日本とブラジルの食肉貿易事情

2016年 03月 4日

鶏肉輸出 ブラジル

この背景には、2004年に中国とタイで鶏インフルエンザが発生し、生鮮肉の輸入が途絶えた時にブラジル産鶏肉が間隙を埋め、以後シェアを拡大してきた事実がある。

しかし、これをもって輸入鶏肉市場でブラジルが1位と考えるのは早計だ。

なぜなら、タイと中国は鶏肉を加工した調整品の輸出にシフトし、輸入を解禁された後も生鮮肉の輸出に重きを置いていないからだ。

2015 年に日本は鶏肉調整品を41万トン(2285 億円)輸入している。数量ベースでは生鮮鶏肉に及ばな
いが、金額では鶏肉の 1584億円を上回り、単価の高い商品である。調整品は数量ベースでタイから全体の57%、中国から42%を輸入しており、この二カ国でほぼ全量を占めている。

日本の居酒屋チェーンも食材の鶏肉を輸入調整品に依存している場合が多い。2013年にタイは生鮮鶏肉の輸入禁止を解除されたが、生鮮鶏肉の分野でブラジル産といまさら安値競争をするつもりはなく、今後とも付加価値の高い調整品の輸出に注力していくことであろう。

ブラジル特報2016年3月

※「ブラジル特報」は日本ブラジル中央協会が発行している機関紙。隔月発行、年6回、会員に無料配布される。日本ブラジル中央協会への問い合わせは、E-mail info@nipo-brasil.org、TEL:03-3504-3866、FAX:03-3597-8008 まで。

(文/清水純一、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/ANPr/SINDIAVIPAR)
開発・商工省(MDIC)の貿易局(SECEX)によると2015年、ブラジルの鶏肉輸出量は430万4000トン。同年、州単位で鶏肉輸出が最も多かったのがパラナ州で148万1000トン、全国の34%を占めた。写真は2016年1月21日、パラナ州クリチーバ市の鶏肉企業