私が自分で選んだ道

2015年 12月 18日

サウゲイロ

サウゲイロのエンサイオ(練習)から帰ってきました。

はぁ…。

もう夜中の3時30分を過ぎたのに、眠れません。今日は、本当に落ち込んでいます。大好きなサウゲイロの記事を書いてすぐ、心が、気分が、上がったり、下がったり…。

サウゲイロのパシスタでいるという事。ハイレベルな競争。これが本当に大変な事だという事を、改めて実感する日々です。

私の師匠、カルリーニョス。彼は、本当にサンバに関して天才です。世界中が彼に注目し、世界のあちこちでワークショップが開かれ彼が必要とされています。本物のサンバ界のスターです。

そんな彼が率いるパシスタ達はトップレベルの集まりです。自分で所属しておきながら言うのもナンなんですが、下手な子は1人もいません。本当に。

踊れて上手いのは当たり前で、スタイル良くて可愛いくてイケイケな子…たとえ下位グループに所属している子でも“チームの女神”など、特別枠を貰えるような女の子ばかりです。この中に居ても、みんな凄いな~上手いなー、と見てしまいます。

それでも、カルリーニョスについて行くのは、本当に大変なんです。師匠に気に入られている子でも、昨日はベタ褒めだったのが今日は怒鳴られたり。先週もパシスタ仲間が2人泣いていました。そして…耐えられなくて辞めた人もいます。

今日は師匠、パシスタが整列する前から他のアーラに怒鳴ってブチ切れていたので、機嫌悪いな~嫌だな~と薄々嫌な予感はしていました。

そしたらやっぱり…。

ただ整列して立っていただけなのに、急に目をつけられてイキナリめっちゃ怒鳴られました。 急過ぎて理解できない。

そう日本人。目立つんです。師匠も当たりやすいんでしょう。

2、3年目~4年目くらいまでは、日本人だからと、どこかしら優遇されていた所もあると思います。でもそこからが本当に大変。

特に師匠は、日本人だからとか、関係ない。その一方で、日本人だからノー! と言われる場面はあります、正直。だってサンバは黒人文化。これはどうしても覆せないもの。でも師匠は、日本人の私を受け入れとても大切にしてくれていることは、分かっています。

サウゲイロのパシスタはこの数年で本当にモンスターグループになりました。レベルは驚く程上がり、師匠もサウゲイロのパシスタである事を誇りに思いなさい!  他にはない確かにナンバーワンのグループだと、いつも口癖の様に言います。

でも今日は、耐えられなくて一人 帰りのバスで涙をこらえきれなくて、とっても辛かった。

ブラジルでの生活。日本人の私がサウゲイロのパシスタとしてそこにいる事のプレッシャー。ストレスが身体にも出てきていて。不安で。

それにサンバはもともと運動量が凄い上に、この暑い中(地球の反対側のブラジルは夏)。痩せていかないように、日本人の私がブラジル人の他の女の子に身体が負けないように、常に食べて食べて、毎日の食事の心配や体調管理にも、敏感になる。

衣装やサンダルひとつにしたって、ブラジルにお家があれば荷物の制限も無い。私はブラジル現地に住んでいるわけではない日本人だから、仕方がないんだけど、私の苦労なんて皆には関係無い。

他のパシスタの子はここに家族が居て、女子が一人遠くのバス停まで歩くなんてことも無く、帰りの夜道の強盗や心配事なんて考えずに練習に来られていて。こんな所一人で歩いちゃダメよ~! と怒られても どうしようも出来ず。

治安が悪いし、色々不便さがあるブラジルという国で一人で生活するだけでも大変だから、心にそこまで余裕が無くて、張りつめていた物が一気に溢れ出てしまった感じです。

私が怒鳴られた後、みんなは師匠が見えない所で「可哀想に」「気にしちゃダメよ! 機嫌が悪かっただけだから」と励ましに来てくれました。

だけどやっぱり、理不尽に、急に大の大人に怒鳴られると怖いし、はけ口も無く、落ち込むものです…。

色んな想いや、気持ちをもってこの地にリオに居て、ここで生活しているから。

日本の皆さんの中でも、リオに行きたくても行けない人もたくさんいる中で、私は環境が許されているので、もちろんこの環境にたくさん感謝はしています。

でも今日は、書きながらも涙が出る。

だけど、大好きなサウゲイロだから…

踏ん張らなきゃ!
頑張らなきゃ!!

(写真・文/工藤めぐみ、記事提供/「工藤めぐみオフィシャルブログ「O Samba é Minha Vida!! サンバな人生 from RIO」)

著者紹介

工藤めぐみ Megumi Kudo

工藤めぐみ Megumi Kudo
9歳よりクラシックバレエを基礎にサンバを始める。
2008年にリオデジャネイロの名門エスコーラ・ジ・サンバ「サウゲイロ」のパシスタのオーディションに合格。
2009年~2011年、2013年~2014年に同団体のパシスタとして、リオのカーニバルに出場している。「サウゲイロ」の選抜メンバーによるサンバショーのメンバーでも、唯一の日本人として参加している。
帰国中は、プロフェッショナルのダンサー(SMAPドームツアー、山下智久コンサートのサンババックダンサーなど)や、ダンスインストラクターとして活躍。神戸にてダンス教室「MEGUサンバダンス」を主催するほか、地元のサンバチーム「Feijão Preto(フェジョン・プレット)」のダンサーリーダーも務める。神戸まつり、浅草サンバカーニバルをはじめ全国のサンバ関連イベントでも活躍。

「Feijão Preto(フェジョン・プレット)」http://www.feijaopreto.net/

「MEGUサンバダンス」http://www.feijaopreto.net/sambadance.htm
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