リナ・ボ・バルディらしさが詰まった「ガラスの家」

2015年 12月 5日

リナ・ボ・バルディ

12月4日(金)からワタリウム美術館(東京・渋谷区)でスタートしたリナ・ボ・バルディの、日本で初となる大規模展覧会「リナ・ボ・バルディ展 ブラジルが最も愛した建築家」。

今回の展覧会では、リナ・ボ・バルディが生涯に手掛けた12の建物の中から代表的な4つの建物が紹介されている。

紹介されるのは、「ガラスの家」、「MASP(マスピ):サンパウロ美術館」、「サンタ・マリア・ドス・アンジョス教会」、「SESC(セスキ:ブラジル商業連盟社会サービス連盟)ポンペイア文化センター」。

中でも、リナの建築に対する考えや人柄などが最も反映されているのが「ガラスの家」だろう。「ガラスの家」は1951年に完成した、リナと夫バルディ氏の家。リナの初期の建築作品でもある。

12月3日(金)に駐日ブラジル大使館、およびワタリウム美術館で行われた会見でも、展示の監修を手掛けた妹島和世氏、会場デザインを手掛けた周防貴之氏によって詳しく紹介された。

リナ・ボ・バルディ

「リナがイタリアからブラジルにきて初めて設計した建物で、生涯ここに住み続けました。もともとはこの模型のように周りが開けた丘の上に立っていましたが、50年ほどたった今はこの丘に木が生い茂って、森の中に浮かぶ住宅という感じになっています」(周防貴之氏)

一階のピロティ部分から二階の住居へは、階段によるアプローチが設けられており、中庭が吹き抜けになっているなど、自然と一体となったモダン建築となっている。

「アプローチの部分からすでに、山一つが彼女のランドスケープみたいな形になっています。この、ものすごくモダンな建築の下に、雨が流れてきたら小さな池になるような穴が作られているなど、有機的な部分と繊細な部分とが共存した魅力的な場所です」(妹島和世氏)

「ガラスの家」の模型の背後に、会場デザインとして取り込まれているのはこの丘にある、土をせきとめるための壁だという。

「もともと斜面の土をせきとめるために作った壁に廃水のための穴が開けられていたのですが、その穴に雨水と一緒に植物の種を含んだ土が流れ込んで、穴から花が生えてきたのだそうです。リナはここから着想して壁を緑化するという発想を得たそうです」(周防貴之氏)

これにヒントを得て生まれた壁を緑化する建築のデザインのドローイング画は、会場3階で見ることができる(次ページへつづく)。

(写真・文/麻生雅人)

12