日本の小学校給食の献立にブラジル料理が登場

2016年 07月 19日

ブラジル 学校給食

しかし献立を実現することは簡単なことではなかった。米田さんは夫からも、生徒全員が食べる給食としては難しいのでは、と指摘されたという。

候補に挙がった料理はフェイジョアーダ(黒インゲン豆と肉類などの煮込み料理)、フェイジョン(煮たインゲン豆。ごはんなどと一緒に食べる日常食)、パステウ(中にさまざまな具を入れた揚げたパイ)、コシーニャ(鶏肉などを具にしたブラジル流コロッケ)など。

プロジェクトを実現させたかった米田さんは学校行事に積極的に参加していた保護者にも相談しながら、日本人の口に合うような味にアレンジして料理を試作。最終的に、栄養教諭・学校栄養職員研究会にフェイジョアーダとコシーニャを提案して、調理実習を経た上で給食献立に取り入れられることが決定した。

レシピは、学校給食の調理に使用できる限られた食材の中から、日本の児童の食習慣も考慮して試行錯誤して考案された。

フェイジョアーダに関しては、ふだん学校給食で黒インゲン豆を使っていないため、主食材の選定から熟考。見た目で苦手に思う児童がいる可能性に配慮しながらも、ブラジルで黒インゲン豆が食べられているという文化を知ってもらいたいという思いもあり、黒インゲン豆と白インゲン豆をミックスして使用することに。ブラジルではポピュラーな具のひとつであるリングイッサ(燻製しない生ソーセージ)も給食では使えないため、チキンソーセージで代用した。

コシーニャは、尼崎市学校給食協会に登録している業者に調理を依頼をした。ほぐした鶏肉、トマトなどをじゃがいもでくるみ、パン粉と大豆粉などを使った衣で揚げた。形は、当初はブラジルで一般的な、一滴のしずくのような形を想定したが、試作品の試食を繰り返すうち、最終的には丸形に近い形でおちついた。乳製品アレルギーの児童のために牛乳とチーズは不使用という注文をつけた。

「ブラジル料理はレストランでは食べたことがありましたが、実際に調理したことはそれまでありませんでした。いろいろなブラジル料理を調べていくうちに(その多様さに魅せられ)、いろいろ食べてみたくなりました。ぜひブラジルに行って食べてみたいと思うようになりました」(米田佳代子さん)

オリンピック・パラリンピック記念メニューの反応は全学年でおおむね好評で、「すごくおいしい」、「また食べたい」、「もっとほしい」、「ちがうブラジル料理も食べてみたい」、「シュハスコを出してほしい」などの意見もあったという。

そのうえ、他都市からもこのメニューを学校給食に取り入れたいという連絡が調理業者に入るという、米田さんたちとってうれしいニュースも飛び込んできた。尼崎市はこれを了承、これらのメニューは他の自治体の学校でも導入される運びとなった。コシーニャは工場に型が導入され、ブラジル流のしずくを思わせる型が作られるようにもなった。冷凍食品として領布するため、油で揚げる時に中心まで温度が上がるように、型を薄めにする工夫が成された。

現在、小学校の学校給食では、栃木県の真岡市や福井県の越前市でもブラジル料理を取り入れる動きが出てきている。さらに全国の日本の小学校の給食にブラジル料理が普及していく可能性が生まれつつある。

(文/加藤元庸、写真提供/園田北小学校)

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