アシックス・ブラジルの歩み
2016年 07月 3日~ブラジルでの事業の成り立ち
ASICS の製品のブラジルにおける製造、販売に関しては過去より代理店を通じ行っていたが、ブラジルでの更なる販売拡大を狙い、2007年に ASICS do Brasil Ltda.(以下 ABR)を設立した。
ABR を設立した頃より世界的なランニングブームが始まり、ランニングシューズを主力商品とする弊社にとっては大変な追い風が吹いていたという事もあり、初年度から売り上げは快調であった。
当時はほとんどの商品を輸入に頼っており、今では考えられない様なレアル高も手伝い、数あるアシックスの販売拠点の中で史上初めて初年度に黒字を計上した国となった。その後も、前述のランニングブームとブラジルの経済成長、もちろん優秀な現地スタッフの頑張りにも支えられ、毎年コンスタントに二桁成長を実現する事が出来た。
~ブラジルの不況の中、 “ASICS SPIRIT”の実現
しかし、昨年から続くブラジルの不況とレアル安により、雲行きは怪しくなる。一般消費が鈍り売り上げが減少し、さらに為替の影響で輸入品の原価も膨れ上がり、ABR は厳しい商環境下に置かれている。
この苦境の中でも、弊社の “ASICS SPIRIT” にある「スポーツマンはころんだら、起きればいい。失敗しても成功するまでやればよい」の精神に則りこの状況をチャンスと捉え色々な事を試行錯誤を繰り返し行っている。
一つはシューズの現地生産化である。 レアル安の状況に終わりが見えないため、2016 年から大きく現地生産に舵を切り、本年は半分以上の数量を現地生産で調達する予定である。
幸いブラジルのシューズ産業は発展しており、低価格・中価格帯の靴ならば輸入品と遜色無い製品の開発・生産が可能である。原材料もできる限りブラジル国内で調達する。品質管理体制も整備し、輸入品とかわらないレベルの品質を実現している。
弊社は設立当初のレアル高の時期から現地生産を行っており、その甲斐もありスムーズに現地生産の拡大が実現出来た。今後はブラジル国内で対応できる製品の幅を増やし、さらなる現地生産の拡大をし、利益の確保だけでなくシューズは労働集約型の産業のためブラジルでの雇用の拡大も実現していく。
~リオ・オリパラは、東京オリ・パラへの架け橋
また特筆すべき点として、今年はオリンピックイヤーという事もあり、弊社のブランド及び製品の露出を高め、それを販売に繋げていくという戦略も取る。
マラソン、レスリング、バレーボールなどオリンピックで注目されるスポーツの製品は弊社の得意とする分野であり、弊社にとってはサッカーのワールドカップ以上の宣伝効果が期待される。宣伝だけでなくアスリートが日々の厳しい練習の成果を最大限に発揮できるような製品を提供する事も我々の大きな使命であり、今現在日本を中心として製品準備の最終段階に入っている。
特に今回のリオオリンピック・パラリンピックは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに繋がる重要な大会だと位置づけている。東京五輪では、弊社は光栄な事に「ゴールドパートナー」として参加する事になるため、リオで勢いをつけて、東京にて日本を代表するスポーツ用品メーカーとして最大限に弊社のブランド、製品を世界中にアピールしていきたいと考えている。
~ブラジルの眠れるポテンシャルを信じて
ブラジルに話を戻すと、リオ五輪というポジティブな要素もあるが、これを執筆している 3 月末現在ではまだまだ政治も経済も不安定で先行きが見えない部分が多い。しかしながら、最近行われているデモ活動などでもブラジルの国民が纏まった時の力はやはり非常に強く、まだまだ大きなポテンシャルを秘めていると感じる。 それが正しい方向を向けばブラジ
ルは必ず蘇ると確信している。
一方でブラジルの消費者の目線も非常に高くなっていると実感しており、この国ではシューズは高額という事もあり、製品がデザイン・機能の両面で優れていないと売れない時代になっている。ブラジルの復活を期待しつつも、ブラジルの消費者のニーズに応えられる品質の製品をこれからも市場に供給し続け、今まで以上にブラジルの国民のスポーツシーンに貢献するために社員一同、一丸となり努力を続ける所存である。
※「ブラジル特報」は日本ブラジル中央協会が発行している機関紙。隔月発行、年6回、会員に無料配布される。日本ブラジル中央協会への問い合わせは、E-mail info@nipo-brasil.org、TEL:03-3504-3866、FAX:03-3597-8008 まで。
(文/福島壯太、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)
写真は2016年1月20日、リオデジャネイロ市フラメンゴ公園で開催されたサンセバスチャンマラソン