「リオデジャネイロという生き方 ~不安も悩みも笑顔に変える”幸福の個人技”」

2016年 07月 17日

リオデジャネイロという生き方

この夏オリンピックを迎えるリオデジャネイロ(以下リオ)の魅力をたっぷりと紹介してくれる本が登場しました。『リオデジャネイロという生き方 不安も悩みも笑顔に変える「幸福の個人技」』。

筆者の2人、中原仁氏、ケイタ・ブラジル氏はともに20年以上リオに通い続けるリオ通。主に音楽を通じてリオの人々と親密なネットワークを築いている2人です。

とはいえ本書はいわゆる音楽書ではありません。出てくるエピソードに音楽は4分の1くらい。あとは本のサブタイトルにある通り、人生を心から楽しむカリオカ(リオっ子の呼称)の生き方やメンタリティを具体的なエピソードを交えながら紹介していく内容となっています。

また巻末ではカリオカの生活には欠かせないサッカー四大クラブチームの特徴についてまとめたコラムや、リオ通ならではのオススメ・スポットを紹介。リオを知るために必要な情報がギュッと詰め込まれています。オリンピックを見に行く人は普通のガイドブックだけでなく、これを読むとより一層リオを楽しめるでしょう。

と言いつつも、一度もリオに行ったことのない人にはちょっと刺激強め!? 驚きのエピソードの連続に少々面喰らうかもしれません。初対面でグイグイ話しかけてくる人々、「ジーコ(痩せっぽち)」や「カレカ(はげあたま)」といった呼び名で親しみを込めるアダ名の文化、店の敷地外から順番抜かしでジュースを注文する客、服装やメイクにこだわるあまりデートに6時間遅刻する女の子…。

日本的な常識からしたら「ありえない」話の連続には唖然としてしまうのですが、そこには彼らなりのロジックが存在していることについても本書は紐解いてきます。

世界でも類をみないほど、たくさんの人種や文化をバックボーンに持つ人々が暮らすリオでは、お互いに気持ち良く共存するために、他者を知り、その違いをリスペクトすることが必要なのでしょう。そのためにはまず自己主張をして自分を知ってもらうこと、話を引き出して相手を知ることが求められます。カリオカの強烈な自己主張の裏には、自分らしさを失わずに生きられる社会を運営するための、合理的かつ効率的なコミュニケーション術が隠されているのです。

多様性を受け入れ、社会の活力にしてきたカリオカ達の生き方は、これからの時代に求められるコミュニケーションを他に先がけて実践してきたといえるでしょう。世界中で偏屈な差別主義が顕在化する昨今、人類が進むべき道は、カリオカ達の生き方に示されているのかもしれません。

リオデジャネイロという生き方 不安も悩みも笑顔に変える「幸福の個人技」』(双葉社、1500円+税)はディスクユニオン、AMAZONなどでも発売中。

(文/江利川 侑介(disk UNION)、写真提供/双葉社)