために事始めに踊る儀礼舞踊「三番叟」と、「葛城山妖怪傳説より『土蜘蛛伝説』~石蜘蛛仙人と仙女白菊」(一幕六場)。舞踊で6名、長唄囃子などで12名が出演する。

「『土蜘蛛伝説』は私の創作でございます。能楽師である父の二世梅若玄祥が、能楽の『土蜘蛛』を得意としておりまして、これを元に何か新しい作品ができたらなあと思い模索しまして作りました。素踊りはそぎ落とす芸術、というお話をいたしましたが、今回の舞台もまたエンターテインメントとして、どこまでが素踊りかということに挑戦している舞台でもあります。私としては、どんな役柄でも袴を履いていることで、素踊りであると捉えさせていただいています」(八世藤間勘十郎)

物語は以下。日ノ本(日本)の平和が司る“日輪月下の剣”が天界に収められていた。剣を手にしたものは日本を我が物にできることから、この剣を、下界の悪鬼土蜘蛛が奪ってしまう。以来、天界の皇子如水は目が見えなくなり、世は暗黒の世界と化してしまった。

剣を取り返そうとするのが、天界の皇子如水と恋仲にあった下界の仙女白菊。二人は手を取り合い下界へ降りて、仙人酒老導師から、戦う術を教わり、土蜘蛛の元へと向かう。そして旅の女性に変装した白菊は、石蜘蛛仙人と名乗る男(土蜘蛛)に酒と色香で近づき、妖術を破り、無事、剣を取り返し日ノ本に平和が戻る、というもの。

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(写真・文/麻生雅人)