「ドーシ川は死んだ」ーー。鉱山廃水貯蔵ダム決壊後、ミナスジェライス州で水質検査を行った研究員らが公言
2015年 11月 16日ブラジルのミナスジェライス州マリアナ市の鉱山廃水貯蔵ダム決壊で汚泥がなだれ込んだドーシ川(Rio Doce)は、泥に含まれる重金属等により回復不能なレベルに汚染されているという。
調査に携わった専門家たちは「ドーシ川は死んだ」と公言していると、グローボ系の科学、健康などの情報を扱う専門誌「ガリレウ」電子版が11月13日づけで報じた。
決壊事故後の水質調査では鉛、アルミニウム、鉄、バリウム、銅、ホウ素、水銀などの重金属が水中に含まれていることが判明したという。
エスピリトサント州バイショ・グアンド市上下水道サービス社(以下「SAAE」)ディレクターのルシアーノ・マガリョィンス氏は「元素記号表のすべての元素が川に投げ込まれたようだった」と語っている。
マガリョィンス氏によると、川の水は人間だけでなく動物の生活においても、もはやどこにも使い道がないほどに汚染されているという。
流れ込んできた重金属類による汚染だけでなく、津波のごとく流れ込んできた泥の力も、川の豊かな生態系を完全に壊してしまったという。環境保護団体によると、ドーシ川固有の生物が、すべて汚泥に埋まってしまったとのことだ。
流出した泥の量はオリンピックプール2万個分にのぼり、泥はドーシ川のあちこちで自然に形成されてきた流れをせき止め、流域のあちこちに汚染物質の巨大な水たまりを形成している。一方でせき止められてあふれた泥水は支流に流れ、汚染物質は川に沿って広範囲に運ばれ続けている。
地域の漁師たちはこの問題に立ち向かうべく「ノアの箱舟作戦」を始めた。
作戦ではまだ汚泥が入ってきていないドーシ川の流域水路でバケツや箱などを使って魚を救出し、水のきれいな湖などに移すという活動を行っている。
汚泥の被害を受けた地域を訪問したジウマ・ルセフ大統領はこれらの環境被害に関して、鉱山廃水ダムの管理を請け負っていたサマルコ社2億5千万レアル(約80億円)の損害賠償を命じた。
(文/余田庸子、写真上/Antonio Cruz/Agência Brasil、写真下/ANEL – Assembleia Nacional dos Estudantes Livre)
写真上:事故後、11月9日のマリアナ市ベント・ホドリゲス。写真下:「サマルコ社は人殺し」と書かれた横断幕。11月10日、ミナスジェライス州ベロオリゾンチ市で全国自由学生集会ミナスジェライス州支部は、同市内サヴァシ地区にあるサマルコ社のオフィスで抗議を行った