保見団地の日々を綴ったドキュメンタリー写真集、発売に

2016年 11月 25日

保見団地

1972年より造成が開始されたという愛知県豊田市保見団地は、現在では県営、公団(現 UR)、分譲すべてを合わせると、3,949戸を収容できる67棟にも及ぶ巨大な集合住宅。1990年の入管法改正をきっかけに、日本にやってきた外国人の居住者が増えたとのこと。

Vice Media Japanによると、保見団地が外国人居住者を多く受け入れることになった背景には、保見団地特有の事情があったという。同団地の建設は当初、他県からの出稼ぎ労働者をはじめ、自動車産業に就く人々の住処として計画されていたのだという。

しかし1973年の変動相場制導入以降、輸出拡大を目指した自動車産業が、より安価な製造コストを求めて生産拠点を海外などへ移したこともあり、計画していた居住者が集まらず空き室が目立っていたそうだ。公団は例外的に法人契約を認め、保見団地は社員寮としても使用された。その居住者の多くが90年以降に仕事を求めて日本にやってきたブラジル人だったという。

保見団地

保見団地は、2008年には、住民全体の人口8,885人のうち4,036人がブラジル人(比率で言うと45.4%)という日本有数の外国人集住地区となった。現在も、約3,000人前後の日系人労働者(主にブラジル人)が日本人とともに生活しているという。

本書を制作するにあたり名越啓介と藤野眞功は、保見団地に部屋を借りて3年間、団地で暮らした。ヒップホップ、スケートボード、暴走族の集会、中学校の卒業式、喧嘩の果ての逮捕劇、出会ったとき18歳だった青年の成人式、恋愛から出産、クリスマスパーティーなど…思春期のブラジル人たちと生活を共にしながら、彼らの日々を捉え続け、ドキュメンタリー写真(全245枚)とルポルタージュによる全288ページの写真集を完成させたという。

(文/麻生雅人、写真提供/Vice Media Japan)

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