オスカー・ニーマイヤーの建築群で有名な首都ブラジリアの官庁街に巨大アヒル。でも目がヘン!?
2015年 10月 3日世界中を旅している巨大なアヒル、通称「ラバーダック」。このアヒルはフロレンティン・ホフマンという芸術家が製作したもので、オランダをかわきりにロサンゼルシ、シドニー、ホーチミン、大阪など世界各国の都市に現われるというパフォーマンスアートが行われている。ブラジルでは2008年、サンパウロ南部にあるセスキ(ブラジル商業連盟社会サービス連盟)インテルラゴス支部の池に現われている。
10月1日(木)、オスカー・ニーマイヤーの建築群でも知られるブラジリアの官庁街に、12メートルという黄色い巨大アヒルが現れた。しかし、これまで世界各地に現れたラバーダックとは表情が異なり、瞳はつぶらな造形ではなく、バッテン印。そして官庁街の池には無数の小さなアヒルも現れた….
このアヒルは、ホフマンのラバーダックのパフォーマンスではなかった。空気を入れて膨らませる構造の巨大なアヒルを官庁街のど真ん中に設置したのは、サンパウロ工業連盟(Fiesp)。増税と金融取引暫定納付金(CPMF、通称・銀行小切手税)の復活に対する抗議運動だった。現地メディア「G1」が伝えている。
金融取引暫定納付金は2007年に議会で廃止されているが、連邦政府は2016年の基礎的財政収支の黒字を達成するために増税案などを打ち出し、その中で再開を検討していると報じられている。
ブラジルではアヒル(pato パット)は愚か者を意味するスラングでもあり、「アヒルを払う」というと「愚かなことをする」、「無意味な出費をする」、「割に合わないことをする」というニュアンスになると「スラング事典」(7グラウス)に記されている。
「誰が”アヒル”を払うものか」と名付けられたこの抗議キャンペーンがスタートしたのは9月21日、サンパウロにて。団体はインターネットを通じて署名運動を行っており、100万人分の署名が集まったら議会へ嘆願書を提出する予定だという。10月1日(木)の朝の時点で署名は41万1000名分が集まっているとのこと。
サンパウロ工業連盟(Fiesp)のパウロ・スカフィ代表は「(ブラジル)社会は、不当な支払いに疲れ切っている」と語った。
「政府はあるべき姿より肥大化して、悪化して、非効率で、官僚ばかり数がいて、動きが取れない状態になり、よき公共サービスを実現できず、資金調達のメドもたっていなません。2007年に社会がノーと言った銀行小切手税の復活の議論が政府によって動きはじめています」(パウロ・スカフィ代表)
ブラジル政府は9月27日(土)に金融取引暫定納付金の再開を可能にする憲法改正案を議会へ提出したという。ブラジル政府は、2016年の財政収支のバランスをとるために649億ヘアイス(レアル)、約2兆円の追加財政健全化策を発表している。この政策では2016年予算案で公表された基礎的財政収支の赤字をGDP比0.7%の黒字に転換することを目標にしているという。増税案で、32億ヘアイス(レアル)、約975億円の予算確保が見込まれているとのこと。
財務省によると新たな金融取引暫定納付金の税率は0.2%とされているという。期間は4年間で、歳入は社会保障分野に充てられるとされている。
金融取引暫定納付金(CPMF、通称・銀行小切手税)はエンヒッキ・カルドーゾ政権の時代に健康分野への投資資金のために導入された制度で、2007年、ルーラ政権時代に廃止となった。
(文/麻生雅人、写真/Lucio Bernardo Jr./Câmara dos Deputados)